第5章88話:開会のあいさつ
二人の開会の挨拶が始まる。
「ご紹介に預かりました、篠山メイです」
「チサトンやで。ウチのことはみんな知ってんな?」
メイは敬語であるが、チサトンはゴリゴリの関西弁である。
そういえば……
チサトンは、和歌山県出身だったか。
だったら関西弁というのは、不思議ではないのだろう。
「本年度のバトルアリーナの、開会挨拶を担当させていただき、誠に光栄です」
「本年度っていうか、篠山さんは毎年挨拶してるやん! あんたの挨拶、去年も見たで!?」
いきなりチサトンがツッコミを入れる。
会場から笑いが漏れた。
メイは、話しかけられるとは思ってなかったのか、困惑していた。
「そういえば篠山さん。あんた、大阪の女王って呼ばれてるらしいやん? 4連覇達成してて、史上初の5連覇に王手をかけてるんやって?」
「え? ええ、まあ、そうですが……」
これは開会の挨拶のはずだが……
二人による会話形式で進行する感じなのだろうか?
それともチサトンが、一方的にメイに話しかけてるだけか?
いずれにせよ、台本はなく、二人がアドリブで話していることだけは間違いない。
チサトンが言う。
「ウチは、あんたの5連覇を阻止しに来たねん」
あまりにもド直球なチサトンの宣戦布告。
おお~、と観客から感心の声が上がる。
「もちろん、篠山さんだけちゃうで。ここにいる全員、優勝をかけて戦うライバルや。ツラ見たらわかるわ、あんたらみんな強いな」
チサトンが選手一同を眺める。
そして続けた。
「これだけの手練れが一同に会することは、そうそうない。ほんま楽しみやな? 正々堂々、ええ試合しよな?」
一拍置いてから、今度は観客のほうを眺めて手を振った。
「観客のみなさんも、応援よろしく頼むで? 応援は選手の力になるからな~」
観客から、拍手が返される。
なんというか……
ノリと勢いで生きてる感じの人だな。
あと戦闘好きそう。
メイが一つ咳払いをしてから言った。
「どうやら私、宣戦布告されたみたいですが、」
そう前置きしてから、確固たる表情で告げた。
「私も、チサトンさんには負けるつもりはありません。もちろん、今年も私が優勝します。以上です」
拍手が起こる。
メイもチサトンも、ある意味でバトルアリーナにふさわしい、好戦的な挨拶であった。
これにて、開会の挨拶が終わった。
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