第14話






 ワイルドベアに遭遇した翌日。


 村の病室の一室に僕は居た。



「調子はどう?」


「バッチリだよ。もう問題無いって言ってるのに、様子を見なさいってお姉ちゃんがうるさいんだよ」



 ワイルドベアの攻撃で意識を失っていたマキナちゃんのお見舞い来ている。あれからマキナちゃんを背負って村に着いた後、お医者さんにマキナちゃんをお願いしてすぐ疲労で眠ってしまったのでマキナちゃんと会話するのは昨日ぶりだったりする。


「心配なんだよ。家族なんだから当然さ。とにかく無事でよかったよ」


「ごめんね。迷惑かけちゃって」


「何言ってるのさ、僕がヘマやらかしたせいじゃないか。こっちこそごめんね。助けてくれてありがとう」


「どういたしまして。ソラも助けてくれてありがとう」



 照れたようにマキナちゃんが笑う。



「それよりもソラを庇った時の光、あれっていったい何だったの?」


「はっきりとはわからないんだけどこの世界に来た時と同じだった気がする」


「それって召喚魔法に巻き込まれたっていう?」


「うん、だけど今回はあの三人もいなかったし召喚魔法とは違うのかもしれないけどね」


「でも原因がわからないと困っちゃうね。同じように戦闘中にあんなことがあったら今度こそ怪我じゃすまないかもしれないし」



 確かにそうだ。言い方は悪いが今回は怪我程度で済んだけれどもしも同じようなことがまたあれば今度は命に係わるかもしれない。フィリアさんなら何か知ってるかもしれないし近いうちに聞いてみよう。


 そんな風にマキナちゃんと二人で昨日のことを振り返っていると病室のドアが開いた。誰かと思ったらユキナさんだった。どうやら僕と同じようにお見舞いに来たらしい。



「おはようございます」


「おはよー、お姉ちゃん」


「おはよう二人とも。マキナ、怪我の具合は?」


「昨日から言ってるじゃん。全然大丈夫だよ」


「どうやらそうみたいね、先生も問題ないって仰っていたし。まったくもう、心配したんだから。元気になってよかったわ」


「ごめんね、お姉ちゃん」


「すみません、ユキナさん。僕が足を引っ張ったのが原因なんです。あまりマキナちゃんを責めないであげてください」


「いいんですよ、ソラさん。こういうときの為に付き添いとしてマキナが一緒に行っていたのだから。それにしてもマキナがすぐに倒せないなんてよっぽど相手が強かったのね」


「いや、それがその」



 なにかマキナちゃんが口ごもってる。どうかしたんだろうか?


 

「どうしたの?マキナ?」


「人形を持って行ってなくて」


「は?」



 人形?



「ちょっとマキナ、人形持って行ってなかったってどういうこと?」


「いや、あの、ソラが探索できる範囲なら人形は別に必要ないかなって」


「このお馬鹿!! 森に入るときは油断するなって言われてるでしょう! しかも異変の影響で森が普段と様子が違うってときに何してるの! そのせいでソラさんまで危険にさらして!」


「ごめんなさい」



 こんなに怒ってるユキナさん初めて見た。それにしてもさっきから人形ってなんのことだろう?



「あの、人形がどうかしたんですか?」


「ああ、急に怒り出して驚いたでしょう、ごめんなさい。実は私やマキナが戦うときには人形を使って戦うの。それなのにこの子ったら持って行ってなかったって言うから」


「え? じゃあ武器を持たずに森に入っていたってことですか?」


「ええ、ごめんなさい。この子が馬鹿なことしたせいでソラさんを危険な目に合わせてしまって」


「うぅ」



 マキナちゃんが随分落ち込んでいる。ユキナさんに叱られたことが堪えたみたいだ。



「僕が動揺して隙をさらさなければこんなことにならなかったんですし、僕もマキナちゃんも無事だったんですからもうそのくらいにしてあげてください」


「ソラさんがそういうなら。いい、マキナ。次からはこんなことないようにするのよ。わかったわね」


 そんなこんなでお見舞いから様変わりしたお説教も終わりを告げた。






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