水色が好き

 その人は水色が好きだったから、いつも水色の服に帽子に靴に鞄、財布も傘も手帳も水色、部屋の壁紙も家具も水色、水色の自転車に乗り、水色の絵を描いていた。水色の湖に身を投げ水色の棺に入れられたが、死体は全身を水色に包んだ別人だったのではないかとも言われている。誰もその人の顔や背格好を思い出せないのだ。

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