ホタルに願いを、

影神

前編



「ホタルの煜きに。


『特別な願い』


を、放つと。


眩い光と共に。


汝の願いは叶えられるだろう、、



だが。


"代償"に。


汝の時を人質に貰う。」



女の子は願った。



「彼と、また。


"一緒に"居れます様に、、」



そして。


彼女は行方不明になった。



俺が出て行った後に、、



でも、その事を知ったのは。


それから、15年後の事だった。



「変わってないな、、」


久しぶりに帰って来た産まれ育った街並みは。


何だか知らない場所かの様に。


姿が変わっていた。



自分のうろ覚えな記憶と今の景色を。


頭の中で照らし合わせながら見ていた。



「懐かしい、」



覚えのある道。


知らないお店。



何だか少しだけ、楽しんでいる自分が居た。



「ただぃま。」


「、、お帰り。」


少し遅れて返って来たのは、


久しぶりに聞いた声と。


少し。小さくなった親父だった。


親父「よく、。帰って来たな。?」


「ぅん。」



「、、俺。出て行くわ。!」


「もう少し。考えよう??


ねぇ?」


親父「やかましい!!


勝手にさせれば、良い!


こんな奴。。


息子だなんて、思いたくもない。」


「お父さん、、」


「あぁ!?


それはこっちのセリフだわ!


上等だぁ!


こんな家。今すぐ出てってやるよぉお!!」


「ちょっと待って、??


ねぇ。?。


お父さんも。少し、冷静になって。。」


親父「うるせぇえ!!!」


パシン、、


弾くような音に、倒れる母さん。


「母さんに、何してんだよぉお!!


この、糞ジジイ!!!」



親父「上がら。ないのか、、?」


「、、あぁ。ぅん、」



あの日以来。


俺は。ここへは、戻って来ていない。



逃げる様に向かった先は。


そうは、甘く無かった。



母さんからの着信を避ける様にして。


俺は、必死に何かを求め、探していた。



怒鳴られ。貶され。馬鹿にされ。



それでも、どうにか。


何とか、やって来た。



母さんの電話は、日に日に少なくなっていって。


遂には、連絡が来なくなった。



そんな事も忘れ。ある程度、 


それなりに生活が落ち着いて来た頃。



親父からの、電話があった。


出るか迷ったが。人間、時が経つと。


何とか忘れようと。しようと、する。


「もしもし。?」



母さんの電話に出なかったのは。


俺が、甘えてしまう事が分かっていたからだった。


母さんは、優しいから。


きっと、


「戻っておいで??」


そう。言っただろう。



「、、え?。」


けれど。


俺がずっと探し求めていたものは。



親父「母さんが。居なくなった。」


俺が、逃げて行った。



その場所だった。



親父「急に。悪かったな、、」


「ぃや。」



こう。面と向かうと。


なかなか話題に困る。



「警察とかには、、」


親父「そんなもん、頼りにならない。」


相変わらず。変わってないんだな。



長い木造りのテーブルの前に座りながら。


俺は、そう思った。



親父「何か飲むか、?」


「ぅん。」


そう言われ、親父が戻って来ると。



バッン!!



テーブルにはファイルと。


数冊の紙の束があった。



「何?」


親父「資料や。」


「資料??。


何の。」


親父「神隠しだ」



チリン、、



地元は、蛍の観光地として有名だった。


それと同じくらいに。



"神隠し"



としても有名だった様だ。



ファイルには、新聞の切り抜きに。


居なくなった人の親族が書き残したであろう。


居なくなった人のその日の様子が。


達筆な字で、沢山書かれていた。



数冊の手書きの本には。


伝承の様なものがずらりと書いてあった。



親父「俺はおかしくは無い。」


俺の顔にそう、出ていただろうか。


「別に、何も、」


親父「そう、言っとる。」



一通り。資料に目を通した。


カラン、



親父の入れた麦茶の中の氷は。


ガラスの容器を通して。


流れ出ていた。



パタン、、



それらを見ている時。


親父の視線が、ずっとあった。



ゴク、ゴク、ゴク。


流し込む様にして、一度飲み込み。


俺は言葉を吐き出した。



「よく。調べたね、」


親父「あぁ。

 

