ゴリラになった元悪役令嬢、元に戻ってもやっぱりゴリラのままですわ  〜もうやめてくれ!(by中の人)〜

わたちょ

国を憂うのは心優しきゴリラですわ。(優しくはない)

青柳正であり、クイーンリゼット・アイラッシュですわ

「こんのクソゲーがあああ!!」

 ドン!! ガラガラガッシャン!!  バン

 はぁっ、ふうっ、はぁっ、ふうっ、はあああああ、はぁ。


 はっ。どうも、皆様、こんにちは。

 取り乱してしまいましたわ。私、青柳正。青い春を謳歌する男子高校生ですわ。

 え? その言葉遣いは男子高校生のものじゃない? それはそうですわね。実は私ほんの少し前までは女性でしたの。あ、性転換手術だとか、心が女だったとかではありませんのよ。

 いえ、心は女ですけど。


 私はこの体の本当の持ち主ではないのです。

 この体の元の持ち主がどうなったのかは分かりませんが、奇病に掛かり意識朦朧としておりました時に気付いたらこの体の中にいましたの。

 入れ替わり、もしくは転生とでも言うやつでしょう。

 そう言えば花畑のようなものをうっすら見たような、見なかったような気がしますわ


 それ以来は青柳正として、男として生きておりますが、人と話す時は男言葉になれても、心の中までは生まれついての話し方が癖になってかわれませんの。

 ごつい男の声がこんな可愛らしい喋り方をして違和感があるかもしれませんが許してくださいませ。


 それ以外は男の生活に慣れておりますわ。

 立派な筋肉までも身につけ、男としての人生を謳歌しております。おかげでほら。思わず投げてしまったゲーム機が天上に穴を開け、床の上でゴミとなってしまっております。

 木っ端微塵ですわね。修理にもだせませんわ。


 さて、これをどうしましょうか。

 もしこんなことがお母様にバレたら……喜ばれてしまいますわ。また夜ご飯が赤飯になってしまいます。

 困まりましたわね。


 怒られるんじゃないのか? 普通ならそうなのでしょうが、この家のお母様やお父様では喜ばれてしまうのです。

 というのも両親は筋肉信者なんです。

 筋肉こそが最高。筋肉が至上。筋肉ブラボーと強い筋肉での行為を見ると何でもかんでも手をあげて喜ぶ始末です。


 まあ、私のせいなのですけどね?


 私が筋肉でこの体の主をいじめていたいじめっ子達を殴り飛ばしたのがすべての始まりです。


 そう。この体に入れ替わった当初、この体の主はいじめられておりましたの。いじめられた事なんてなかったので初めはとてもびっくりしましたわ。新鮮で楽しかったです。でも一日もしないうちに腹が立ちました。

 なので私は全員ひれ伏させてやろうと決めたのです。

 だからまず手始めに体を鍛えましたわ。


 半年である程度体をムキムキにし、この体になってからも使えた魔法の力も借りていじめっ子達を全員のしました。

 一発天高く飛ばす勢いで殴ってやれば、無駄に威張っていたのが嘘のように全員が頭を垂れましたわ。

 その全員を私の舎弟にしてあげ、一件落着となったのですが、その話が回り回って両親にまで行ってしまい、息子のことをたいそう心配していた両親は一度失神しました。


三日三晩寝込んで、起きたときには筋肉信者でした。


一応私の名誉のために説明しておきますと私がぶん殴って解決することに決めたのはわけがありますのよ。何も脳みそが足りず馬鹿だったわけじゃございませんよ。

 でも馬鹿には賢さなんて無意味じゃないですか? 


 というのもこの体の元の持ち主、つまりは本物の青柳正は体はひ弱でしたが、頭はかなり賢かったようなのです。部屋の本棚には難しい本がずらりと並び、分厚いフォルダーの中に教科ごとに過去のテストが全て収められていましたが、どれも満点だったのです。

 それを見て学んだのです。

 この世界、と言いますより学校という閉鎖空間、そして物事を深く考えない猿どもには知性などは無駄であるということを。


 だから殴って解決するしかないということを。


 思った通り解決して悟りましたわ。あれこれ策略するよりも殴ったほうが早いって筋肉は鍛えるべきだって。

 だから今でも鍛え続けておりまして、学校でのあだ名は最強のゴリラでしてよ。

 素晴らしいでしょう


 まあ、そんな事は置いといて大事なのはゲーム機を壊した事を讃えられないように証拠隠滅することでしてよ。

 お赤飯は飽きましたの。


 それから壊れたゲームを何方かに借りてクソゲーの続きをしなくてはなりませんわ。

 一応クリアしましたけど人気作とがで続編がありますから、それをやらないとなのです。クソゲー何んてしたくありませんけど。でもどうやらこのゲームは私の世界を舞台にしているようですので見てやらないと気がすみませんの。始めたのもそれが理由ですからね。


 とんだクソゲーでしたけど。

 クソゲーすぎて次も壊さない自信はありませんけど。


 どんなゲームかって。

 簡単に言うと恋愛ゲームです。選択肢の中から次のセリフや行動を選び、攻略キャラの好感度をあげていくやつですわ。特別難しくもないゲームなのですけど、おすすめはしません。何故ならクソゲーだからです。

 どの辺がクソゲーなのかと言いますと、その内容です。まず第一で私が悪役なのですわ。


 よりにもよってこの私が悪役なのです。

 悪役令嬢だとかそう言われる存在なのです。


 国一番の歴史があり、実力もあるアイラッシュ家に産まれ、王子との婚約までしている私が悪役。

 そんなことあります? 

 しかも王子が攻略対象。


 それはまあゲームの中の私は酷いことしていましたよ。恐らくこの世界に来なければ同じ事していました。今は筋肉で解決しますけど。

 でもですよ。

 そもそも婚約者のいる男を攻略しようとするのがおかしくないですか?


 クズ男になるのを回避するためか、親同士が決めたもの。愛してはいないと言う設定でしたけど。確かに愛されてはいませんでしたわ。でも将来を誓った以上、愛する努力をするのは義務ではなくて。それを怠った以上クズなのは変わりませんこと? 皆様もそう思いますわよね。


 百歩譲って努力して出来なかったとしてもそのことを先に私に伝えておくのが誠意というもの。そして婚約を破棄できないのだから、ひっそりと想いを寄せあうべきでしょう。

 それを所構わずイチャイチャされてみなさい。

 誰だって闇落ちします。貴様ら発情期の猿かって去勢したくなります。今ならもぎりとってやりますよ。何処をとは言いませんけど。


 ゲームの中の私、可哀想。


 それこそ最初は婚約者のいる異性にきやすく声をかけるのは考えた方がいいって忠告だったのに……。それをバカ王子が気にしなくていい、貴方と話したいんだとか言うから。

 本当バカ!!


 王と王妃が仲が悪いだなんて知られたら、そこが弱みと思われ、男や女が政敵から贈られたりすると言うのにそんなことちっとも気にしないのだから。

 民だって自分とこの王が家族のことを疎んでる何て知りたくないつうの。本当最低のバカ王子ですの。

 しかも最後は婚約破棄。

 王子ルートだとヒロインが王子と婚約。つまりは未来の王妃になって……、


 お前ら頭空っぽかって叫びたいぐらいです。

 私が何年、王妃になるための訓練を受けて来たと思ってるのです。普通の貴族の倍以上の教養が王妃にはは必要なのですよ。貴族としてのマナーもないどころか、身につける気もないヒロインなんかが王妃になれば私の国は他国や身内になめられます。しかもヒロインには後立てなどないも同然ですからね。

 一応ちょっとした身分はあったりしますけども、玉の輿物語のようなゲーム。王子につりあうものではないです。

 王子だって王家ってだけで安泰なわけじゃない。

 力だって落ちているから色々な所とパイプを持つような家や、金のある家との繋がりを持たないといけないというのにヒロインとなんて王や王妃、泡ふいて倒れる所か天上に頭から突っ込んでしまうほど驚いてしまうのではありませんか。


 私のゲーム機みたいに!


 本当信じられません。

 その他にも信じられない所はたくさんです。

 ゲームは恋愛を楽しむためだけ作られたものだから仕方ありませんけど、もしこの通りに進んだら頭常春、目の玉花畑やろう共のせいで国は滅ぶに違いません。


 だからこそだからこそ、私はクソゲーをするのです。

 この世界に来て良かったって実感するために!

 逃げ出せてよかった! 神様ありがとう! 筋肉ばんざーーい、ですわ。













 あら? どういうことでしょう、とても覚えのある天上。

 でも穴はないですわ。



 そして私の鍛え上げた大胸筋が大きなメロンになってますわ。

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