第12話 身体強化と物体強化

 マーリンさんが言った身体強化と物体強化という言葉を俺は、聞いたことはあったが、あまり詳しくは知っていなかった。


「身体強化と物体強化とは、自身の魔力を流すことによって自身の身体や武器などを強化することじゃな。流す魔力量に応じた強化をすることができるのじゃ」


「それは分かりましたけど、俺の固有魔法と何が関係あるんですか?」


「身体強化と物体強化は単純で強力な分、魔力の消費が激しいのじゃ。普通はここぞ!という時や短い戦闘の間でしか使われることない。

 だが、魔力を回復させること強化を持続させることができるジークの固有魔法と相性が良いというわけじゃ」


「なるほど………」


「確かにそれならジークと相性良さそうだね」


 つまり身体強化、物体強化を戦いの間、持続させることで俺の能力を底上げして戦うということだった。

 確かにそれを実現することができるなら、戦いにおいて非常に大きなアドバンテージを得ることができる。


「しかしそれを行うためには、ジークには体力・体作り、魔力回復魔法を無意識の中でも使用できるようにしてもらう必要がある。なぜだか分かるか?」


「基礎ステータスを上げることで、身体強化の効果を上げるため………?」

「戦いのなかで魔力を切らさずに戦い続けなきゃいけないから!」


「ジークは半分正解、シルヴィちゃんは正解じゃな。

 ジークの言った通り、基礎となるステータスをあげることで身体強化の効果は上がる。それとは別に長時間、また過度な身体強化は己の肉体を壊す要因にもなりえるのじゃ。」


 つまり身体強化とは、魔力で無理矢理強化してる訳であって、身体には相当な負担をかけているらしい。

 だから貧弱な身体に膨大な魔力を流し込んで強化してもその動きに身体が耐えきれず、内側から肉体が崩壊してしまうとのことらしい。


「先ほど、ジークの身体を見た感じはまだ身体強化をしても10分と持たないじゃろう」


「あっ、だからさっき服を脱がせて俺の身体の状態を確認したんですね……!」


「そういうことじゃ。

 そして、その強化を維持するためには膨大な魔力が必要になる。それを補うための魔力回復魔法じゃが、ジークの魔力値を考えると高頻度で使わなければならない。じゃから、無意識のうちにでも使えるようにしとかねばならんのう」


 先ほどの裸になれ発言はちゃんと意味があることだったと知り、納得する。

 魔力回復魔法についても説明を受け、俺のやるべきことが明確になった。


「さぁ、説明はこの辺にしておいて今日はもう休みなさい。疲れたじゃろう。部屋を一部屋貸してやる。2人で一部屋になるが、問題はないじゃろう」


「え?い、いや、さすがに______」


「はい!大丈夫です!私とジークで寝ます!」


 俺の抗議の声は、シルの宣言によって掻き消されてしまった。

 なんでそんなにヤル気に満ち溢れた声で言うんだシルは!

 さすがにこの歳で一緒は、マズイだろ!

 さっき湖から帰ってきたセレナさんがすごい顔して、俺から距離を取ってるんだけど!?


「ちょ、ちょっとシル!俺は………」


「いいよね?」


「いや、だから………」


「いいよね?」


「はい……いいです……」


 時々あるこのシルの勢いはなんなのだろう?

 なんか妙に迫力あるし。

 はぁ……もういいや。

 俺は、心の中で文句を言うくらいしか出来ず、結局シルと同じ部屋で寝ることになった。


「ほっほっほ、若いってのは、いいのう〜」


♢ ♢ ♢


「だから、駄目だって言ってるだろ!」


 俺がこの狭い部屋で叫んでいるには、れっきとした理由がある。


「いいじゃん!べつに!2人で一緒に寝ようよ!」


 この同じベッドで寝ようしてくる幼馴染を説得するためである。


「いーや、駄目だ!俺が下で寝るから、シルがベッドで寝ろ!」


「そんなのジークに悪いよ!2人でベッドに寝ればいいじゃん!ジークは、そんなに私と寝るのが嫌なの……?」


「別に嫌って訳じゃないんだ。ただ…………」


「ただ?」


「シルみたいな可愛い子が隣で寝ていたら、落ち着かないんだ……!」


「え…?か、可愛いっ?!」


 突然、シルは顔を赤く染めてしまった。

 どうしたのだろう?具合でも悪くなったのか?


「どうした?顔が赤いぞ?」


「な、なんでもない!そ、それじゃ、私は寝るから!おやすみ!」


「あ、ああ、おやすみ」


 どうしたんだ?急に素直になって?