だから今やすっかり。ここらで、変人扱いだ。」


「だろうね、、」


親父「皆は、神様がやっただのと抜かしてる。



大事な娘や。姉妹。それに恋人だって。


誰かに囚われているかも知れないのに。



馬鹿みたいに指を咥えて待っとる。」


親父の目は、真剣だった。


親父「お前の仲良くしてた、女の子も。


お前が、出て行ってから。



"行方不明"



になっとるよ。」


「、、え。」


俺は再びファイルを開く。



××××年。××月××日。×曜日。


×× ××、



それは、忘れていた。



忘れてしまった。



大切な名前だった。



女の子「ねえ?」


「なん?」


女の子「将来の夢ってあるん??」


「将来の夢か。。



自分は?」


女の子「んー、、。



内緒っ?」


「なんやねん、」



記憶が。ふと、流れる。


「何で、、」


親父「これも。


全部やない。



最近のものばかりや。



そうして。これはな。


"まだ"続いてる、、」


「えっ??」


手渡されたのは、最近の新聞だった。



新聞の見出しには、



【少女。行方不明】



と掛かれていた。



親父「俺がまだガキの頃から。


いや。その何十年も前から。


神隠し。


は、ずっと続いとった。



最初は皆でよく探した。


けど最後には。皆、諦めた。



神様が相手だから、


仕方ないっ、てなぁ。。?



んな。馬鹿な話がある訳が無い、、



居なくなって良い人間なんて。


誰もおらん、、。」



母さんが居なくなって。


親父は、変わっていた。



弱々しく。非力な声で。


天井を向いていた。



「でも、、。


どうやって、探すんだ。」 


親父「、、あぁ。」


スゥン、、



親父は手書きの紙の束を開いた。


親父「ここの。伝承が怪しい。」


俺は、達筆な親父の字を。


ゆっくりと読んだ。



「ホタルの、煜き?に。


特別な。願いを、放つと。


眩い光と共に。


汝?の願いは。叶え、られるだろう、、



だが。


代償に。


汝の時を。人質に貰う、、。」



親父「居なくなる時期は。


一貫して。



この時期に近い。」


ペラッ、ペラッ、、



××月××日。


×× ×××。


××月××日、


×× ××。


××月××日、、


××× ×。



それにさっきの新聞の日付。


「全部。一緒だ、、」


親父「そうだ。。」


寒気がした。


親父「そして。これには、


誰かが。



"関わっとる"



「、、誰が。?」


ゴクン、、



親父「伝承のある神社の奴の誰かか。


図書館に勤めてる奴の誰かか。


蛍の保護をしてる奴の誰か。だな、



勿論。それ以外かも知れない。


この一帯の奴等が皆。



この"儀式"に関わってる可能性だってある。



「一帯って、、


そんなの。俺達だけじゃ、、」



仮に、周りの人間。


全てがそうであった場合。


最悪の場合。


自分達の命に関わる様な事にも、


発展するかも知れない。


そうであれば。


それは更に大きな力によって。



"隠されている"



