第50話 20階 ボス戦後 1
背後のボス部屋の扉が閉まった瞬間――――。
「イタッ」 先頭を歩いていたブタちゃんが急に屈みこんだ。
「どうした?」 俺はブタちゃんに近づき声をかける。
「ご主人様。危険です。狙撃されました」
「イッッテ!」 太ももに激痛が走る。俺も撃たれたようだ。
脚を見ると短い矢が刺さっている。そして眩暈と同時に心臓がバクバクいう。これが毒か? このまま死んでしまったらどうしよう…………。
狙撃先に気が付いたユウが走り出す。この短い矢はボウガンのようだ。丁寧に毒まで塗ってボス戦直後を待ち伏せるとはいやらしい。魔物はこんな手の込んだ事はしないだろうから相手は人間で間違いないだろう。
「ユウ、全員切り伏せろ! やらなきゃやられる」
「ケイン、解毒ポーションをくれ。ブタちゃんにも飲ませろ」
ユウが正面の敵に向かっていくと、またボウガンがユウに発射されたが、ユウは剣で矢を払いのける。しかし別の左方向からも同時に発射されていたようで1本はユウの左太ももに刺さってしまった。
「正面だけじゃなく左にもいるのか。俺たちは左の敵に向かうぞ」
ポーションを飲み終えた3人はブタちゃんの盾に隠れながら左の敵へと向かう。毒は消えたようだが、足が痛くてうまく走れない。ブタちゃんは大丈夫なようだがボウガンを警戒しているのでスピードはでないようだ。
ユウは矢を受けた左足など気にせず、走るスピードも落ちていない。そのまま走り続ける。正面の敵はユウに近づかれるとボウガンを捨てて剣を抜くが、ユウはすぐさまその敵を切り伏せた。
次は左の敵へとユウも向かう。左の敵は俺たちよりもユウを脅威に感じたのか、ボウガンをユウに向けて撃った。
しかし今度はユウに対して正面から放たれた矢はユウが簡単に剣ではじく。
俺たちもだいぶ左の敵に近づいてきた。どうやら左側には敵が二人いる様で一人はボウガンを構えているが、もう一人は剣を抜いて構えている。
俺とケインは立ち止まり、俺は剣を構えている男に矢を放つ。
矢はあっさりと剣で払われてしまったが、その隙にブタちゃんが盾ごと体当たりをして剣を持つ男は吹き飛ばされた。ボウガンの男も剣を抜いてブタちゃんに切りかかろうとするが、それよりも早く近づいていたユウに切られた。
ユウはブタちゃんが吹き飛ばした男にトドメを刺しにいこうとしている。
「ユウ、待て! 殺すな」
もう勝負は付いている。ブタちゃんに吹き飛ばされて剣も手放してしまっているし、まだ意識もなさそうだ。
「縛ってギルドに連れて行こう」
剣の男をロープで縛り上げて、ボウガンの男たちを見に行くと彼らは首を切られて絶命していた。俺がユウに切れと命令したのだから当然の結果だが、人の死体を見るのはあまり気分がよくない。
しかし、こちらもいきなりボウガンで撃たれてメッチャ痛かった。毒まで塗ってあって死ぬかと思ったのを思いだすと怒りがこみ上げてくる。
「身ぐるみはいで、装備品は売り払おう」 「はい!」
ブタちゃんがすぐさま死体から鎧を脱がしにかかる。そういえば傷はだいじょうぶなのだろうか? 皆のステータス画面をチェックすると誰も毒状態にはなっていない。
「マコト兄ちゃん矢が刺さったままだぜ…………俺が抜いてやるよ」
ケインはナイフで矢を穿り出して回復ポーションをかけくれた。矢を抜くときは痛かったがポーションをかけると痛みはスッと消え傷口も塞がったように見える。
初めて回復ポーションのお世話になったがこんなに良いものだったのか…………。
これからはもっと積極的にポーションを使っていきたいと思う。
「ありがとうケイン。いい感じだ。ユウも矢が刺さったままだから治療してやってくれ」
ブタちゃんの足を見ると矢は刺さっていないようだ。
「ブタちゃんが最初にボウガンで撃たれたよね? 矢はどうしたの?」
「すぐに引っこ抜きましたよ。すぐ抜かないと肉で埋もれてしまって抜けなくなるのです」
よく見るとブタちゃんの足はもう治っている様にみえる。回復スキルで傷はすぐに塞がってしまうので矢が残っていると邪魔になってしまうのかもしれない。
ブタちゃんには回復ポーションはいらないようなので、代わりに干し肉を与えておく。この戦いで気持ちまた痩せてしまったようだ。
「ありがとうございます! ご主人様」
痩せたブタちゃんが片手で勢いよく干し肉を噛みちぎった。カッコイイ! 痩せたブタちゃんはイケメンだぜ。
「この男はどうするんだ? もしかしたら賞金首かもしれないぜ」 ケインは剣の男を睨みつける。
「賞金首なんているのか?」
「バウンティーハンターギルドに連れて行けば解るぜ。もし賞金が掛かってなくてもこいつはダンジョン強盗を犯したんだ。奴隷落ちは間違いないはずだぜ」
「そうなのか? 細かい事は良く解らないけど、そこに連れて行けばよさそうだな。それじゃあ、ブタちゃんの盾を預かるから代わりにブタちゃんがこの男を担いで運んでよ」
「了解です!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます