第54話 ハルカの怒り

 私達はホールまで移動して、アロナと獣人の女の子達が転移魔法陣を使って、無事にファミリアへ戻るのを確認したあとは、ロベルトの元へ向かったアニエラとエリカに〘以心伝心〙で向かう事を伝える。


『アニー、こっちは終わったよ。そっちはどんな感じなの?』

『あっ、ハルカ、急いでっ……エリカが犯されちゃう……』


 予想外の内容に耳を疑ったけど、アニエラが今にも泣きそうな声で、私に助けを求めるなんて普通ではありえない。私はトラパーネに声をかけて先行すると伝える。


「パーネ、向こうは深刻な状況みたいなの。私は先に行くから、残りを始末しながら合流してくれる?」

「かしこまりました。おきをつけて」

「うん」


『シュッ!』


 私はアニエラの居る場所へ転移する。


 そこにはエリカの鞭で拘束されたアニエラと、半裸の状態のエリカに馬乗りになってる男がいた。男は嫌がるエリカの下着に手を入れて、卑猥な音が鳴っていた。


「あっ、お前、どうやってここへ来た?」


 私が突然現れても男は焦らず、手の動きを止めなかった。エリカは必死に身体を動かしながら私に声をかける。


「ハッ、ハルカッ……コイツは、ヤバいっ!」

「お前、私が逝かせてあげるから、その汚い手をエリカから離せ!」


 私の言葉を聞いた男は、エリカから手を離してから指の匂いを嗅いでから指を口にいれて、『ニヤリ』と笑みを浮かべた。


「お前が俺をイカせるんじゃなくて、俺がお前をイカせるんだよ。そこを間違えんなよ?」


 男はゆっくりと立ち上がると、エリカの鳩尾へ足を落として気絶させてから、鎖鎌を手にしてから鎖を『ヒュンヒュン』と回した。


「ハルカ、そいつS級ハンターらしい」

「直ぐに終わらせて解放するから待っててね」


 アニエラから男はS級ハンターだと聞いて、それでも直ぐに終わらせると伝える。


 私が両手に扇を出すと、両手を振って斬撃を飛ばして先制攻撃をしかけた。


『ビュン、ビュン!』

『ガッ、ガツン』


 ほぼ同時に放った斬撃を、1つの鎌で簡単に弾くと足に力を込めて一気に間合いを詰めてきた。


(速い)


 鎌を剣のように扱って、斬り掛かってくると私はバックステップで躱した。


『パサッ』


 躱したと思っていたけど、私の服を掠めたようで服がはだけて下着が露わになった。男はゲスな笑みを浮かべて私の胸元を見ていた。


「なんだよ、えらくソソる物を着けてたんだな。ジワジワと真っ裸にするのも悪くないな」

「確かに強いね。様子見は終わりで全力で行くから少しは楽しませてね?〚射出ショット〛!」


 私は翼刃ウイングブレードを展開して大量の刃を放つと、男は目を見開いて鎌で弾いていく。流石はS級だけあって信じられない反応速度で弾き続ける。


「あはっ、どこまで続くのかな?ちなみに私の魔力が尽きるまで続くからね」

「なっ、ぐっ、マジか?」


『シュパッ』

「ぐっ……」


 流石のS級ハンターでも、終わる事のない刃の攻撃に、徐々に傷が増えて動きが遅くなり体中が傷だらけになっていく。


「くそっ、待って、待ってくれ!雇われただけなんだ。この仕事を辞めるから助けてくれ!」

「むーりー。私の大事なエリカを汚した奴が生きてるなんてありえないよ」


 そう言い放ってから、刃の数をさらに増やして亡骸が完全に塵になるまで斬り刻んだのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る