第56話 ファミリアを守る義務
全員でこれからの事を決めてから1カ月が経過した。
私はヤリテール商会へ転移して、土魔法を使って新たな隠し部屋を作った。そこに転移魔法陣を設置して、決まった日時にファミリアへ来てもらい、取引をする事が決まった。その時に
「このアイテムは金貨10,000枚分の価値があります。手持ちの関係で1,000枚しか渡せなくて申し訳ありません」
私にとっては簡単に作れるアイテムだけど、世間の常識では相当な価値があるんだね。大量に作って販売するのは控えた方が良さそうね。
その後も、ファミリアをエルピス山脈の越えた場所に移設する事と、レアルコンプレト王国の港湾都市にも取引先を探す事を伝えた。ヤリテールは話を聞くなり目を輝かせて、レアルコンプレト王国の詳しい地図を用意して、その取引に加わりたいと言ってきた。
「レアルコンプレト王国には入手困難な物がたくさんあるので、私にも取引の機会を与えて頂きたいのですが?」
「トーレス町で販売すると怪しまれるよ?」
「町では売りません。珍しい物を求める特別な顧客との取引をするだけです」
「ミスリルの用意してくれた人とか?」
「そうです。後はフェルナンド伯爵ですね」
欲しい物を聞いて、ファミリア側で用意するのは良いけど、ヤリテールを信用してるとはいえ転移魔法陣を自由に使わせる訳にはいかない。眷属なら私を裏切る事は出来ないけど、信頼関係だけというのはリスクが高い。人は自己利益の為に裏切る事を躊躇わない種族だからね。
「欲しい物を教えてくれれば、こちらで用意するよ。転移魔法陣はファミリアとの取引以外では自由に使わせる訳にはいかないからね」
「そうですか……それは残念です」
「あなたを信頼してるけど、私はファミリアを守る義務があるの。人は自分の利益を優先するでしょ?だからこの世界の頂点に君臨してるの。だからラインを決めて、それ以上は深く関わる事は絶対にしないと決めてるんだよ」
私の言葉を聞いて納得したようで、残念な表情から晴れやかな表情へ変わった。
「大事な物を守りたい気持ちは判りました。欲しい物があれば伝えますので、その時はよろしくお願いします。では今日はこれで失礼します」
「うん、次は来月の同じ日時にファミリアで待ってるね」
私はそう言ってからファミリアへ転移して戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます