第38話 今はいろいろ言われてますけど…

 私のクラスに二人の韓国人の女の子がいた。一人は可愛らしい声も小さな女の子。もう一人はお父様が外交官で小さい頃から外国に出ているので、英語が完璧にできる女の子がいた。外交官のお嬢様の方が年齢がもう一人の女の子より少し上で、なんだか二人は仲が良いけれど、遠慮するような感じもあった。

 私はタイ人とも仲良かったが、その二人とも仲が良かった。


 特に外交官のお嬢さんスエ(名前記憶にない)はいろんなことを話した。小さい頃から海外生活が長いせいか、日本人に対してフラットだ。もう一人の女の子ユナ(仮名)は大学生で反日教育を受けているであろうにも関わらずに、控えめで、いつも笑顔を見せてくれていた。


 時代が昔なので、冬のソナタが日本で大流行していた時だったので、日本ではそんなに嫌韓もなく、お隣の国の人だと言う認識だったので、私は同じアジア人として仲良くしていた。そんな私の何も知らないっていう態度が…もしかしたら、今思えば、向こうに気を遣わせていたかもしれない。


 それでも仲良くしてくれてて、彼女たちの家に遊びに行ったことがある。さすが韓国女子なので、あの控えめなユナでさえ、酒豪だ。どんどんお酒が消えていく。ワインのボトルもすぐに空になった。

 スエが「私、この曲好きなの」と言ってくれたのは徳永英明の「最後の言い訳」だ。

「わー、私もめっちゃ好き。歌詞わかる?」

「何言ってるかさっぱりわかんないけど、なんとなく悲しい曲かなってのはわかる」と言うので、ものすごく大雑把に愛し合う二人が分かれる曲だと言った。


 そして彼女たちが歌えるようにローマ字で音を書いて、なぜか三人で歌った。空いたワインのボトルを持ってトランペットに見立てたりして、ただの酔っ払い女子の夜は更けて行った。


「トイレかして」と言うと、

「え? 何でそんなこと聞くの?」と言われた。

「え? なんでって…」

「私たち、友達でしょ? 友達のものは自分のものよ? 冷蔵庫も好きなのとっていいの」と言われた。


「う」

 彼女たちが友達って思ってくれたのはものすごく嬉しいけど、私の家ではちゃんと一言断って欲しい、と内心思った。


 韓国の人は一度友達になるとものすごく熱いんだと、この時初めて知った。そして近いから似てるようなところが欧米人に比べてたくさんあるけれど、全く違うところもあって、興味深いし、お互い気をつけなければいけないな、と思うところもあった。


 私はトゥールに来て、もちろんフランス人のことも少しずつ理解したけれど、やはり他の国の人たちのこともより知ることができた。


 スエとは歳が近いだけあって、たくさん話をした。秘密の話、元カレの話や、今の彼との話。知的で、面白くて、そして少し弾けていた。

 お父さんが外交官なので財産がたっぷりあるのだろう。

「早く財産分与してほしい。生前分与してもらえたら、それでカフェがしたい」と言うダイナミックな未来を話してくれた。


 時々思い出しては「はて? そんなお嬢さん、私の友達にいたっけ?」としばらく悩んだが、それはスエの話だった。


 今は連絡もとっていないが、あの時、一緒にいられた時は本当に友達だったと今でも思ってる。


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