はめつをかいひするめいあんをおもいついた
ニコラス及び一番隊が『水晶王の
なんでそれでイーサンの結界が消えるのかって?
『はるがる』のバトルルールに、『結界技と結界技がぶつかった場合、下位の結界が消え上位の結界に呑み込まれる』という条項があるからです。
かの20メートル級サクラちゃんを捕らえた(すぐ破られたけど)ほどの団体技をかけられたら、満身創痍な二番隊五番隊、仲良く全員死亡判定である。
……君たちは一体全体何の権利があって、僕がどうにかこうにか回避させたキャラ全員死亡というバッドエンドへ勝手に突き進んでいこうとするのかね。僕がこれまでに費やした血と汗と涙について少しは思いやってくれよ……。
熱き思いを込め僕は、叫ぶ。
「とっ、止まれー! 止まれ、何でもいいから止まれっ、全員そのまま動くなあっ、
すると――止まった。
全てが。
人間だけではない。今まさにアニキたちの体を覆わんとしている氷霧も、飛び交う銃弾も、砕け散る壁の破片も、全てがそのままの位置と形を保ち止まっている。一時停止ボタンを押されたみたいに。
(時を止めてん……だよな、これ)
どうやら僕はまた新魔法を開発してしまったようだ。
……ちょっとこれ、すごくね?
自分で言うのも図々しいが、すごくね?
時間停止って、もうラスボスの持ち技じゃん。いや世界観的には僕がラスボスで間違ってないけど。
(うわーうわーすごいすごいマジかマジかー!)
ついつい興奮しているところ、コンと頭に何か当たった。
「いてっ」
目を開いてみれば、枕元にストップウオッチが落ちている。
表示されたデジタル数字が刻々動いていた。
60:59:30
60:59:29
60:59:28
推測するにこの魔法、一回につき一時間しか効かないらしい。
じゃあその時間内に、力ずくにでもNPCの行動を軌道修正させないと。
そのためには、まず現場に行ってみないと。
ファミリアゴーストを通じてでは、得られる情報に限界がある。全体把握が困難だ。
そこまで考えたところで、超重要なことを思いだした。
僕は今悪鬼王として、王城の寝室にいる。寝室の内外には見張り役の召使が侍っている――戻って休んでいいよって言ったのに、いえこれが侍従としての義務ですからと、頑張って寝ずの番してる。
今かなりの大声を上げたような気がするが、もしかして彼らに聞こえたんじゃないか。だとしたら変に思われてやしないか。
どうにも気になったので、カーテンを恐る恐る持ち上げ外を窺う。
そしたらなんと、彼らまでも一時停止していた。眠気醒ましのつもりか、栄養ドリンクをラッパ飲みした姿のまま固まっている。近づいてつついても動かなかったから、これはもう間違いない。
念のため窓の外を見てみたら、城を守る衛兵が、独楽に乗って空中浮遊した状態で停止していた。
どうやら僕の時間停止魔法、世界全体に影響が及ぶものらしい。
ますますすげえ。最強じゃん。もはや無敵じゃない僕?
いや、自画自賛してる場合じゃないな。早くイバングへ行こう。この分なら抜け出しても気づかれることはない。
ストップウオッチをポケットに入れて、いざ。
「どこでもウオッチ! 僕をイバングの壁の上、対悪鬼抜刀部隊が内輪もめしている現場に移動させろ!」
「うおおおおおさっぶうううう!」
瞬間移動した僕を待ち受けていたのは、強烈な寒さだった。
なぜこんなに寒いのか。
あっそうだパジャマ姿だった僕。
「あばばばばば。やばいやばいこれ死ぬ死ぬ死ぬ」
奥歯をガチガチ鳴らして取り入だしたるは、もちろん防護服。
着込めばほら、あったか~い。ほんと便利だこのアイテム。
さて、まずやるべきは。
「
……はあはあ。よし、これで全員すんだな。ベストコンディションに戻ったな。よしよし。
じゃあえーと、皆、いったん距離を取ろう。お互いから。そうでないと時間が戻った途端、元の木阿弥になっちゃうからね。
「
一番隊、二番隊、五番隊、および要塞都市防衛軍が、瞬時に整列する。固まった姿勢のまま。
よし、これで後々移動もさせやすい。
でー、ここからはー、このどうしようもない事態を収拾されるため知恵を巡らさなくてはならないんだけどー。
正直誰か教えてくださいよって感じだな。
あらゆることがごちゃごちゃに絡み過ぎて、処理しきれそうもない……。
でも頑張って考えてみよう。
とにかくこうなるに至った原因は、間違いなく悪鬼ランド裁判生放送だな。
対悪鬼抜刀部隊があれを見ちゃったことで、チマキさんのあいのこ疑惑が明るみに出たわけだし。
(ほんと余計なことを喋ってくれたよなあ、メフィスト……)
じゃあ……もういっぺん地上に向け生放送やって、悪鬼王たる僕が直々に明言するか? メフィストの言葉は真っ赤な嘘である、信じないでくださいと。
(いや、かえって怪しいなそれも。てゆーかニコラスもチマキさん本人も、僕が彼女の正体知ってること分かってるしな……何を企んでるとか邪推してきそうだな)
ああ、あの放送さえなければ。
せめて録画放送でさえあれば、いくらでも編集出来たのに。
覆水盆に返らず。
(あーもーどーしよかなー、悪夢だよこの状況……)
……ハ。
そうだ。
あの放送……夢だったってことにすれば万事解決にならないか?
いや、なる。
安易すぎ?
結構だそれで。
ネタに詰まったらとりあえず夢を出す。
創作物においてはよくある話じゃないか。
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