第28話 青い悪魔

「はぁぁぁぁぁぁ!」


 フィラメルの一撃が放たれた。それは、巨大な大剣の一振。湊月はその攻撃を難なく避けるとその勢いを保ったまま回し蹴りを決める。


 しかし、その攻撃は読まれていたかのように止められてしまった。しかし、湊月はそのイガルクを奪取した時に初めから持っていたライフルをフィラメルに向ける。そして、容赦なく撃った。


「っ!?流石だな。基本的な動きは出来ているようだ。だが、その程度で私に勝てると思うの!?愚かな考えも甚だしいわ!」


 フィラメルはそう言って弾丸を避けると湊月に攻撃を繰り出す。しかし、何度攻撃してもその攻撃を湊月は避ける。そしてライフルを撃つ。


 湊月とフィラメルの2人はこんな動きを何度も続けた。そして、5回目に差し掛かった時、フィラメルが動く。


 なんと彼女は攻撃パターンを変えたのだ。その突然の変化に湊月は焦りを見せるが、それでも何とか対応する。


「舐めるなよ」


 湊月は一言そう呟くと、ライフルを1度背中の右肩ら辺に戻し背中の左肩ら辺に収納してある大剣を取り出す。


 そして、その剣でフィラメルを迎え撃つ。


 カキンッ!という甲高い音が鳴った。そして、2つの剣がぶつかった衝撃が辺りに走る。2人はその衝撃に耐えながら何度も剣を交差させる。


「そんななまくらで私と殺りあおうなんて反吐が出るわ!」


 フィラメルはそう言ってさらに速いスピードで動き始めた。そのとてつもない速さになってしまったブラウトイフェルに湊月は思わず動揺するが、それでも焦らず慌てることなく攻撃を捌いていく。


 その時、ふと目の端にイガルクが写った。そのイガルクはどうやら湊月を殺そうとこっちに迫ってきているらしい。湊月はそのイガルクを見てニヤリと笑うと、手首についてあるワイヤーロープを使いその場から離れる。そして、イガルクの後ろに立ち蹴り飛ばした。


 その蹴り飛ばされたイガルクに乗っていたムスペルヘイムの軍人は一瞬何が起こったのか分からなくなる。しかし、その後すぐに絶望した。


 なんと、目の前からフィラメルが迫ってきているのだ。湊月は襲ってきているから蹴り飛ばして壁にしようとしたのだ。


 しかし、フィラメルはその壁となったイガルクをなんの躊躇もなく切り裂く。その切り裂かれたイガルクは少し離れた場所で大爆発した。


「っ!?仲間も大切にしないのか!?」


「フンッ!邪魔をする者など仲間に必要ない!そんなことよりよそ見をしてて良いのか!?」


 フィラメルはそんなことを言いながら剣で切りつけてきた。しかし、湊月は直ぐにその攻撃に気が付き避ける。


「クソみたいな悪役だな。そんなんだからお前は俺に負けるんだよ」


 湊月はそう言ってフィラメルの機体に強烈なキックをお見舞する。すると、フィラメルの機体は少しふらつき後ろに下がった。


 その瞬間、フィラメルの足元が突如沈む。そして、そのまま落とし穴に落ちてしまった。


「っ!?なんでこんなところに!?貴様らが落とし穴を作っていた場所は知ってたはずなのに……!」


「フッ、馬鹿め。足元をよく注意しないからだ」


 湊月はそう言ってフィラメルの機体が落ちた穴に大量の爆薬を落とす。そして、そこに向けて銃を放った。


 そして、その瞬間大量の爆薬に火がつき大爆発が起こる。そして、さっきまではブラウトイフェルが一機入る程度の大きさだった穴が大きくなる。


 湊月はその様子を見ながら少し後退して仮面を外しシェイドに言った。


「フッ、俺は馬鹿だよな。玲香にあれだけ戦うなって言ったのにさ、自分が戦ってんるんだよ」


「それも湊月なりの優しさなんでしょ?」


「そうなのかもしれないな」


 湊月はそう言ってニヤリと笑うと、トランシーバーに向けて言う。


『各員下山を始めろ。七星剣の全員が主軸となって敵陣を切り開け。琴鐘、お前は車の準備はできてるか?』


『バッチリだぜ!』


『よし、なら玲香が車を守りながら進め。道は事前に伝えた通りだ』


『『『了解!』』』


 そして、遂に月華団が山から下山し始めた。当然その事に勘づいたムスペルヘイムの軍は立ち塞がる。しかし、見たこともないアサシンブレイカーに動揺しそのまま切られていく。


