男装令嬢と女装騎士は婚約破棄したい
鳥花風星@12月3日電子書籍配信開始
プロローグ:出会い
とある屋敷の中庭で、小さな男の子達が騒いでいた。
「おんなみたいな顔してるなお前!」
「おとこのくせに花を見て喜んでるなんて気持ち悪いぞ!」
男の子達の輪の真ん中では一人の男の子が泣いていた。
そこに突然。
「あんた達、何してるのよ!」
威勢よく女の子が現れた。
「げっ!」
「何、よってたかって弱いものいじめ?公爵家の令息としてあるまじき行為だわ!」
「うるせー!おんなは黙ってひっこんでろよ!」
男の子の一人が女の子を突き飛ばそうとする。しかし女の子はひらりとそれをかわし、男の子は地面に倒れ込んだ。
「ふん、暴力だなんてさらに卑劣だわ」
腕を組んで倒れている男の子を見下ろす女の子。その迫力は倒れた男の子も周りの男の子も圧倒する位だ。
「お、お前のことなんてお父様に言いつけてやるんだからな!」
「別にいいわよ!あんた達がやってたことだって私も言いつけてやるんだから!」
わあぁぁあ!と男の子達が一斉に逃げていくと、女の子はふんす!と鼻息を荒くして仁王立ちする。
「大丈夫だった?」
女の子が声をかけると、泣いていた男の子は驚きのあまり泣き止んでいた。
「あ、ありがとう…」
「お嬢様~!!!お嬢様どこですか~!!!」
遠くの方で声がする。
「やばい!私、侍女達の目を盗んでお茶会の部屋から逃げてきたんだったわ」
ふわりと広がるスカートの裾を両手で少し持ち上げて、女の子は走り去ろうとする。と、振り返って笑顔で言った。
「私がここに来たことは侍女達には内緒ね!」
その笑顔を見た瞬間、男の子の胸の中に沢山の美しい花が咲いた、ように感じた。
それから12年後。
「ニシャ!」
「ダリル!任務から帰ってきてたのか、久しぶりだな!」
黒髪に蒼い瞳の美しい顔立ちをした青年が声をかけると、長めの金髪を一つに束ねた中性的な顔立ちの青年は嬉しそうに返事をした。
「あぁ。元気そうだな」
「俺はこの通り相変わらずだよ!」
へへへ、とニシャが笑うとダリルも嬉しそうに笑った。
ここは騎士団の演習場。騎士達や騎士見習いが自分の腕を磨くために鍛練に明け暮れる場所だ。
「久しぶりに手合わせしないか」
ダリルが言うと、ニシャは嬉しそうに笑う。
「いいのか?!よし、やろうぜ!」
二人が剣を構えると、近くにいた騎士達が手を止めて二人を見る。
「あの二人が手合わせって久々だな」
「これは見ごたえあるぞ」
「いいなぁ、俺もあの二人と手合わせしてみてぇ」
「ばぁか、お前なんて一撃でやられちまうぞ」
キィィンンン!と剣がぶつかり合う音が鳴り響く。二人とも動きが洗練され、その姿は美しいとさえ思える程だ。
そんな二人を、緩くウェーブのかかった茶髪に無精髭を生やした壮年の男が顎に手を当ててニヤリとしながら眺めていた。
「やっぱりダリルの剣さばきは見事だなぁ」
ニシャが頭をかきながらぼやくと、ダリルは頬笑む。
「ニシャだって相変わらず鋭い剣だよ。気を抜くといつでも斬られてしまいそうだ」
手合わせが終わり、二人であーだこーだと話をしていると、先ほど二人を眺めてニヤリとしていた壮年の男が声をかける。
「おう、お前ら二人揃うのは久々だな」
「団長!」
騎士団の団長、デューダは団長ながら気さくで、団員の誰に対してもわけへだてなく声をかける。任務には厳しいがメリハリがあり団員達から慕われていた。
「お前らがいると士気も上がる。これからもよろしく頼むぞ」
ポン、と二人の肩を軽く叩いてニィッと笑うと、二人は嬉しそうに目を合わせて威勢よく返事をした。
「ハッ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます