▼【第四十話】 閑話、金曜日の女子会。【最終話】
「ねえ、茜、お願いだから、こんなことやめてよ!」
遥が泣きながら私にしがみつく。
私はそれを力任せに引きはがす。
「うるさい! あんたのせいで私は別れたんだから、これくらい良いでしょう!」
語気が強くなる。でも、それは仕方ない。
こいつのせいで、私は振られたんだから。
「私は関係ないでしょう?」
「あの野郎、新しいゲームで若い娘をひっかけやがって……」
恨みと呪いを込めた言葉が漏れ出す。
結局、私と田沼がやっていたゲーム、そのギルドは崩壊した。
リーダー的な存在だった田沼がログインしなくなった事がきっかけだ。あと正式にサービス終了も決まった。
それで、新しいゲームの移住先を探しているうちにこれだ。
いや、正確には遥と田沼がイチャイチャしだしたときには、もうあいつは移住先で若い子を口説いていたらしいけど。
はぁ、なんだよそれ……
「だからって、なんで誠一郎さんを試すようなことするの!」
それは何となく。
田沼にも、遥にも、いや、遥には少し恨みもある。
飲みが多くなったから、その隙に向こうもオフ会を開いて、よろしくやってたって話だし!
あぁー、腹立たしい!!
「遥も気になるでしょう? あの田沼が好みの顔に言い寄られてどうするか? 聞いたわよ、本来は田沼の顔の趣味は遥じゃないって!」
「たしかに、私はそうじゃないって正直に話してもらったけど、今は私の顔が、私だけがタイプって言ってくれてるもん!」
かー! なにのろけてやがる!
こっちはお前の相談に乗ってやってるうちに浮気されたんだぞ!
確かめるくらい良いだろう?
こっちは毎日やけ酒の毎日なんだぞ!
「なんだよ! そんなところでも私に当てつけしてくるのか!」
半泣きで言い返すが、遥は取り合ってはくれない。まあ、当たり前だけど。
「だからって、それを試す必要はないよね?」
「あんたら二人の面倒見ている間に、こっちは浮気されて破談したのよ? これくらいしたっていいじゃない!」
そうだ、これくらいやっても罰は…… 当たりそうだけども。
「それは茜が彼氏ほっておいてせいでしょう?」
それは…… まあ、そう。
少し放置しすぎたと自分では思ってる。
でも、これだけ長い間付き合っててあっさり浮気されて捨てられるとは思わないじゃん!!
「あんたが頻繁に飲みに誘うからでしょう!」
「そこまでは誘ってないでしょう?」
けど、実際にあんたに飲みに誘われた裏で浮気されてんのよ、こっちは!!
「もう遅い! 今頃、私の後輩の童貞キラーの相田悠美香ちゃんが田沼に忍び寄ってるんだから!」
あいつはすごいぞ。
本物の童貞キラーだぞ。男を手玉に取るビッチだぞ。しかも童貞好きなクソビッチだぞ。
「誠一郎さんはもう童貞じゃないもん!」
「あっ、やっぱりそうだったんだ?」
まあ、もう同棲始めるくらいだもんね。オモチャをプレゼントするくらいなら当たり前か。
しかし、遥と田沼のそういうシーン、想像したくないなぁ……
いや、二人とも知ってるだけに妙に生々しい。
「え? あ、うん…… 初めてはすぐ終わっちゃったけど……」
遥はそう言って照れだした。
「あー、だからオモチャを?」
なるほど。そういうことか。
童貞だった田沼とクソビッチの遥じゃ、そもそもの技量が違うのか。
「そ、そんなことは良いでしょう! だんだん上手くなってるもん!」
「そりゃ、クソビッチが指導してればね」
「クソビッチ言わないでよ!」
「本当のことでしょう?」
なんでクソビッチの遥が幸せになって、その相談に乗ってた私が捨てられてるんだ。くっそー!!
「そんなことより、やめさせてよ、その後輩をすぐに止めさせてよ!」
「もう遅いよ、もう飲み会は始まってるし、相田の奴も、田沼のこと気に入ってたし……」
さすが童貞キラーの相田ちゃん。田沼を見て舌なめずりできるあたりプロだ。
このメンヘラカップルを破滅させてしまえ!!
脳を壊してしまえ!!
ハハハハハハハハッ!!
「はぁ? そいつどこの部署よ!」
「第二営業部」
「ま、また第二なの! 何なの第二営業部!! 魔境か何かなの!」
それは確かに。第二営業部は潰した方が良いんやないかしら?
「あっ、ほら、連絡きたよ」
「ど、どどど、どうなったの! 誠一郎さんは無事?」
「えっと…… 酒に酔ったふりしてホテルに連れ込もうとしたら救急車を呼ばれたので逃げました、だってさ」
うわ、流石田沼だわ。
酔ったって言葉をそのまま受け取って救急車を呼んだのか。
「ほら、誠一郎さんはそんな女には引っかからないよ! これが試練を乗り切った愛の絆なの!」
「その試練、あんたがし始めたんでしょうが。それはそうと、ここに田沼さん呼ぶ?」
一応、田沼には謝っておこう。
遥には謝らないけど。
しかし、田沼も本物だな。
「呼ぼう!! 呼ぼう!! あ、その相田ってやつは呼ばないでよね」
「はいはい…… はぁ、私も新しい人見つけないとなぁ……」
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