第101話
「フィル大丈夫かな?」
フィルを一人残して部屋を出た僕達は同じ階層の広間で時間を潰していた。僕達の他にも数人の乗客が思い思いに過ごしている。
念のため再襲撃や別の刺客を警戒するために同じ階層に留まってはいるが、警戒していないフィルの感知範囲よりは外といった距離を取っている。
あまり周囲に聞かせるような話でもないし周囲に音を漏らさないよう、空気の振動を止めている。
「どうだろうね。今まではあくまで予想だったけど今回の事で確定しちゃったからね。流石にショックだったんじゃない」
「そうだよね。私もお姉ちゃんに殺されそうになったらショックかも」
うーん、マキナちゃんとフィルでは兄弟関係的にショックの受け方も違いそうだけど。まあショックを受けてること自体は一緒だからいいのかな。
「ねえ、もう襲撃は終わりかな?」
「どうだろう、王族の命を狙っている割には僕を襲ってきた二人以外大したことなかったし、本命は別にいるってのもありそうだけど」
今回襲撃にきたヤツらは最初に襲ってきたヤツに比べて大分格が落ちた。あの二人以外は全員まとめてかかってもフィル一人で対処できるレベルだった。兄弟なんだしフィルの強さはある程度知っているはず、あの程度の刺客ではどうにもならないと分かるはずなんだけどな。
「最初に襲ってきたのがあれだけ強かったしアイツで終わる予定で今回は急遽別の奴ら用意したってことなのかも」
「あー、そうなのかな。警戒しすぎてたのか」
気が付けば広間にも人が増えてきた。明らかに話してるように見えるのに声が聞こえないのは怪しく見えそうなので話を変えようか。
話していた僕達の間を一匹の蝿が横切っていく。そのまま僕達の部屋に向かって飛んでいくのを潰さないように捕まえる。
「どうしたの?」
「なんか怪しかったから捕まえた」
いままで見てきた虫の類には意識や感情といったものを感じたことが無い。にも関わらずこの蝿にはしっかりとした意思を感じた。というよりは人間の意識が乗り移った感じだ。虫を操ったり憑依できる異能の力なのかもしれない。
「なんかこの蝿操られてるっぽいんだよね。こんな小さな虫なんて偵察にはうってつけじゃない?」
「確かに、でもなんで潰さないの?」
「潰したら操作が切れちゃうかもしれないからね。主が誰か調べる為に捕まえるだけにしておいたんだ。さて、 ”
星の導き。さっき遠隔監視の異能使いを見つけた時にも使った新技。魔法や異能の力の繋がりを辿って力の大本を探る力。日常での使い道は無いけど、誰かに狙われているときには役に立つ。
蝿を操っている力を辿って使い手を探っていくと途中で繋がりが切れた。蝿からも意思を感じ無くなる。
「逃げられちゃった」
「操ってるのが誰か分からなかったの?」
「うん、途中で操作止めたみたい。ちょっと迂闊だったかな。声を聞くこともできるのか探ってることに気付かれたみたい」
「こいつを操ってたのもフィルを狙ってたのかな?」
「だと思う。フィルの方に向かってたしね。とは言っても探りきれなかったからあくまで推測だけど」
「そろそろフィルのところに戻ろう? さっきの奴ら以外にも狙ってる奴いるみたいだし」
マキナちゃんが立ち上がるのに合わせて僕も立つ。座っていて少し硬くなった体をほぐすため大きく伸びをして凝りをとっていく。
話している間も部屋に近づくヤツがいないかは確認していたけど今の蝿以外に怪しいヤツはいなかった。結局まだまだ気を抜くことはできなさそうだ。
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