という事になるだろう。


親父「まあ。そんなに重く考えるな。


あくまで、仮定の話でしかないんだ。



だが。誰かが。


都合の悪い事実を。


それも意図的に、隠してやがる。



そして、何等かの儀式の鍵は。


『蛍』


に、間違いない。」



その夜。久しぶりに親父と飯を食った。


初めて。酒も交わした。



買い出しに行った近所のスーパーでは。


まるで、腫れ物を見るかの様にして。


沢山の視線が俺達へと、向けられていた。



親父は、これに耐えて来たんだ。



皆が、神の仕業として。


ただ、目を閉じていた時に。



親父は。母さんの為に、、



勿論。


親父の事が嫌いになって、、


という、選択肢が無い訳じゃない。



けど。


母さんは、こんな親父を見て。


普通に暮らしていられる様な人じゃ、ないはずだ。



居なくなってから。じゃ、遅かった。


絆も思いも。


最初から、俺は分かっていた。



それなのに、何でわざわざ遠回りしたんだ。



「俺が。馬鹿だったよ、、」


懐かしい天井が揺れた。



虫の音色。


向こうじゃ、感じられなかったものだ。



「寝れない、、」



特に話があった訳じゃない。


飯を食う時にはいつも会話は無かった。



でもそこには会話には無い。


何かがあった様な気がする。



何かをするなら特別な場所。


蛍川か。蛍池。だろう、、



「綺麗だなぁ。。


、、ええのぅ。



けど、まだ足りぬ。


まだ。まだ。足りぬ。



早く会いたい、よ、」



伝承は神社。蛍川。蛍池の看板に各々あった。


だからもし儀式的な事をするなら。


蛍の居る場所なはずだった。



川には、ゲンジホタル。


池には、ヘイケホタルが居た。



そのどちらかで。


必ず儀式が行われているハズだ。



夜になると、家を出て。


俺と親父は蛍の居る場所で張っていた。



流石、蛍の名前を売っているだけはある。


まだ数は少ないが、どれも綺麗に翔んでいた。


蛍の保護団体。通称"蛍の会"も伊達ではない。



資料は全てあった。親父が調べたのが全部だ。


まだ知らない事はあるだろうが。


それは、また聞けば良い。



犯人に。



だから後は、犯人を見付けるだけだった。



「かゆっ、」


蚊に刺されながら。


耳元で鳴る蚊の音にも慣れた、



そうして、何日もしない内に。


川で変化があった。



ガサ、ガサ、、



女の子だ。



周りには、前よりも多くの蛍が飛び始めていた。



バレない様に、姿勢を低くして。


女の子の様子を見た。



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川で女の子が何かをしようとしている。


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一応、親父には連絡した。


裏に居る奴を見付けるのが本命だ。


女の子には悪いが。親父がとめるのを待つしかない。



女の子「どうか、、と、、一緒、、なれる、、」


「まずい、。」


儀式?が始まった。


早く、親父!。


どうする、。止めた方が良いのか、?!



ガサ、ガサ、、


親父「やめるんだ。」


女の子「ひぃっ!」


女の子は、びっくりしていたが。


俺も内心。ドキドキとしていた。



親父は無事女の子の儀式を止めた。


「チッ、!」


だが、その瞬間。舌打ちが聞こえた。


ガサガサ、ガサ、



他にも誰かが居た様だった。


ガサガサ、ガサ、



親父「女の子は、頼んだ!


