第20話 神女様はご存命でした
家というよりはお屋敷なんだけどね。中に入ると使用人の人たちが並んで一斉に頭を下げてきたよ。うん、僕は慣れてないからアタフタしたけど、メイビーもマリアさんも落ち着いている。流石だね。
その先に黒目黒髪の年齢不詳の女性がにこやかに立って待っていたよ。
「お帰り、マリーン。やっと連れて来てくれたのね。ハルちゃんはじめまして、私がマリーンの母で、
そう言ってカスミさんがマリーン【オネエ】さんを連れていったよ。やっぱり神女様は生きてたんだね。衝撃の事実に僕を含めてメイビーもマリアさんも暫く呆然としていたんだ。そして、無意識の内に僕たちは侍女さん達によって部屋に案内されていたんだ。
「ハル様、この
部屋に着いたらサツキさんにそう挨拶をされたけど、専属って…… 僕は自分の事は自分で出来るから専属でいて貰わなくても大丈夫なんだけどな。後でカスミさんとマリーン【オネエ】さんにそう言ってみよう。それよりも、
「ちょっと聞いても良いですか? このお屋敷ってどなたのお屋敷なんでしょうか?」
僕は部屋に案内してくれた後に、部屋に残ってお茶の準備をしてくれてるサツキさんに聞いてみたんだ。
「ハル様、この
うん、大物さんだね。疑問が多いけど、カンザキ公爵家っていう事は、カスミさんが公爵さんなの? それともその配偶者のデイビッドさんが公爵さんなのかな? その辺りも聞いてみようっと。
僕はサツキさんの淹れてくれたお茶を啜りながらそう思考を巡らせたよ。
あ、今は固有スキルで話を出来ないようにしてあるよ。答え合わせは話を聞いてからの方がいいからね。そう言えばマリーン【オネエ】さんに師匠からの手紙を渡し忘れていたよ。後で会った時にちゃんと渡さないとね。
お茶を頂いて寛いでいたらメイビーが部屋にやって来たよ。
「ハル、今から少しお話しましょう。大丈夫?」
僕は頷いてサツキさんに、
「サツキさん、メイビーと内密の話をしたいから席を外して貰えますか?」
とお願いしたんだ。サツキさんは畏まりましたって言って部屋の外に出ていったよ。って、よくよく考えたら男女二人きりで部屋に居るのはマズイ事なんじゃないのかな?
僕は慌ててメイビーに弁明したよ。
「あ、メイビー、ゴメンね。二人きりになってしまったけど、大丈夫かな? 変な噂になってメイビーに迷惑がかかったらどうしよう!?」
慌てふためく僕を見てメイビーがクスって笑ったんだ。
「クスクス、今さらですわ。ハル、思い出して下さいな、ここまでの道中ではマリア姉さんが居たとはいえずっと男性と共に行動をしてきたのですから、テリス帝国では私はハルのパートナーだと認識されていると思いますわ。ハルこそ、私なんかでは迷惑になってしまうかもと考えてますのよ。それについて話をしておこうと思ったので部屋に来たのですけどね」
ええ! そうなの! メイビーは迷惑じゃないのかな。僕なんかと噂になっちゃったら好きな人が居ても一緒になれなくなるよ。
「ウフフフ、ハル。嫌だったらハルと一緒に旅したり出来ませんわ。むしろ、ハルとなら変な男性が近寄って来ないかもと期待してるのよ。でも、ハルが嫌ならちゃんと私から否定しておきますわ」
いえ、むしろ僕にとってはご褒美です、メイビー。前世を含めると四十数年生きてきて、こんなに女性と親しく会話を出来るのはマリーナ姉さんを除けば初めてです。それに、マリーナ姉さんは実はマリーン【オネエ】さんだった訳だし……
僕が首をブンブンと横に振って否定する必要はないと意思表示するとメイビーは嬉しそうにはにかんでいた。う、ロリータ趣味はない筈だけど見惚れてしまったよ。って、今は僕も十二歳だから別にロリータじゃないのか。むしろ健全なのかな。
「それじゃあ、ハル。よろしくお願いし、お願いね」
と親しい口調で言い直してくれたメイビー。
「うん、よろしくね、メイビー」
僕もそう言って返事をしたよ。そしたら扉がノックされて、サツキさんの声が聞こえた。
「ハル様、メイビー様、くんずほぐれつ中に申し訳ございません。館の主であるデイビッドが職務より戻って参りまして、ご都合がよろしければ皆様と歓談したいとの事なのですが…… くんずほぐれつ中だと断って参りましょうか?」
うん、この侍女さんの正体が分かったよ…… 残念侍女さんなんだね。そして、そんな侍女さんを僕付にしたのは間違いなくマリーン【オネエ】さんだよ。
「サツキさん、くんずほぐれつはしてないので直ぐに向かいますよ。マリアさんには連絡してもらえましたか?」
僕がそう返事をしたら、
「何ですって、若い男女が二人きりになってるのにくんずほぐれつしないなんて……」
って呟きの後に、
「はい、畏まりました。マリア様には別の侍女が知らせに行っておりますのでご安心下さいませ。それでは、ご案内いたしますので……」
とまともな返事が返ってきたけど、呟きもしっかりと僕とメイビーに聞こえてたからね、サツキさん……
僕は顔を赤くしたメイビーを連れて扉を開けて部屋の外に出たんだ。
「メイビー様、お顔が赤いようですが、大丈夫でございますか?」
って素知らぬ顔で聞くサツキさんに、僕は貴方の
そして、サツキさんの案内で応接間に連れて来られた僕とメイビーは驚きの言葉をマリーン【オネエ】さんから聞かされたんだ!?
✱短くなってしまったので、十七時にもう一話投稿します。m(_ _)m
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