醜い王子と地味令嬢
朝姫 夢
プロローグ
「リィス」
輝かんばかりの笑顔を向けて
そしてこの瞬間私に突き刺さる、いくつもの鋭い視線。
(あぁ、なんて……)
面倒なことになってしまったのかしら、なんて。何があっても口にはできませんけれど。
でもどうか、心の中でそう思うだけならば許してほしいのです。
そもそもどうして、こんなことになってしまったの?
私は目立たない地味な令嬢だったはずなのに。
どうして今こんなに、目立ってしまっているの?
目の前の事柄から目を背けようとしても、直視できないほどの眩しい笑顔と痛いくらいの視線の温度差に、これが現実なのだと突きつけられる感覚。
(あぁ、胃が痛いです……)
キリキリと締め付けるような痛みを訴えてくるこの感覚は、どう考えても夢ではありえない。
とうとう体まで、私に現実を直視させようとするのですね。
(本当に、どうしてこうなってしまったのでしょうか……)
誰に問いかけても答えは出ないと分かっていても、問いかけずにはいられないのです。
そもそも私の運命は、笑顔で手を差し出しているこの方に出会った時から決まってしまっていたのですから。
あぁ、でも。
もし、叶うのならば。
時を戻して欲しいなんて贅沢は言わないので。
同じ選択で構わないので。
もう少しだけ、平穏な人生を送りたかったと思うのです。
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