待てっ!!!」


ガサガサガサ、、



俺は携帯のライトで照らしながら。


女の子の方へ、近付いた。


「こんばんわぁ、?」



女の子を家に送りながら。


儀式の事についていろいろと聞いた。



女の子の話では、学校で儀式の話を聞いたらしく。


殆どの子は知ってるのだとか。



川は、一番身近らしく。


池の方でも儀式をする様だ。



川は大通りから、直ぐの場所にあった。


池は少し山の方に行かなくてはならない。


だから皆。川でやるらしい。



けど。そんだけ人が居なくなれば。


もっと問題になっているはずなんだが、、



観光地として、そんな由縁がある場所等。


皆怖がって来なくなるだろう。


だからそれごと。


無かった事にしているのだろう、、



今相手にしているのは、そういう相手だ。



そんな疑問や考えを抱きながらも。


女の子と話は弾んだ。


何だか。こういうのを、懐かしく感じた。



女の子の話しでは、どうやら儀式は。


自分達の考えていたものとは違く。


もっと。フラットなものだった。



儀式自体は、人が行方不明になる様なものでは無かった。


しかし、だとしたら皆は、何処に。 



どうして。神隠しが起きている、、



女の子は、先輩から聞いたと言っていたのだが。


どうやら、蛍が出るこの時期に。


蛍に好きな人と結ばれる様に願うと。


その2人は、両想いになれるという。



そんな、おまじないみたいな認識の様だった。



更にそれは、ここら辺の学校だけではなく。


近隣の学校の生徒や。大人に至るまで。


幅広い人がやっているらしい。



女の子「何で、、とめたんですか?。」


だから。女の子は、少し困った顔をしていた。



それはそうだろう。


俺達は、乙女の恋路の邪魔をしたんだ。



「ほ、ほらっ。


夜は、危ないしさ。



野生の動物だって、出るかも知れない。



川も落ちたら危ないから。


ボランティアで?パトロールしているんだよっ。」


出任せの言葉に、矛盾が無いかびくびくする。



「後、たまに。


不法投棄する人も居てね??」


女の子「あぁ。。」


女の子は納得した様な顔をした。



女の子「お兄さんは、"蛍の会"の方。


、、ですか??」


追い打ちを掛けるかの様にして、


女の子は俺に再び質問をした。


「いや。


でもまあ、そんな様な。者かな??」


女の子「家。ここなんで。」



質問にはドギマギして焦ったが。


何とか。上手くやれただろうか。


「あ、うん。


もし。お友達か何かが川に行こうとしてたら。



危ないからとめてあげて下さい。」


女の子「はい。


ありがとうございました。」



俺は女の子に連絡先を教えて貰い。


その後も、儀式について詳しく聞く事にした。



そして、今度。他の女の子で。


儀式を行って行方不明になっていない人に、


話を聞く事が出来そうだ。



少しずつ。明らかになってゆく事実。



だが。


この時には、まだ互いに知らなかった。



このまじないの、恐ろしさを。


女の子「ただいまー」



それから何日かして。


女の子から連絡があった。



俺は、女の子のお陰で。


儀式を行っても尚。


行方不明になっていない子に、話を聞けた。



「んで。?


何か、用ですか??」


今時の子供は、すごいなぁ。


横暴?な態度で。


まるで、こっちが悪い事をしたみたいだ。



だが。呼んだのは俺だ。


嫌々感を出しながら話す女の子の友達に。


幾つかの質問をしなければ。



勿論。本当の事は言えない。


上手く、話さなければ、、



「川?でのまじないは。


誰から聞いたのかな?」


女の子の友達「何でそんな事聞くの?」


「えと。。」


まさかそんな返しが反って来るとは思わなかった。


「最近。夜遅くに川や池に行く若い子が多くて。


事故や怪我に合わないように呼び掛けをしていたんだ。」


女の子の友達は、警戒心が強いみたいだ。


女の子の友達「ふーん。」


「そしたら、何か。


若い子の間でそういう話が流行ってるみたいでさぁ?。


だから。どういうのかなぁ?って聞きたかったんだよ。」



それも、そうだろう。


これが普通だ。


女の子の友達「そうですか。」


「うん、、」


若い子と話すのは難しい。


そんな機会は、無かったからな、、


女の子の友達「えーと。


何かホタルが飛んでる時に。


誰も居ない時に願い事を話して。


それが、叶うってのを。


私は先輩から聞きました。」


「そうなんだ。ね、、」


内容は女の子と同じだった。


発生源が何処からかは分からないが。


誰かが誰かに伝え。


連鎖的に拡がって行ったんだろう。



「、因みに。願い事とかって、。


何を願ったのかとか、教えて貰えたり。するかな?」


女の子の友達「え。?


キモ、」


俺は、地雷を踏んだ様だった。


女の子の友達の態度がまた変わってしまった。


女の子の友達「え。何でですか?


普通にキモいんだけど。」



どうしてこの子は、こういう酷い言葉を。


恰も平然と。ずかずかと、言うのだろうか。


女の子の友達「あの子から聞いたけど。


あんた。蛍の会の人なんでしょ?」


「まっ、まあ。」


女の子の友達「私。蛍の会。


おじいちゃんが会員だけど。


あんたみたいなん。"居ない"って。」



まずい。


、、。


状況としては最悪だ。どう言い訳をする。



「あくまで俺の場合は、"自称"なんで。


本物。の人では無いんだよ。



都会の方に住んでて。


こういう所の伝承や、若者の考えとか?


気持ち。とかを、。聞いたりして。


どうやったら、より良い街作りが出来るかなぁ、?


って。


、、そういうのでなんだ、?。」


どうだっ。?!


女の子の友達「申し訳無いですけど。


もう、私と彼女にも。


関わらないで下さい。」



そう言うと、女の子の友達は。


帰って行ってしまった。


「はぁあ。。」


若者と話すのは難しい。


いや。俺が下手くそだったのか、、?