「湊月、そろそろだよ」


「だな」


 湊月はシェイドの言葉を聞いて再びレバーを握る手に力を込めた。そして、前を見つめ集中し直す。


 その刹那、突如前から巨大な大剣が飛んできた。湊月はその大剣を見て慌てて避けるとその大剣が飛んできた場所を見つめる。


「フッ、それじゃあラウンド2だな」


「殺してやるよ。シャドウ!」


 そして、穴の中から青い色を輝かせ星屑のような煌めきを放つ機体が現れた。


「貴様、一体どんな技を使ったのかは知らんが、いつあんな穴を作った?」


「当ててみたらどうだ?」


「御託は良い。答えろ」


「……フッ、じゃあ馬鹿なあなたに教えてあげますよ。まず、ここをよく見てください。なにか違いません?」


 湊月はニヤリと笑って煽るようにそう言った。すると、フィラメルは周りを確認してなにかに気がつく。


「分かりましたか?そう、ここはさっきまでの場所とは違うんですよ。ずっと戦いに夢中になってるから分からなかったんでしょうけど、ここはかなり移動してるんですよ」


 湊月はそう言って笑った。そして続けて言う。


「馬鹿な女だ!策略にハマってないと思っていたようだが、既に俺の術中だったようだな!フハハハハハ!」


「黙れ!場所を移動していることが今のこととなんの関係がある!?」


「周りをよく見ろ!自分のことしか考えないから、周りにいた仲間が減っていることに気がついていない!そして、地面がボコボコになっていることもな!さっきから俺がライフルを撃っていたのは、お前を殺すためではなくお前の周りのイガルクを爆破させるためだったんだよ!俺は俺の仲間が既に手榴弾を投げ地面を緩くしておいた場所の下を影を使って空洞にした。お前はその空洞の上を踏んだからこうして穴に落ちたんだよ!」


 湊月はそう言ってイガルクの手首からワイヤーロープを放ち少し離れたところに引っ掛けた。そして、言った。


「俺の仲間にある作戦を思いついた奴がいてな、だがその作戦は俺達の火力では足りなかった。だがな、地表では無理だが地中では可能だったんだよ。その作戦がなにか分かるか?」


「っ!?まさか……!」


「あぁ、そのまさかだ。じゃあな、青い悪魔」


 湊月はそう言ってワイヤーロープを縮めた。すると、イガルクが引っ張られその場から離れる。そして、その数秒後にその場で土砂崩れが発生した。フィラメルはその土砂崩れに巻き込まれてしまいそのまま落ちて行ってしまった。


 湊月はそれを見ながら不敵な笑みを浮かべる。そして、そのまま玲香のいる場所へと向かっていった。


 しかし、その時それは起こる。


 なんと、湊月が移動している途中で何者かが湊月の機体に攻撃を仕掛けてきたのだ。そのせいで湊月は途中で殴り飛ばされてしまった。


「っ!?何者だ!?」


 湊月はそう言って直ぐに攻撃してきた機体を見る。すると、その機体はあの謎の機体だった。白がベースで、その中に赤橙色がまばらにある太陽のような機体。それが湊月に襲いかかってきたのだ。


「……またお前か……」


 湊月はそう呟いてライフルを構えた。そして、狙いを定めて撃つ。しかし、その機体はその弾丸を全て避け湊月の目の前まで来た。


「殺してやるよ。ムスペルヘイムのゴミが」


 湊月がそう言って殴りかかった時、その機体はその手を受け止めて言ってきた。


「シャドウ!これ以上罪を重ねるのはやめろ!」


 湊月はその言葉を聞いて少し怒りの感情が増した。

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