拝啓、嘘つきな神様へ。
春戯時:-)
第1話 君のヒーローになりたい。 Ⅰ
「じゃあ俺は君のヒーローになる。」
そう
これは二人の少年少女の長いようで短い、思い出のお話。苦しいけど大切な、思い出の一部始終だ。
これは俺が高校二年生の夏休みのこと。
そんな疲れきった春都の
今日はそんな綾花とゲームのフェスに行く日だった。春都は白いティーシャツにジーパンというラフな
「よーし、一番乗り……って、春都もう着いてたの?!」
明るい声がした方に視線を向ける。ふわりと舞う短い黒い髪の毛。そこには白いワンピースに身を包んだ綾花がいた。
「……それ綾花の推しの着てるワンピースに似てるな。」
「あ、でしょー。ネットで探すの大変だったけど、これも推しのため……てことで奮発しちゃいました~。」
「似合ってる。」と言いたかったが、喉に言葉がつっかえる。てへっ☆、と効果音がつかんと言わんばかりの綾花の表情に、自然と
「てか、それ以外に何か言うことあるんじゃないんですかぁー。」
「はいはい、似合ってるよー。」
「えー、嘘っぽい。」
「……、…ぁってる。」
「えー、何なにぃ。」
綾花が春都の目の前に来る。春都は思わず手で顔を
指の間から見える綾花は、ニヤニヤして、どこか楽しそうだった。
「~~っ、似合ってるって言ってんの!!」
「はーい、よくできました。」
俺の母さんかよ!いや落ち着け、落ち着くんだ俺。五、四、三、ニ、一……。
五秒間だけ深呼吸をして、ツッコミたい気持ちを抑えて自分を落ち着かせる。
「早いに
余裕そうに、どんどん前に進んでいく綾花。その綾花に何かやり返したいと思った……、が。今はゲームのフェスを優先ということで、その気持ちを抑え付けた。
「ほーら、何してるのっ。」
春都は綾花に手を引かれて改札を通り抜け、電車に乗る。
春都はそこで、ふと本で読んだことを思い出した。
「変なこと聞くけど綾花って、死ぬことって怖い?」
「え、春都さん急にどうしたの?変なものでも食べたのかしら?」
「なんだ、その急な金持ちそうな母さん口調。違うよ、この前読んだ本が"死とはなにか"っていうテーマでさ。」
「あー、そゆこと。別に怖くはないかな。」
そう答えた綾花は何処かへいってしまいそうなほど、
「まぁ、まだ電車降りるのには時間あるし、椅子座ろ。」
綾花に
「さっきの回答だけど、うん。やっぱり死が怖いわけではないかな。それよりも大切な人を失うことの方が怖い。」
綾花は真っ直ぐ春都を見つめる。だが、綾花のその視線に耐えられず春都はつい視線をそらす。
「それに、生物は皆等しくいつか死ぬ。それが少し早かっただけかー、って思う。」
「……漫画の推しの活躍が見れなくなるけど、いいの?」
「いや、それは駄目だわ。てか推しのためなら死んだとしても生き返るわ。てか、私はそう簡単に死にはしないよ。」
綾花は今にも消えてしまいそうだった。「心配性だな~。」という綾花の声に少し春都は安心する。
「じゃあ俺は君のヒーローになる。ヒーローになって綾花を蘇生する!」
「……。」
綾花がこちらを驚いた顔で見る。しばらくの沈黙の後、綾花がこう言った。
「なら私は君の神様になる。」
綾花は真面目な顔でそう言ったが、すぐにいつもの顔に戻る。
「それで春都を色んな困難から救ってやる。どうだ?凄いだろう。」
「あー……。ハイハイ、スゴイネー。」
「結構、真面目に答えたんだが?!」
綾花は少し涙目になった。そんな綾花を春都は愛おしく思った。
「あー、てか。私が春都の神様になったら一緒に歌手デビューできるんじゃない?!神様と歌ってみた、とか!」
「
春都と綾花の夢は歌手だ。春都が演奏して、綾花が歌う。そしていつか二人でライブをする、それが二人の夢だった。
「次はー。」
電車のアナウンスが静かな車内に響く。椅子を立って扉の前に立つ。
「じゃあ、いざ!!我らの戦場へ!」
「切り替え早。……あんま、はしゃぎすぎるなよ。」
「はい!隊長!!」
「うむ、よろしい。」
二人は顔を見合わせて笑い合った。そんな二人を見つめる、一つの影……。
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