新説・狼の眉毛 ~俺は人間は殴らないけどお前ら人間じゃねぇ! 俺に手を出す奴は幼馴染だろうが妹だろうが二度と暴力が振るえない体にしてやる~

地空月照_チカラツキテル

民話『狼の眉毛』 ~日出市月見町の昔話~

 むかしむかし、あるところに若い夫婦が住んでおった。

 二人は貧しくとも仲睦まじく、慎ましく幸せに暮らしておった。


 ある日、夫が山へ猟に出かけると、迷い込んだ庄屋の娘が熊に襲われておった。

 夫は熊を撃ってこれを助けた。


 庄屋の娘は夫をいたく気に入り、自分の婿になれと言うて来た。

 夫は、もう妻が居る身なので、と言って、これを断った。


 その夜、夫婦が住む粗末な庵に火が掛けられた。

 慌てて飛び出してみれば、庄屋のところの若い衆に囲まれている。


 庄屋は、そこの猟師がうちの娘に乱暴を働いたと言う。

 夫婦はそんなはずはない、と訴えるも、庄屋も娘もニタニタと笑うばかりで聞く耳持たぬ。

 夫は強姦の罪で、妻はそれをかばった罪で、若い衆に散々に乱暴された。


 家を燃やされ身ぐるみ剥がれ、命からがら山へ逃れた二人は、そこで狼に出くわしてしまう。

 見たことも無いような蒼白い毛並みの、熊より大きな狼であった。


 ここで食われて死ぬのかと観念した二人は、せめて二人揃ってと狼に懇願した。

 狼は、我は人など食わぬと答え、己の眉毛をちょいと1本切って夫婦に渡した。

 これをかざして村人を見てみれば分かる、と言う。


 夫婦は眉毛を翳して互いの姿を見てみたが、なんの変哲もないただの人間にすぎぬ。

 だが、追って来た若い衆を見れば、獣面人身の悍ましい化物共ではないか。


 狼は若い衆を残らず踏み潰した。庄屋も、その娘も八つ裂きにした。

 村は血の海になったが、人でなしはいなくなったとさ。




 めでたしめでたし

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