「ぁああぁ!」



女の子の友達「そうそう。


んで、何か自称だったらしいし。


ウチのおじいちゃんが蛍の会の会員っつったら。


気まずそうにしててさぁ。



マジ。関わらない方が良いよ。アイツ。」


女の子「願い事って、何を願ったの?」


女の子の友達「確か、、


カッコいい彼ピが欲しい。?みたいなんだったけど。」


女の子「そっか。


分かった。


何かごめんね??」


女の子の友達「いいよいいよ。


それよりさあ、、?」



親父「んで。


どうだった?」


「若いもんの考えは、分からん。」


親父「そうだな。



ゆーても、お前も。


まだ、若いんだがな。」


手渡されたビールの口を開けて、


それを呑み込んだ。



結局。進展は無かった。


発信源も分からないし。


何が引き金になるのかも、分からない。



「また。いちからだな。」


落ち込む背中に、親父の手を置かれる。


その時。女の子から連絡が来た。



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先程は、あまり。


力に為れず、すいません。



お兄さんが、何をしているのかは分からないですが。


確かに、夜道の川沿いは危ないとも思うので。


私も、出来るだけ呼び掛けてみます。



あと、友達が願った事は。



彼氏が欲しい。



だ、そうです。


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「何て、いい子なんだ、。」


親父「どうした。」


送られて来た文面を見せる。


親父「こういう子も居るとね。」


「う、しっ!」


俺は、もう少しだけ。頑張る様な気がした。



女の子「って、言いはしたけど。


やっぱり気になっちゃうよねぇ、。」


メールを送りながら、私はまたこの場所に来ていた。



女の子「ホタルさーん。?


出てきてちょーだーい。!」


今日はいつもよりは居ない。


「んー。


今日は。居ないのかなぁ、、?」


ガサガサ、!


女の子「誰か、居るの。?」



「、、いやーぁ。


こんばんわ。



こんな所で、何をしてるのかなぁ?」


それは優しそうなおじさんだった。


女の子「いや。ちょっと、、


散歩です!」


優しそうなおじさん「そうかいそうかい。


いやー。近頃よく若い子が居てねえ?


危ないから、見回りをしてたんだわ。」


女の子「へー、、


そうだったんですねぇ?」


あのお兄さんのお仲間かなぁ、?


そう、思っていた。




優しそうなおじさん「何か。


まじないみたいなんが流行ってるみたいで。



願い事が叶うとかってねえ、?



「おじさん知ってるんですか?」


優しそうなおじさん「いやぁ。まあ。


それをするなら、とっておきの。


良い所、。知ってるよ?」


女の子「、えっ?」



ガンガンガンガン!


「すいませーん??


×××署の者ですがぁ。」



朝早く。玄関を叩く音で起こされる。


「はーぃ、」 


今朝も遅くまで川と池を見回りしていた。


目蓋をうっすらと開きながら、玄関へと向かう。


ガラガラガラガラ。


玄関を開けると、そこにはふたりの警察官と。


後ろの方には、夫婦が居た。



ひとりの警察官「朝早くにすいません。


こちらに、この方はいらっしゃいますか?」


差し出された写真には。


女の子の顔があった。



「えっ、、。


何か。あったんですか!??」


もうひとりの警察官「いや。


家に帰って無くてですね?



それで。


お友達さんが、怪しい人と関わってるとかで。


こちらにお伺いした次第でして。」


「はぁ、。」


きっとあの子だろう。


ろくなことしないなぁ、、


、、って待てよ。


まさかあの子。儀式をしたのか、!??


少しずつ目が覚めて来た。



もうひとりの警察官「ちょっと。家の中とかを、


確認させて頂いてもよろしいでしょうか?



勿論、無理にとは言いませんが、」


話を遮る様にして。


後ろから警察官を押し退けて、


お母さんらしき人は、勝手に家に上がった。


お母さんらしき人「何処なの!!?


