片恋の涙も憂さも描き抜く 掘り起こす痛みに苛立つ吾よ

物語を描くことは、己の一部を曝け出すこと。

いつかの失恋を題材に選んだなら、長い記憶と向かい合い、剥ぎ取った瘡蓋の下の柔らかい皮膚に滲む血を、再び処置しなくてはならない。まずは水洗いか、拭き取るのか。ガーゼを探すのか、クズが残るのを承知でその辺に置いてあるティッシュを使うのか。

しかし、すでに過去の話だ。思い出したとて、痛みに沈み込む若さはなく、ただ苛立ちだけが残る。

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