35.処遇
ブルーノ様はコホンと咳払いをすると、それぞれの顛末について説明してくださいました。
「まず前提として、今回の騒動は目撃者である学園の生徒達に箝口令が敷かれ、真相は秘匿されます。
あくまで学園内で学生が起こした事件として処理されるため、あまり凄惨な話にはならないだろう。
……関係者への厳罰を期待していたならすまないね。」
「いえ、打ち首だの縛り首だのはこちらも夢見が悪いので結構ですわ。」
紛れもなく本心から申し上げたのですが、彼はなお申し訳無さそうな表情をなさいます。
「表向きは、ジェフリー第一王子殿下の関与の下、キャスリン・アクミナータ侯爵令嬢の名誉を一方的かつ不当に毀損する行為があった。
これは重大な過失であり、王家はその事実を認めて侯爵家への賠償とともに婚約を解消する、と。
そういう筋書きになるようです。」
「なるほど。フラン様の企みに関する事柄は伏せることになさったのですね。」
「ええ。実際はあれだけの生徒達に一部始終を見られているのですから、真相はほとんどの貴族たちの知るところではありますが。
ただ公にはそれ以上の事実は明かされず、関わった者の処遇だけが公表される形となりました。
まず、コンチュ・エレファンス侯爵令嬢は学園を去り、当面の間領地にて謹慎することになります。
彼女は利用されただけともいえますが、王妃の座を欲して王子殿下を誑かしたのは事実。退学は免れません。
自らの企みが広く知られてしまった以上、謹慎が解けたとしても社交界には出てこられないでしょうね。
そしてフラン・ショーン。彼は本来ならば処刑ものの大罪人ですが、学生レベルのトラブルとして処理するため、王立学園からの除籍、領地にて半永久的に謹慎、という落としどころとなりました。
軽すぎる罰とお思いでしょうが……両人には極秘裏に監視も付けられますから、これに懲りず次に何か企んだときには酌量の余地なく厳罰に処されることでしょう。
今は、どうかそれでご容赦ください。」
(……?まるでいずれあの2人が何かしでかすと決まっているかのような……?
……いえ。きっと思い過ごし、ですわよね。
それに、わたくしがこれ以上詮索したところで仕方がありませんもの。)
言い知れぬ違和感を飲み込んで、わたくしはただ頷きました。
「殿下の側近候補たちも、その暴挙を手助けないし容認してしまった咎で全員その役目を解かれ、刷新されます。
加担した学園の警護騎士やその他の協力者連中もまあ、似たような処分です。
こんな形で転落するのですから、今後どこへ行こうと針の筵でしょうね。
……とまあ、このあたりを表向きの処分として。
今回の件を盾に、これからあれこれと理由をつけては王宮内の人事、古参貴族の権限やら特権やらに、大がかりに手が入る予定です。
古参連中は不満に思うでしょうが、大した文句は言えないでしょう。
この騒動に裏で関わっていた貴族たちについて、王宮は即刻断罪も可能なほどの情報を握っていますから。
それを敢えて深く追及せず当事者への罰のみで済ませてやったのです。
下手に反発して反逆罪を吹っ掛けられるような間抜けは、さすがにいると思えません。
そして先程も申し上げたとおり、貴女とアクミナータ家には、謝礼も兼ねてそれなりの賠償金が支払われるでしょうね。」
「賠償……。」
「ええ、そうです。王家の名で出すものである以上、さすがに『賠償』とは銘打たないかもしれませんが。
とにかくジェフリー殿下と貴女の婚約は、貴女に非常に有利な条件をもって解消されるだろう。
王家は非を認めたけれど、もはや婚約の継続はアクミナータ家、つまり貴女のご家族の方が納得しないのです。
彼らに根付いた不信感を無視して強引に婚姻を進めれば、逆に王家との確執を生み、本末転倒となってしまう。
よって本音はどうであれ、陛下も解消を受け入れざるを得なかったということだね。」
「そう……なのですね。」
あまりにもあっけない結末に、拍子抜けしてしまいます。
安堵の気持ちはありますが、今まで婚約者としての役目を果たそうと心血を注いできただけに、複雑な気持ちでございました。
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