何処に居るの!!」


「ちょっと、困ります!」


突然の出来事に身体が付いていかなかった。



家の中には色んな書類が。


ましてや、只でさえ周りの人によく思われてないんだ。



お母さんらしき人「何処!!?」


お母さんらしき人は、家の家を勝手に探し出した。


まるで流れるかの様に、勝手に警察官も入って来た。


ひとりの警察官「すいませんねぇ。?



失礼します。」



やべぇよ、、!


どうしよう!!


その時。


親父「何、勝手に人様の家に上がり込んでる!!


どーゆー用件なんだ!?


何様なんだ!!?」


親父の怒鳴り声が家外まで響いた。


ひとりの警察官「こちらの娘さんが、


あなたの息子さんと関わりがあったようで。」


親父「なに。?


関わりがあれば、勝手に人様の家に上がって良いと?」


親父の言葉に圧倒されながら、


もうひとりの警察官は言い訳をした。


もうひとりの警察官「すいません。


我々は止めに入っただけで、。」


親父「言い訳はよかね!


入りたきゃ紙持ってくりゃいいがね!!



あらかた家出だろうに、。



今の時代は、家庭内の問題を。


人様のせいにするんか??



家には来とらん!



一体どうなってるんだ!


はよ、出てげ!!」



無口だったお父さんらしき人は、


泣くお母さんらしき人を支えながら。


俺に頭を下げて、出て行った。


もうひとりの警察官「大変。


申し訳ありませんでした。」


警察は、帽子を取り。謝った。



「はぁ。」


俺は深い溜め息吐いた。


親父「お前もお前だ、。


ちゃんと言わなきゃいけん時ははっきり言えよ!?」


「ぅん。」


何だか、最悪な1日の始まりだった。


その後、女の子が居そうな場所を探したが。


居るような気配や痕跡は無かった。



結局。


女の子は、"行方不明"として扱われた。


親父「新たな、被害者か。


はよ原因を突き止めなけりゃあ、。


『大変な事』


が。起きるぞ、。」



女の子は、きっとこの件に関わっているのだろう。


でも、今。俺に出来る事は何もない、、 



ただ。無事を祈るしか。



悩んで居ると、知らない番号から着信があった。


「はぃ。」


「、、私です、」


電話の先は、女の子の友達だった。


「、、どうも。」


女の子の友達「あの、、


今朝は。すいませんでした、、」


「うぅん。、まぁ。


疑われる様な事をした、俺にも責任があるかと。



、、大丈夫?。」


すると、女の子は泣き出した。


女の子の友達「お願い、、します。


どうか。、


あの子を。



"助けて下さい、、"



泣いてる女の子の友達に。


掛ける言葉は無かった。



俺には誰かを助けられるだけの能力や。力が。



無かったからだ。



だから、返答は見付からなかった。


俺が、もう少し。


しっかり。していたら。



「何か、分かった事があれば。


良かったら、教えてくれるかな? 



何か俺が出来る事を。


俺なりに、探してみるよ。



それぐらいしか、。」


女の子の友達は、電話の先で呼吸を整えると。


ゆっくりと、話し出した。



女の子の友達「神社、、」


「えっ?、」


女の子の友達「神社の近くで。


あの子を、見たって友達が居て。」


「警察には、??」


女の子の友達「言ったけど、、


探しても居なかった、って。」


重要な手懸りだった。


「ありがとう。


また何かあったら、連絡する。!」


女の子の友達「、、うん。」


どうして神社なんかに、、。


神社にナニカあるのか?!


俺は玄関へと急いだ。


「何とか、足掻いてみるよ。?


じゃぁ。!」



神社。


何らかの儀式をするならば。


それなりのオキマリってやつがあるはずだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


神社に行ってくる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そう完結に親父に伝えた。



だが。ホタルは、、?


