氷漬けになったこの世界で
野うさぎ
プロローグ
俺の叔父であるライハイツ、本名は
一応、俺の父の弟ということになるけども、俺の父と叔父さんは、実は異母兄弟なんだ。
叔父さんの母親は、今は亡き、異世界でも最強クラスに入るオーグレスであるライハイツ。
俺には、伯父さんが一人、伯父さんが一人で、
ライハイツ叔父さんは、三人兄弟の末っ子。
俺は、叔父さんからしてみれば末っ子であるために「甥っ子」または「甥君」と呼ばれている。
俺は、雷属性ではなく、電気属性の異能力者だ。
雷属性と、電気属性は混同されやすいけど、全然違う。
説明が難しくなるけど、
雷属性は、雷を体から発することができるけど、
電気属性は、電気を操ることができるんだ。
ごめん、今の説明じゃ、わかりにくかったよね?
叔父さんがどんな属性だろうと、別にいいけど、問題なのは、あの天然さ。
根は穏やかで、人助けを頑張るけど。
独自解釈をしては、誰もが予想しない方向に動くし、
勝手に異世界転移しては、異世界の住人たちを自覚なしに困らせる行動をとるし。
話は最後まで聞いてくれるけど、勘違いした上で聞いている。
人のことを簡単に信用してしまう純粋な性格だけど、明らかに怪しい人のことも信用しては、ついて行ってしまう。
根は真面目だけど、周囲からふざけていると誤解されるような話し方をする。
ライハイツの髪が、腰まで長い緑髪の理由は、ライハイツのお母さん、つまり俺の亡き祖母の影響から。
緑の髪を腰まで伸ばしていた。
そして、ライハイツ叔父さんは、完全に母親似で、性格と言い、この身長といい、この甥である俺に、身長を抜かされるくらい小柄。
オーグレスは背が高いイメージがあるかもしれないけど、これはそのオーグレスによる。
俺が、学ランを着てから、合成皮革で作られたスクールバックを持って、学校に行こうとすると
「甥君、これからどこに行くの?
誰かのお見舞いかな?」
出た、叔父さんの無自覚な天然発言。
「これから、学校だって。
見てわからないの?」
「この格好だと、これから戦争に行くんだって感じがして、かっこいいね」
「何をどう見たら、そんな解釈になるんだ?」
「現代社会で、陸軍は学ランを着て、戦争に行くって、教わったよ。
ちなみに、海軍はセーラー服で」
「それは、歴史の授業でやることだ!」
こいつ、学校で何を習ってきたんだ?
一応、叔父さんも学生だけど、ちゃんと授業を理解できているかどうか、不安になってくるなあ。
「行ってきまーす」
「うん、行ってらっしゃい」
「甥くーん、ネクタイの巻き方、教えてー」
という声が、聞こえて、
「何で、ネクタイ巻けないんだ!」
叔父さんの学校は、ブレザーにネクタイの学校だ。
「いまだに、ネクタイを巻くことに慣れなくて・・・・」
「慣れないって、君は3年生だろーが!」
仕方ないから、俺が叔父さんのために、ネクタイを巻いてあげた。
「これで、よし」
「甥君、それから、僕ね、荷物重くて持てそうにないんだ」
と、カバンを見てみたら・・・。
「カバン多っ!」
スクールバックが、いくつも置いてあった。
「そんなにいらないでしょ?
スクールバックは、ひとつあればいいでしょ。
何を入れてるの?」
「うーん、忘れ物が多くてね、忘れ物しないいようにって、とにかくいーっぱい入れたの」
「例えば、どんな?」
「木刀とか・・・・」
「授業に必要ないだろ!」
「いつでも、どこでも寝られるように、布団も入れてあるんだあ」
「お泊りでもするの!?」
これは、天然という話ではない。
確実に、馬鹿だ。
「後ね、最近、俺は学校もよく遅刻するの」
「え?寝坊したとか?」
「ううん、学校に行く道とかよくわからなくて・・・・」
「君は、そんなんでどうやってやってきた!?」
「お腹すいたなあ」
「さっき、朝ごはん食べたよね?」
「あれ、朝ごはんって言うの?
早朝ごはんだと思ってた」
「早朝ごはんなんて、あるの!?」
こいつ、普通じゃねえ。
ハーフオーガって、ここまで馬鹿なのか?
「今日は、三者面談の日でしょ?
甥君が、一緒に行ってくれるんじゃないの?」
どうだった。
今日は、祖父がどうしても用事を外せなくて、代わりに行くことになっていた。
三者面談が終われば、そのまま帰るからいっか。
こうして、二人で、ライハイツ君の行く学校に向かった。
「雷君」
担任の先生と、俺と、叔父さんの三者面談だ。
緊張するなあ。
「雷君は、卒業後進路を、どうしたいのですか?」
先生に質問されたら、
「はい、異世界に行きたいです」
「そんな進路があるか!?」
「なるほど、異世界に行きたいねえ」
先生がメモ帳に書くものだから、
「真剣にとるんかい!?」
「雷君、漢字の小テストの成績、すごくよかったよ」
「ありがとうございます」
叔父さんが、笑顔で言うから、俺は安心した。
よかった。
叔父さんも、ちゃんと勉強できているんだって。
「その代わり、ひらがなやカタカナが、書けないみたいだけど、これは一体、どういうことかな?」
「ひらがなやカタカナ、できなかったの!?」
漢字は書けて、ひらがなやカタカナができないって、どうしたらこうなるんだろう?
