雑踏を聴く

横断歩道が青になる、車のクラクション、咳、雨、コーヒー、建設途中のビル内で

響く掘削音くっさくおん、バスが排気し、無数の人が不規則にを進ませ、朝焼けの向こうから

波を連れてくる。


風に吹かれながら、不定形で細やかなノイズを味わうその刹那、

ボクは貸し切りの劇場で自分にしか聴こえない音楽を聴いている気持ちになるんだ。


世界でただ一人の為の即興演奏インプロヴィゼーション、それを知覚出来るボクで良かった。


目を閉じて更に深く鋭敏に、背中に感じる壁と同化し境界を無くしたまま

身体が溶け出して、街と交尾をするように。


そうしている内に闇の中からキミの香りが降り注ぎ、

ボクはそっとキミと世界を抱きしめるんだ。

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