この儀式には、ホタルが不可欠なはず、。



神社の階段を上っていて。


俺は驚いた。



「ホタル、、が居る。」


階段の先には、煜く灯りが見えた。



進む足は早くなった。


こんな階段を。


バカみたいに駆け上がったのは、


部活の練習以来だ。



「はぁっ、、


はぁ、、



はあ!!」


こんな、事で息切れするなんて。


あの時。ちゃんとやっとけば、よかった。


「はぁ、。


はぁ、、、!」

 

足が震えてるのが分かる。



何処だ。


ホタルは、、



暗い中で。


ホタルは小さく煜いていた。



携帯の明かりで息を整えながら案内板を見ると。


そこには、池があった。


「マジ、かよ。。」


ザッ、ザッ、


敷き詰められた砂利は、所々。


足場を不安定にさせた。



「どうして。


こんな、近くにあったのに。



はぁ、。来なかったんだっ。」


一歩進む度に、足はじんじんとした。


すると、目の前にホタルの群れがあった。


とても、綺麗だった。



が。


その先には、知らない女の子と。


知らない男の人が居た。



知らない女の子「ホタルノカガヤキヨ


ワレノジカントヒキカエニ


ワレノネガイヲ、カナエタマエ。」



「やめろぉおおお!!」


、、遅かった。


水面が眩く光ると、知らない女の子は消えていた。


知らない男の人「あぁ。


愛おしい、ホタル。


大切な大切なホタル。」


「お前か!


この行方不明事件の犯人は!」


暗がりで、シルエットだけが見える。


知らない男の人「ふはははは!


人聞きの悪い子だなぁ。?



私は、ただ。


"まじないのやり方を教えてあげただけだよ"



若いって。良いねえ。


無知。だからさぁあ??



『何でも願えば叶うと思ってる』



けど。


そんな、世の中は。甘くないんだよ。



いくら頑張ったって。


いくら苦労したって。


いくら願ったって。



変わらないモノが。


変わりはしない事が、あるのさ。」


「それとこの件が、、どういう関わりがあるんだ!」


探し求めていた答えが。今、目の前にあった。



知らない男の人「そうだねぇ。


まあ。もう、バレちゃったし。



教えて、あげようか。



昔。いつからか、そうなのかは分からないが。 



人々は争い。憎しみ合い。命を奪い合った。


身分や世間体によって。


好きな人と。好きな相手と。


自由に、恋愛する事すらも。


赦されなかったんだ。



そんな彼女達は。


ホタルの煜きを見て。


羨ましく思ったんだ。



私も。一瞬の命で良いから。



僅かな時で良いから。



好きな人と。居たい。


側に寄り添いたい、ってね。?



それが始まりさ。


そう、言われてる。」


「って、事は。


もしかして。。!」


寒気に似た恐怖が。俺を震わせた。


知らない男の人「あぁ!!


そうだよ。



ここに居るのが。


居なくなった彼女達さぁああ!!」



空を不自由に飛び回る灯りは。


弱々しく。自らを魅せた。



「どうして!そんな、事を!!」


ホタルの灯りに照らされた男の顔は、


とても満足げな顔をしていた。


知らない男の人「伝承には、こう書かれていた。



"ホタルの煜きで。


黄泉の門が。開かれると"



「黄泉の、門??」


何を言っているのか俺には分からなかった。


知らない男の人「私は愛する人を喪った。


だから、



『蛍の煜き(命)と引き換えに、黄泉の国から呼び戻す!』



「えっ、。」


知らない男の人「蛍の煜きで。世界が満たされる時。


私の願いは。聞き届けられる!!」


親父「やめろぉおお!!!」



知らない男の人「ホタルノイノチヨ


ミズカラノイノチトヒキカエニ。


ヨミノモンヲ、ヒラキタマエ、」



大地は揺れ。


水面は沸騰したように波打った。



ボコボコボコ、、!



知らない男の人「いよいよだぁあ。


やっと。。!!



長かった。。


ずっと、待ち望んで居た、!


ようやくだ。ようやく、。」



池は吹き零れるかの様に中から、水が溢れ出して来た。


知らない男の人「開いたぁあ!!


開いたぞぉおおおお!!!」


親父「早く逃げろ!!」


池の中から溢れ出した何かから。


そのおぞましいものから。


逃げるようにして、俺は親父の声のする方へと走った。



目の前には、親父が居た。


「親父も!早く逃げろ!」



親父は俺とすれ違った。


親父は自ら黄泉の入の方へ向かった。


すれ違い際に、親父はこう言った。


親父「母さんを。



"探してくる"



「親父ぃいいい!!!」


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