第037話 お披露目配信(亜理紗視点)

◆亜理紗視点


 次の日。


「皆さん、こんにちは。リサチャンネルへようこそ!!」


 叔父さんの家で私は配信を開始した。


"やっと来た!!"

"あと一分遅かったら通報してたよ"

"あの二人の幼女は何者なんだ?"

"何が発表されるんだ?"


 早朝に衝撃映像で終わっていたせいで皆待ちきれなかったみたい。


「準備が整ったので、始めたいと思います。おじさん、自己紹介よろしくね」

「わ、私は関内――」


 私が視界をしてソファに座るおじさんに自己紹介を促すと、おじさんはガチガチに緊張して、まるで面接にでもきているような挨拶を始めようとする。


「堅いし、本名じゃないでしょ?」

「あ、ああ、すまん」


 それを止めると、おじさんが申し訳なさげにしゅんとした。


"まさかのハピおじ、きたぁあああっ!!"

"真面目か!!"

"本名言おうとするところ可愛い"

"慣れてないところが良い"


 今までおじさんがカメラを意識して話すことはなかったので、コメントは最初から大盛り上がりだ。


「えぇ~、私はフォルト。いつも姪が世話になっています。リサはこういう娘なので、皆さんに迷惑をかけていないか心配です」

「そうじゃないでしょ!?」


 改めて話し始めたら、なんだか親みたいなことを言い出した。ちょっと恥ずかしくなって慌てて止めさせる。


"完全に親目線で草"

"配信者に絶対いないタイプ"

"それよりも事案疑惑の説明はよ"

"そうそう、私も気になる"


「ああ。朝一緒に寝ていた子のことですが、あの子たちは私の召喚獣のマヒルとヨルです。マヒル、ヨル、挨拶して」


 コメント欄で本題について言及されてようやく本題を切り出すおじさん。おじさんにはリスナーさんたちのコメントのことを説明して見えるようにしている。


 何を言うか気が気じゃないよ、まったく……。


 マヒルとヨルがカメラの外から歩いてきておじさんの両隣に立つ。


"ぶほっ!? 改めて見ると美幼女過ぎてヤバい"

"尻尾とケモ耳生えてる!!"

"モフモフで可愛いとか反則過ぎる!!"

"もう見てるだけで心が癒されるぅ!!"

"なんだか心が浄化されるようだ"


 二人が現れた瞬間、コメント欄の流れが目で追えないくらいに加速しはじめた。


「マヒルでしゅ。おねがしましゅ!!」

「ヨル、よろしゅく」


 元気いっぱいで礼儀正しいマヒルと、口数が少なくクールなヨルがぺこりとお辞儀してカメラに向かって挨拶をした。


 くぅ~、ちゃんと挨拶できて偉すぎる。思わず頬が緩んでしまう。


 二人は元々私たちの言葉を理解しているおかげで、昨日の夜からここまで覚えさせることができた。なんとか間に合った。


"言葉を話せる……だと!?"

"ファンタジー少女と会話したい!!"

"舌ったらず可愛い!!"

"ぐわぁ!! 心を撃ち抜かれた"

"キュン死にしちゃう!!"


 マヒルとヨルの可愛らしい喋り方と日本語を話せるという事実にリスナーたちは喜びを爆発させる。


 この時、私の配信のリアルタイム閲覧者は一千万人を突破していた。


 ふっふっふー。これは凄い収益が期待できそう。


"でも、この子たちが本当にあの九尾狐なのか"

"幼女をコスプレさせただけだろ"

"ロリコン!!"

"この犯罪者!!"


 一方で、彼女が召喚獣が変身した姿だと受け入れようとしない人たちも現れる。


「あなたたちのおっしゃる通りですね。マヒル、ヨル、元の姿に戻ってくれ」

「「はーい」」


 おじさんが二人に指示を出すと、二人は手を挙げて返事をして、宙がえりをしたら、煙と共に元の狐の姿に戻った。服はスカーフとして首に付いている。


"うひょぉおおっ。本物だ!!"

"やっぱ、ハピおじは俺たちの予想を超えてくる"

"俺もサモナーになりてぇ!!"

"合成だ、合成なんだ、合成であってくれぇえ!!"

"モフモフもかわぇえええ!!"


 それだけで多くのアンチ閲覧者たちは沈黙した。生放送で見せられてはどうしようもない。


「このように二人は私の召喚獣に間違いありません。お分かりいただけでしょうか」


"ハピおじ、おれは信じてたぞ!!"

"俺もだ!!"

"俺も俺も"


 おじさんが皆に語りかけると、彼らは肯定的な意見をくれる。


「うっ……」


 その時突然と、おじさんが目頭を押さえて俯いた。


 え、もしかして泣いてるの!?


 私は目を丸くする。


"な、なんだ、何で泣いてるんだ?"

"俺たちが何か言ってしまったのか?"

"ハピおじだなんて言ったせいで悲しくなったのか!?"

"そうかもな。ハピおじなんて失礼過ぎるもんな!!"


 その光景にリスナーたちも困惑する。


「す、すみません。皆が親し気にあだ名で呼んでくれて、私のことを信じてくれたのが嬉しくて感動してしまいました」


 皆の反応を見ておじさんは涙を拭って笑顔でポツリと呟く。


"もらい泣きしそう!!"

"ハピおじ、ピュアすぎる"

"ファンになりました!!"

"ハピおじの過去に一体何があったんだ……"

"俺たちのハピおじを悲しませる奴を許すな!!" 


 うんうん、そうそう、おじさんは素直でピュアピュアなの。


「はい、ということで昨日の事案騒動の真相は、おじさんの召喚獣が人の姿に変化した、ということでした。そして、おじさんの仲間はもう一人います」


 私がそう言うと、ワラビモチがおじさんの膝の上に乗る。


「はい、この子がワラビモチです。シャイニングミーというモンスターですね」

「ピッ!!」


 おじさんの言葉に合わせて体の形状を変化させて手を上げるように挨拶をするワラビモチ。


"くわぁ、こっちのモチモチもかわゆい!!"

"テイマーになりてぇ!!"

"俺はこっちのが好きー"

"モフモフ幼女とプニプニとか羨ましすぎて血を吐きそう"


 ワラビモチもマヒルとヨルに負けず劣らずの人気を得られたみたい。


「ということで、私の頭の上に居るカシワモチも忘れないでね。今後もこの子たちとおじさんのことをどんどん配信していくから楽しみにしてて!!」

「私のことは見てもしょうがないと思いますが、この子たちとリサはとても可愛くていい子たちです。時にはご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんが、どうぞ応援してやってください」

「キュンっ!!」

「きゅうっ!!」

「ピッ!!」

「ピュッ!!」


 私の言葉を引き継いで、叔父さんが配信を締めるように親目線でリスナーたちに向かって深く頭を下げた。


"ハピおじ、完全にお父さん!!"

"あんな可愛い子たちの親なら俺もなりたい"

"子供欲しくなっちゃったなぁ"

"まずは彼女作れよ"

"そんなに簡単に出来たら苦労しないよ"


「そ、それじゃあ、ばいばーい!!」


 私はおじさんに可愛いって言われて動揺しながらも挨拶をして配信を終えた。


 最終的に三千万人以上の人たちが閲覧していた。スパチャも上々。チャンネル登録者も十倍くらいまで増えた。


 おじさんのお披露目配信は大成功だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る