第57話 現代人は延々とハクスラしたい

96階の毒の無効化はキューでも無理だったため、95階のショゴスを利用してキューのパワーレベリングを実施する。ショゴスはダメージを食らうと身体が小さくなっていく仕様っぽいので相手の残りHPが非常に分かりやすいんだよね。


そんな状態なのでスーが極太光線をぶっ放して少しだけ残ったショゴスに対し、キューがトドメを刺すサイクルでレベルを上げ続けるとキューも10レべになった。流石に95階でレベリングするとAランクの魔物でもそれなりのスピードでレベルが上がるな。


進化先は、八尾。正直に言って、Aランクの七尾からSランクに進化する際、一気に九尾になる可能性も考えていたから八尾という段階があるのは少々意外だった。


これで九尾になれない、なんてことはないだろうからほぼ確定でSSランクまではあるなこれ。SSSランクだのSSSSランクになってくると冗長的な感じもするし、十尾以降は考え辛いからSSランクが最上位だろうか。


となると、ダンジョンの最下層で待っているのは今までのパターン的にSSランクだな。そもそも80階のフェンリルの時点でSランクだったし。


で、八尾になったキューは96階の凶悪な毒ですら無効にするようになったので探索は進み、とうとう100階に到達。100階の敵の名前は?しか書かれていない光の玉で、8人に分身したキューの魔法威力上昇バフを貰ったスーの初撃による集束光線により一瞬で砕け散った。ガラス玉みたいに砕け散ったな。


今までのボスの中で明らかに最短である。一応ラスボスっぽい存在がこんな風にやられて良いのか。光の玉が砕け散った直後、中から天使というか女神っぽいのが現れる。ステータスは???が並んでいて見れないのでたぶん実力差がヤバイのだろう。


「よくぞここまで辿り着きました。私に可能な範囲であれば、どのような望みでも1つだけ願い叶えて差し上げましょう」


……見た目はアークエンジェルが30歳ぐらいになった感じでまあ美人だけどとにかく大きい。身長3メートルぐらいないかこの女神。そして何か願いを何でも1つ聞くとか言って来ているけどそんな特典自分は知らない。


これ、過去に踏破したと言われている聖帝ってもしかしてここで大陸の統一国家でも望んだ?


「ええ。1人目はこの世界の統一国家の王を望みました。貴方がこのダンジョンの2人目の踏破者です」


うわナチュラルに心読んで来る奴だ。下手なこと考えられないの辛い。これ、心でふと思った願いを勝手に叶えられて消費されたりしないよね?


「……質問は願いに含まれないよな?」

「もちろん。ちゃんとあなたが口に出した、本心で叶えたいと思う願いが叶えられます」

「ねえ何を話してるのー?」

「あれ、もしかして正面に大きな人がいるのは見えない?」

「見えないのじゃ。恐らく、主様だけに見えているのじゃろう」


とりあえず心の中で思い浮かんだ願いを即叶えるという酷いことをする女神ではなかったので安心はしたけど人の頭の中を覗くのってかなり酷いことだと思う。……試しに正面にいる女神のオナホ化やら思い付く限りの拷問を受けさせる等の願いを候補として考えてみるが、向こうは眉1つ動かずに微笑む。うーん思っていた以上に真っ黒狸。


ついでに、ルーが誰と話しているのか分かっていない感じの言葉を発してみんな困惑している感じなので、魔物達には女神っぽい存在が見えていないことを確認した。権利は自分だけにある感じか。それなら、まずは魔物達に意見を聞いてみよう。


「これは魔物達への質問だ。……もし、何か1つ願いを叶えられるとしたら何を願う?」

「あ、それダンジョンクリアの報酬?

そういうのは前にトーヤが寝ている時に話し合ったことあるよ」

「お兄さんが私達に意見を求めるのは分かっていたので、それに対する答えは1つです。『マスターの願いが叶うこと』これが私達の願いです」


ということで魔物達に意見を求めたが自分の願いが叶うことが願いって何でそんなに滅私奉公しているんだ。……恐らく、元の世界に帰る選択肢もあるんだよな。正直ネットないの辛いし元の世界にいる知り合いは多くないとは言え、帰りたい気持ちはある。


ただ高卒で働くにしても大学受験の勉強を再開するにしても帰りたくない気持ちの方が大きいのにプラスしてこの世界だと力持ってるという帰らない理由もあるため、まあ元の世界に帰るって願いは無しだな。


元の世界とこの世界を行き来する力が欲しい、とかだとそのスキルだけ渡されて実行するには魔力が足りませんとかありそう。うーん、いきなり言われてもパッと出て来ないしこれで良いや。


「無限にダンジョンへ潜れるようにして欲しい」

「……願いを増やす願い等は増やした後に姿を消して無効にする予定でしたが、ダンジョンの階層を増やす願いですか。それも無限と」

「ああ。無限にダンジョンに潜れるようにして欲しい、だ。無限にダンジョンへ潜れるよう、不老は標準搭載しておいて欲しいし今まで通り敵の強さに合わせてこちらも強くなっていきたい」

「なるほど。今のあなたの本心からの願いが全て詰め込まれていますね。高止まりせずに強くなっていきたい、寿命を延ばしたい、ダンジョンの攻略をしたい、と」


願いを言い終わると、考え始める女神。あれこれやっぱり通らないパターンもあるのか。というか考えなしに願いを言っちゃったけど、願いを言うことでデメリットになるパターンを考慮するの忘れてたな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る