7話 女装騎士、外堀を埋める
「ジャミル、その手を離してくれないか」
エリーシャがジャミルへの返事をどうするか考えていると、後ろからダリルが二人に声をかけてきた。
「なんだよ、ダリルか。俺は今エリーシャ嬢とお近づきになろうとしてるんだ。見てわかるだろ、邪魔するなよ」
そう言ってジャミルがエリーシャの手をより強く握ると、ダリルはジャミルの手を掴んで捻る。
「いてててて、何するんだよ!」
「離してくれと頼んだだろう」
ダリルは静かだが怒りを孕んだ瞳でジャミルを見つめている。
「お前に何の権利があってそんなこと言うんだよ!」
ジャミルが吠える。
「俺は彼女の弟に頼まれているんだよ。お姉さんに変な虫がつかないように見張っててくれって」
その言葉にエリーシャは思わずダリルを見るが、ダリルは気にも止めない。そしてそのダリルの言葉に、先ほどエリーシャに話しかけていた令嬢が思わず口を開く。
「だからダリル様とニシャ様は最近異常に仲が良かったのですね」
なるほど、とその場にいた他の令嬢も騎士達も納得した顔になる。
「エリーシャ嬢は年齢も年齢だからニシャはとても心配していたんだ。だから姉さんのことは任せる、と言われていて」
またその言葉に思わずエリーシャはダリルを見つめるが、ダリルはにっこりと頬笑む。
「それって、つまり殿方としてエリーシャ嬢のことを任されたってことですか」
令嬢達がきゃー!と賑わいの歓声をあげると、周りから確かにお似合いかもな、とか弟から直々に頼まれたんじゃ断れないだろとか勝手な発言が飛び交っている。
「な、な、な、」
エリーシャが顔を赤らめているとダリルがエリーシャの手を取って膝まずく。
「そういうことなのでエリーシャ、これからどうぞよろしくお願いします」
きゃー!!とまた令嬢達から喜びの歓声が上がり、騎士達からはなんだちゃっかりしてるなあいつ、と妬みの声が上がる。
「だ、ダリル様、ちょ、ちょっとこちらへ!」
エリーシャが慌ててダリルの手を取り歩き出すと、背後からまた令嬢達の黄色い歓声が聞こえてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます