第4章:生活の安定

第4章64話:投げ銭



日曜日が過ぎて、月曜日となる。


朝。


晴れ。


私は、のそのそとベッドの中から起き上がった。


おもむろに携帯を確認する。


配信動画の再生数、チャンネル登録数などをチェックした。


配信が終わってからも、順調に数字が伸びている。


ちなみに、投げ銭は150万を越えていた。


PV収入も含めると、かなりの収益になるだろう。


「さて、大学にいく準備をしましょうか」


私はぽつりとつぶやき、朝食の支度を始める。





今日は3限から講義なので朝はゆっくりする。


やがて12時ごろに家を出て、大学に辿り着いた。


コトリと出会う。


サンドイッチを買って、中庭のベンチで食べることにした。


そのときコトリが、此間ダンジョンの話を始めた。


「ねえねえ、ルミさんの配信見た?」


「……!! えっと……まあ、はい」


「わー、見たんだ! 凄かったよね。またソロでのボス討伐だよ!」


「あはは、そうですね……!」


ぎこちなく相槌を打つ。


コトリがルミの配信を褒めるとき、ルミはこうして肯定し続けなければならないので、実質的な自画自賛タイムとなってしまうのだ。


ルミは、顔を赤らめながら、コトリの賞賛の言葉を聞き続けた。


と、そのときコトリは言った。


「あたし、ルミさんに5000円も投げ銭しちゃったよー! 早くバイト始めないと、金欠になっちゃう」


「……!」


そのときルミの顔が曇った。


本当に投げ銭したんだ、コトリさん……。


5000円。


社会人ならともかく、大学生からすると安くない金額である。


それをルミちゃんねるに投げるなんて。


やめるように言うべきか?


いや、でも、他人の推し活に水を差すのはご法度だ。


それは最悪、友人関係を壊してしまいかねない話になる。


けれど……


コトリは、そうとは知らず、友人にお金をプレゼントしているようなもの。


このまま正体を黙っていてもいいのか?


せめてコトリには、打ち明けておいたほうがいいかもしれない。


「あの……コトリさん?」


「ん、何?」


「今日、よければうちに遊びに来ませんか?」


「え! いいの?」


「はい。そうですね……午後の講義が終わったあとでも」


「うん、いくいく! じゃあ約束だよ!」


「はい」


コトリとマンションで遊ぶ約束をする。


もちろん「遊ぶ」というのは建前で、そのとき、正体を打ち明けるつもりだ。





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