第118話 現代人はベルトコンベアの偉大さを知っている

裁判の真似事が終わり、人肉供給装置が増えて人肉の供給は安定した。今後の犯罪者に関してはとりあえずアリエルの街に送るという手順を取るようなので、ショゴスロードを増やして対応していくことになるかな。毎回アメシストにやらせるわけにはいかないし。ショゴスも人肉供給装置のお蔭で量産体制に入ったし。


司法の仕組みも徐々に整う中で、唐突にアリエルの街で巨大な医療の組織が創設され、医療ギルドを名乗るようになった。そのトップは何かよく分からないおばさんが務めると宣言したけど、この街で治療が出来る、回復魔法を使える人と、薬草やら病気に対する知識を持つ医者を抱え込み、巨大な病院まで建ててしまうのだから行動力がすげえな。


そしてこのおばさんがかなりがめつく、医療ギルドは高額な医療費を要求するようになった。これまでのシュヴァリエやらリトネコ王国の時代には回復魔法を使ってもらうための料金に上限があったけど、それが撤廃されたことによる値上げと寡占を狙っての行動だね。


この医療ギルド発足を機に、第二医療ギルドやら真医療ギルドやらが乱立し、一気に『会社』が乱立するようになる。また似たような流れで何らかの商売を行う会社が乱立したが、中には出資者を募る人も存在した。


いわゆる『株式会社』の設立である。というか出資者にはいずれお金を返すという仕組みを今はとっているみたいだけど、その内この辺は制度化されていくだろう。人口が増加したアリエルの街では、物を作れば作るだけ儲かる状況だし、上手く行く会社も多いんじゃないかな。


というか出資者を募る形式の会社というか組織が本来の意味でのギルドだっけ。人が集まり冒険者活動がし辛くなった以上、こう言った形で金儲けをし始める人は多くなるだろう。人が多いからこそ色んな考えや発想が生まれるだろうし。


業務形態の似ている会社が乱立したことで市場価格は乱高下を起こし、経済が不安定になるけど政府による介入というものがないために酷いレベルでバランスが取れている感じがする。特に医療関係は最初に似たような会社の乱立が為されたことで、寡占やら価格競争やらが発生。ここら辺の対応は冒険者ギルドのマスターが行うことになった。自分は医療にお世話になる可能性が皆無だし当然の放置。


「極小の、石自体しか浮き上がらせることが出来ない浮遊石があるじゃないですか」

「あるな。めっちゃ安いやつ。大量に集めても全然飛べる気配がなかった」

「あれでベルトコンベアを作ったのでうちの商会は製造も行うようになりました」

「……だからパン工場やらガラス工場やらを建て始めたのか」


今日はサウイマ商会からいつも通りに売上金を受け取り、ついでにサウイマ商会が大々的に土地を買収していたので何をやるんだろうと聞いてみたらベルトコンベアを開発したので工場を乱立させるとのこと。やっぱり日本人ってだけで、この世界ではズルいレベルの知識あるよね。


小さい浮遊石を使って魔力を供給すると回転し続ける機構を作り、それに輪っかになった皮みたいなのを被せてベルトコンベアの動力部が完成。……今のアリエルの街の人口を考えるに、物を作れば作るだけ売れるだろうから大量生産に踏み切るのは正しい。


ただこうなってくると普通の職人とかが職を失うようになるから、ラッダイト運動とかも発生するのかな。生産性が向上すると、職を失う人が発生する。ケイトも極力そういう人を工場で雇っていくと言っているけど素直に職人さんがそれに従うかは疑問。


……計画について聞いたところ、コンドーム工場まで作るみたいだ。まあゴムの木みたいな木はこの世界にもあるし、やろうと思えば出来るけどやっぱりケイトが真っ先に飛びついたな。ただこれが普及するかは別問題。今のところ、性病で性器がアレコレなったって噂は聞かない。


デリケートな問題だからみんな隠したがるのかなとも思ったけど、医療ギルドが乱立した辺りで性病の症状が出ている人はいないか確認したらいなかったからかなり不思議ではある。歓楽街はアホほど流行ってるし、アリエルの街の男なら誰しもが1回は行っている感じなのに。……自分は行ったことはあってもしたことないけど。


「工場乱立は良いイメージないけど密集させた方が良いか。真ん中空いてるのは何か作る予定?」

「将来的に、工場群からの排水は纏めて処理する仕組みまで作りたいので真ん中に排水処理をする施設を作る予定です」

「……公害が問題になるなんて当分先だろうし気にしなくても良いんじゃないか?」

「それで『他人の健康を奪った』という判決が出るのも面倒なので」


ケイトは工場群の排水を纏めて処理することまで考えているけどこの世界にはスライムがいるから別に気にしなくても……スライムって有害物質まで分解できるのだろうか。何でも食べるとスライム達は豪語してるし、実際何でも食べるので人間にとっては有害物質でもスライムにとっては大丈夫かもしれない。


……まあ意識が高そうなのは助かる。とか思ってたらケイトが前に買っていた犬耳ロリメイドがお茶を運んできたけど、若干お腹がぽっこりしているのでたぶん孕ませてやがる。何だかんだコイツが一番異世界をエンジョイしてるのではなかろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る