第28話 傲慢の王

 アロナの案内で、獣人の子供を6人解放する事ができた。他にもこのような場所があるみたいだけど、アロナは知らないと言うので、とりあえず解放した子供達も連れて、ファミリアへ戻る事にした。


「今からファミリアへ戻るから、みんな私に触れてくれるかな?」

「流石にこの人数は多くないですか?」


 合計12人で転移するので、トラパーネが私への負担を気にして声をかけてきた。魔力の殆どを使う事になるけど、その後はゆっくりと休憩するから問題はないと返事をする。


「大丈夫だよ。80%程の魔力を消費する事になるけど、一晩休めば回復するからさ」

「判りました」


 全員が私に触れた事を確認してから、私はファミリアの屋敷前をイメージして転移魔法を発動させる。


「行くよ!〚転移〛!」

『フッ!』


『パッ!』

「ふぅ~、着いたね……」


 大量の魔力を消費したので、一瞬だけど『ふらっ』と身体が揺れると、トラパーネがしっかりと私を受け止めてくれた。


「やはり、負担が大きかったのですね。直ぐにお部屋へお連れします」

「うん、ありがとう」

「エリカはアロナ達を部屋へ案内してね」

「お、おぅ、ハルカを頼むね」


 私はトラパーネに部屋へ連れて行かれてからは、翌朝まで泥のように眠った事で、魔力は完全回復して元気な顔をみんなに見せた。


「おはよう!パーネ、昨日はありがとうね」

「いいえ、顔色もよろしいようで何よりです」


 トラパーネは当然の事のように振る舞って返事をすると、アニエラは私に抱き着いて甘えるように声をかけてきた。


「流石のハルカも魔力が枯渇すると寝込むんだね。あまり無理しちゃダメだよ?」

「うん、心配かけちゃったね」


 抱き着くアニエラの頭を撫でながら、食堂を見渡すとアロナが居たので声をかける。


「どう、少しはゆっくりと出来たのかな?」

「はい、素晴らしい部屋を貸して頂いてありがとうございました」

「子供達はまだ寝てるのかな?」

「いいえ、部屋へ食事を運んで頂いたので、食事に夢中になってると思います」


 私は、スラム街で囚われている獣人もそうだけど、獣人達が暮らす場所の事も気になっていた。ヒューマンが襲ってきて子供達を攫われたのなら、そこに住む獣人の全てを保護した方が良いと思ったから、アロナにその事を聞いてみた。


「アロナ達が暮らしていた場所はグローニャから近いの?安心して暮らせないなら全員をファミリアへ迎えるよ?」


 私の言葉を聞いたアロナは悲痛な表情になる。そして声を詰まらせながらも、何とか私の質問に答えてくれたのだった。


「スラム街の二大派閥である【傲慢の王】による襲撃で、私達の住処は壊滅して主人も殺されてしまいました……」

「ごめん……辛い事を思い出させたね」

「いいえ、今こうして生き長らえてるのはハルカ様のおかげです。保護して頂き感謝してます」

「アネロ、傲慢の王の事で知ってる事を教えて、他の従業員エンプレアードも知ってる事があれば教えてね」


 私はスラム街の二大派閥である傲慢の王を徹底的に潰して、囚われている獣人達の解放と、亡くなった者達の恨みを晴らす事を心に誓ったのだった。

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