「雷君は、生徒会に立候補してくれててるね。
確か、議長で」
「はい」
俺と、叔父さんが同時に言った。
「生徒会長と、副会長が、君のペースに疲れ切っているという報告が来てね・・・」
「え?憑かれてる?
何にですか?」
「そっちの意味じゃないわ!」
三者面談でも、天然発言がでてくるのか・・・。
「君は、高校に行く気あるんですか?」
「はい、大学に行きたいです」
「答え方、間違えてる!?」
「後ね、忘れ物が多くてね、制服をよく忘れていたね」
「それ、忘れようのない物!?」
「そんなんで、高校に行けるの?」
「親孝行できます」
「進路の話を聞かれているんだ!
わかっているのか!?」
「このままだと、不良高校に進学することになるんだが、それでいいの?」
「不漁高校?
漁師じゃない学校のことですか?
行きたいです」
「底辺高校に行くことになるって、話をされているんだ!」
「雷君は、これからどうしていきたいとかっていうのは、あるのかい?」
「これから・・・・」
叔父さんは、考え込んでいた。
「できることなら、過去に戻りたいです」
「未来のことを聞かれてるんんだ!」
「人間関係の話になるんだが、生徒会長と、副会長が君に気を使いすぎてしまうみたいで」
「気を使う?
気を放てるということですか?」
「一般人に、そんなことができるか!?」
「君は、議長に向いていないという話も出ていたんだ
「僕は、議長を剥けません。
皮むき器を、持ってきてませんから」
「そっちじゃねえ!?」
何で、先生が何か言うたびに、ボケをかましてくるんだ?
「それと、一部の生徒が、君は非常に面白いという話もあった」
「面白いですか?
堅苦しい話しか、してませんが」
「君の天然が、そうしているんだ」
「体育の授業だけど、短距離走を1秒、中距離層を2秒、長距離走を3秒で走りきって、陸上部も驚いていたよ」
「もはや、人間でもない」
「ということは、俺はサッカー部で足が鍛えられたということですね?」
「サッカー部やっていても、そんなふうにはならん」
叔父さんは、サッカー部には所属しているけど、早く走れるようになったのは、多分、ハーフオーガの血のせいだと思う。
これだと、周囲に人間ではないことをばらしているようなものだ。
「サッカー部の顧問の先生から、君はボールを、ゴールと違う方向に飛ばすという報告もあってね」
「サッカー部に入った意味すらない!」
「雷君は、陸上部の方が合っているんじゃないかって、話もでていたんだ」
「僕は、陸で生活しています」
「ただ、ひたすら走る方がいいって、言われてるんだ!」
こんな、疲れる三者面談があるか。
「今の学力だと、いい高校に行くことは難しいね」
「はい、それなら、いい高校行けるように頑張ります」
「今からじゃ、遅いのっ!」
「学校見学は、行ったのかね?」
「行ってません・・・・」
俺が答えたところに、叔父さんが
「異世界で、学校見学しました」
「おい!」
異世界のことなんて、話すな!
誰も、その話なんて、信じるわけないだろう。
「異世界だが、なんだか知らないけど、君の空想に付き合っている暇はないんだよ」
「空想なんかじゃありません。
本当に行きました。
でしたら、証拠を見せましょうか?」
「いいから、先生の質問を答える!」
「クラスのみんなにも、異世界転移とかの話をしているみたいだけど、本当に空想が好きみたいだね」
「はい、すいません。
家でも、きちんと言っておきます。
皆さんには、ご迷惑をかけてしまったみたいで」
俺は、謝ったけれど、どう謝罪すればいいのか・・・。
「先生、空想が好きなことのどこがいけないのですか?」
「え?」
「人の個性ですよ」
「君、何様なの!?」
「後さ、学校の校則を守ってないね」
「学校に拘束?
誰か、縄で縛られているんですか?」
「ルールを守れないって、話をされているんだ!」
「男子は、髪が肩につくようなら、切るようにって言っているのに、どうしたらいいかな?」
「肩に神様がついていたら、切らなくちゃいけないって、ことですか?
先生、そんなことしたら、罰が当たります」
「髪をショートカットにしろって話だ!」
「ショートカット?
神様を傷つけちゃいけませんよ」
「神様じゃねえ、髪の毛!」
「後さ、廊下は走らないって注意されても、走るし・・・・」
「廊下を走っている人が、いるんですか?」
「間違いなく、叔父さんのことを言われていると思うよ・・・・」
「君は、身長が、低身長症じゃないかって、保健の先生も心配しててね・・・・」
「俺が、慎重派ってことですか?」
「違う、違う。
身長が低いということだ」
「僕、150センチ代ありますし、普通ですよ」
「この年齢で、身長150センチ代って、考えもので・・・・」
「保健の先生も、副担任の先生も、150センチ代ですが・・・・」
「男子でって話をされているんだ!」
「先生から言いたいことは、言い切ったつもりだから、ご家庭でも、どうするのかしっかり話し合うように」
「はい、先生、お褒めの言葉、ありがとうございます」
「今の話に、褒め要素あった!?」
これで、三者面談は終わった。
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