特務機動隊小隊長 木村正隆 (5)

「おい、所轄が何の権限で特務機動隊の任務を邪魔してるッ‼」

 被疑者マルヒを連れて車まで戻ると……今度は、運転手が巡査の取調べを受けていた。

 階級章と近くに停車してるパトカーから見て、交通課。

「すいませんねえッ‼ 大規模な通信障害が発生してるみたいで……そちらが特務機動隊の皆さんか確認が取れないんですよッ‼」

 交通課のチンピラ巡査は……苛立ってるのが明らかな大声で怒鳴り返す。

「ふざけんなッ‼」

「小隊長ッ‼」

 部下達が俺を止めたのは……2人組の巡査を殴り倒した……おい……何をやってる、俺は?

 俗に言う「グーでなぐった」の方が、まだ洒落になる。

 思わず、警棒を交通課の巡査2匹の脳天にブチ込んでしまった。まるで、ケダモノでも撲殺するかのように……。

「どうかしてますよ……今日の小隊長は……」

「うるせえッ‼」

 何とか、怒鳴るだけで部下を殴るのを阻止出来た。自分の行動を阻止すると言うのも変だが……俺の中では「阻止」だった。

 不安だけが、どんどん膨らむ。

 しかも……誰かを殴るか怒鳴るかしない限り、その不安を制御出来ない。

「俺達を偽物扱いしやがったんだ。そいつらも本物か確認しろ」

「は……はい……」

 部下の松井が、通信端末のカメラで、交通課の巡査……もしくは、それに化けてる何者か……の認識章バッジのIDコードを読み込み……。

「馬鹿な……何だ、こりゃ?」

「どうした……?」

「通信エラーです」

「どうなってる?」

「た……たしか……シン日本首都の全公務員のIDは……あ、待って下さい」

 松井は、通信端末を何か操作し……。

 1分足らずか……5分以上か……。

 松井の顔は……どんどん……泣きそうなモノに変っていき……。

「シン都庁の集中データ管理センターと通信を行なっている……と思われる業務アプリを片っ端から起動してみましたが……全て通信エラーです」

「はぁ?」

「やられたのは……ウチの中隊の詰所だけじゃ有りません……。警察を含めたシン日本首都庁の行政機能全てが麻痺している可能性が有ります」

「ば……馬鹿な……何を言って……」

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