孤児院からの生還

BB ミ・ラ・イ

序章

 十歳になったサクラは、少女しかいない別室に連れて行かれた。


 その部屋にいる少女らは、薄いワンピースと純白のショーツだけを身に付けている。着ている洋服は、全て孤児院が用意したもの。


 そして、サクラを含めた八人の少女らは、カーテンが閉め切られ蛍光灯の明かりが点いた、薄汚れ粛然とした部屋で、朝食を食べるため床に座っていた。


 職員は少女らに朝食を配る。


「今日のお前たちの朝飯だぞー。ほら、さっさと食え」


 この孤児院での朝食は、決まってパンが一人一つだけ出された。

 それも、パンが入っている容器は、普通の皿ではない。

 ペット用の皿だった。


「いただきます」


 少女らは、静まり返った部屋で、出されたパンを黙々と食べる。向かい合わせに四人ずつ座っているが、正面の子や隣の子と話すことはなかった。


 朝食を食べていると、サクラは尿意を催した。

 静かに立ち上がりトイレに向かう。


 この孤児院で少女らは、ひどい扱いをされていた。

 それにより、トイレはおまるが用意されていた。


 蓋を取り、サクラは静かに純白ショーツを脱ぎ始める。

 おまるにまたがり、サクラは恥ずかしそうにおしっこを出す。


 部屋の中は静まり返っていたことで、朝食を食べていた近くで、サクラのおしっこを出す音が響き渡っていた。


 その間、他の少女らは聞こえていないフリをしながら、黙々とパンを食べている。


 サクラはトイレを済ませて、ゆっくりと立ち、純白ショーツを履き、静かにおまるの蓋を閉じた。


 トイレを済ませたサクラは、自分の席に戻り、パンを食べる。


「ごちそうさまでした」


 孤児院では、授業がない。遊ぶ物もない。特にやることがない。

 朝食を食べ終えた後は、いつも決まって寝ていた。


 寝床は床の上にマットを敷いて、その上で寝ていた。


 少女らが寝ていると、施設の職員が入ってきた。


「また寝てんのか? たくしょうがねぇ~な」


 職員は、呆れた表情を見せた。


「起きろ~。起きるんだ。さっさと起きろ〜」


 少女らは、まだ眠くて起きようとしない。いや、起きたら何をされるか分からず、起きたくなかった。


 その態度に、イラッとした職員は大声で叫んだ。


「起きろーーー!!!」


 その声に恐怖を覚えた少女らは、一斉に起き上がる。


 職員は不敵な笑顔を見せ、「良い物を買ってきたぞー」と言い、手に持っていた紙状の箱を床に放った。


 床に当たった衝撃で、箱に入っていたシュークリームが転がる。


 パンを一つしか食べてない少女らは、床に転がったシュークリームを前に、食べたそうに唾を飲んだ。


 職員は、ニヤリと笑いながら、食べるように勧める。


「腹が減っているんだろー。フッ……食えよ!」


 少女らは顔を見合わせるが、食べようとしない。


「まったく……可愛げのない子たちだ!」


 素直に食べようとしない少女らに、冷たく当たり、その場を離れた。


 職員が離れたあと、少女らは再び顔を見合わせた。


 そんな中でサクラは一人、空腹に耐えかねていた。

 床に転がったシュークリームを拾うと、美味しそうに頬張り食べた。


 それを見た他の少女らも、「わたしも……わたしも……」と言い、シュークリームに群がり食べ始めたのだった。

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