第2話 ニース留学
その前年に私はニースに短期留学をしたことがある。
会社の行き帰りに通る駅中の小さな旅行会社がいつも語学留学のパンフレットを置いていて気になっていたのだ。短期とはいえ会社勤めでは二週間以上休むのは難しい。
しかしその年は会社を辞めて、高校の美術科の非常勤講師をしていたから、夏休みは仕事がなかった。
それで意を決して、二週間のニースに行くことに決めた。
ここで初めてフランス人とその生活に触れた。そしてニースの夏の海は本当にキラキラしていて、宝石をぶちまけても叶わないような輝きだった。
学校が始まる前に二日だけホテルで自由にすることにした。
ニースの海岸ではスイカ売りがいて、ヌードで闊歩しているおばあちゃんがいて、私は海水アレルギーなので海には入らず、眺めていた。
そんな時にドイツ人にナンパされた。
「何してるの?」
私はその時、絵を描いていた。
絵について「いいね」とかなんとか、言ってはいたが、ナンパだ。しかもバカンスで浮かれただけの。
ところが、ナンパしてる男は連れの女がいるという。
「は?」
理解不能。
「大丈夫。彼女はフレンドだから」
それは私には関係ない、と思っていたら、どうやら私が彼女に遠慮していると勘違いしたらしい。
急にその女の子のところへ連れて行かれて、どうやら部屋から出て行ってほしいみたいなことを言っていた。(ドイツ語なので、完全に私の妄想)
女の子はなんだか、「あ、そう?」と少し怒った様子で、立ち上がって、ホテルに荷物をまとめに行った(と思われる)。
「え?」
私はナンパ男とどうする気もないのに、なに勝手に…と思った。
「彼女とは部屋をシェアしてただけで、気にしないで」と言われたが、「いや、何勝手に話してるんだよ」と思ったが、何を言っても通じない。
全く通じない。カタコト英語だし。私、フランス語習いにきた…のに。
でも多分、私も日本人的な断り方? をしていたのかもしれない。
人生で初めて、バッくれた。
それからそのドイツ人に遭遇しないかドキドキしたが、私は外国人の顔認証ができないので、会ってたのか会ってなかったのかすら、分からない。
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