パジャン島 十四

 一番見た事ある顔は?…と聞かれたら大抵自分と答える人間が多いだろう鏡…写真…瞳…鏡に映る自分と写真に写る自分相手から見た自分どれも自分ではあるが違う鏡と写真だった場合左右が逆転しているからだ



 ただ人間と言うのは面白い生き物で自分の顔を脳がより良く見えるように調整するらしいでは自分に置き換えてみた結果…別に良くも無ければそこまで悪くない顔をしているという事が分かった



 そんな俺に一晩を共にとか言って来たキキョウと言われている女性はまさに釣り合わないと分かる…服装…化粧…顔…言葉…冴えなそうな奴を見つけたと思われ絶好の鴨にされているって考えて良さそうだ



 さて、行ってみようという気持ちは正直あるが断ろうただ下手な断り方をしたら今後に影響する可能性が高いさいわい綾瀬がいるからここは余裕だな



「そのお誘い大変ありがたいのですが…見ての通り連れがこんな状態でしてこれから宿に運ぶのでまた機会があればその時はお受けします」これで印象を悪くする事無く断れたと思うが



「…そうですか少し残念です」さて、帰るか綾瀬を担ぎその場を立ち去ろうとした際「おいおいアイツ断ったぞ?」「マジか!?」少しざわついていたその中の一人が酔っているせいか



 声量を上げ「アイツらぁ~海岸のえぇっとあぁそうだった巧人あの野郎の所に行ってたの見たぞ!」「あんな落ちこぼれの所にわざわざ行くやつにどうしてキキョウ様があぁもうどうなっても良い」



 席を立ちそいつは先程のキキョウの元に行き誘ったその結果二人は夜の街へと姿を消していったどうや

 ら彼は成功したようだ「ながづきぃもっど飲めぇ」



 この酔っ払い…めんどくせぇ降ろして帰ってやろうか迷ったが錦戸に殺される気がするのでやめておこうしかしだ…



 コイツ身体が妙に柔らかい一体今どっちなんだ?背中にほんのりあると思えばあるのか?これは?そんなくだらない事を考えている内に更に酔いが醒める「おい!着いたぞ」「……」



 寝てやがる部屋に戻ると錦戸が待っていた「お帰りなさ…い」「錦戸まだ起きてたんだな」「起きてたらダメな理由ありました?」「へ?」「…所で晴ちゃん酔わせてどうするつもりだったんですか?まさかとは思いますが」



「錦戸お前とんでもない誤解をしていないか?」「五回?やっぱそういう事ですか」あぁこれはダメっぽいな「それで?どうなんですか?仲月さん?って待ちなさい」俺は綾瀬を錦戸に押し付け宿を飛び出し巧人の元に向かった



 あまりに急いでいたおかしくなったのかアルコールが入っていたせいなのか分からないが道の途中で人が倒れているのを見た気がした正直今はそれどころでは無かった



 その後事情を話し無事巧人の所で一晩過ごした

 次の日「それ、戻っても大丈夫なんですか?」「綾瀬が起きて説明してくれていれば俺は助かる」



 宿に戻る際に騒ぎが起きていた、通り過ぎるついでに見たら昨日ナンパに成功した男の死体があった

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