 まぁ、いいや。俺も寝よ。



♢ ♢ ♢


 翌朝、俺たちはセレナさんと共にマーリンさんから早速修行をつけてもらえることになった。


「よし、では始める前にジーク、儂のことは師匠と呼ぶように!」


「は、はい!師匠!」


「私も師匠って呼ばなきゃだめ?」


「シルヴィちゃんは好きに呼ぶと良いぞ、ほっほっほっ」


「はーい!おじいちゃん!」


 なぜか俺だけがマーリンさんのことを師匠と呼ぶように言われた。このじじ………師匠は、女の子に甘い気がする。


「ごほん、では改めてスキルの確認じゃ。

 ジークは確か【特級】鑑定を持っておったな。試しに使ってみてくれんか。魔力を目に集中させればできるはずじゃ」


「分かりました、やってみます!」


 昨日感じた魔力を目に集中させ、シルを見る。

 するとシルのステータスが視界に浮かんできた。

 見えたステータスはこんな感じだった。


名前:シルヴィ

種族:人間

HP:100/100

魔力:30000/30000

筋力:10

耐久:10

敏捷:15

《スキル》

【上級】風魔法・・・風属性の魔法

【上級】水魔法・・・水属性の魔法

【特級】光魔法・・・光属性の魔法

【王級】同化・・・不明


 改めて見ると、シルのスキルと魔力値は凄まじいものがある。

 また、特級までのスキルの詳細は見ることができたのに王級のスキルは見ることができなかった。

 続けてセレナさんのステータスを見ようとする。


「私のは見ないで」


 そう言い、彼女はこちらを睨んできたので、代わりに自分を鑑定してみる。


名前:ジーク

種族:人間

HP:100/100

魔力:80/100

筋力:20

耐久:20

敏捷:20

《スキル》

【上級】火魔法・・・火属性の魔法

【上級】剣術・・・剣の扱いが上手くなる

【特級】鑑定・・・あらゆるものの情報を見ることができる

【王級】魔力回復魔法・・・不明


 俺のステータスはこんな感じだった。

 鑑定を2回使ったからか、魔力が20減っている。俺の方も同じで王級のスキルである魔力回復魔法の詳細を見ることはできなかった。

 そのことを話し、見えた情報を師匠に伝える。


「じゃあ私の【王級】同化って、どんなスキルなのかはわからないんだ」


「ふむふむ、そうじゃの。【特級】鑑定なら特級までのスキルの詳細しか見ることはできん。儂の鑑定も特級じゃから、シルヴィちゃんの【王級】同化の詳細はわからん。王級のスキルは特殊なものが多いから、気長にやっていくしかないのう」


 鑑定は鑑定自身の等級のスキルまでの詳細しか見ることができないらしい。

 それならどうして師匠は俺のスキルのことを知っていたのだろう。

 今度その事について聞こうと思っている間に師匠が次のことをしようとする。


「よし、では次じゃ。今、ジークの魔力が減っているから自分に向かって魔力回復魔法を使ってみてくれ。呪文は《マジックヒール》じゃ」


「はい!《マジックヒール》!」


 師匠に言われ、俺は自分に魔力回復魔法をかけた。

 魔力を込めて呪文を言うと、俺の体が青白く光る。

 自分ではわからないが、師匠が驚いているので多分成功したのだろう。


「ほう。ちゃんと魔力が回復されておるのぉ。改めて、恐ろしいスキルだという事がわかるのう。にしても、よく一発で成功させたな。ジークには、魔法の才能があるのかもしれん」


「本当に俺が魔法を……」


「良かったね〜!ジーク!」


「……ふん」


 初めて魔法を使ったことに感動していると、セレナさんが不満げな顔でこちらを見ていた。


「よし。それじゃ、これから毎日ジークは朝の間は、体力・身体作り、シルヴィちゃんとセレナは魔法の修行、昼からは3人で狩りをして食材を調達してもらう」


「はい!」

「はーい!」

「……わかったわ」


 師匠によって今後のやる事が決まり、気合いを入れる。


「ところでおじいちゃん」


「なんじゃ?」


「おじいちゃんスキルと魔力値はどのくらい?」


 シルが俺も気になっていた質問をする。


「儂か?儂の魔力値は、500じゃぞ」


「「へ?」」


 なんとマーリンさんの魔力値は500しかないらしい。

 火の賢者と呼ばれる人がそんな魔力値なんてことがあるのか?


「え?じゃあ、これまでの最低の魔力値の人ってもしかして、おじいちゃん?」


「まぁ、そうなるのう」


「そ、そんなので戦うことが出来たんですか?」


「そうじゃな。儂もジークのようにスキルに恵まれての。そのスキルのおかげで魔力不足を補うことが出来たんじゃ。……まぁそれだけではないんだがのう」


「そのスキルって…一体……?」

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