第54話 現代人は線引きが自分勝手
本日の85階での金策中に、天使の涙の回収を同時並行でさせていたら最終的にムーは57人の天使から50mlぐらいは涙を回収していた。蒸発させないように魔法で保護しているのは流石である。
「……長時間虐めたら1人当たり1mlは涙を流せるんだな」
「結構頑張ったわよ。これで、回復効果はあるのかしら?」
「あの、涙を回収する時に抵抗されて受けた傷が涙を舐めたら治ったのでかなり効果は高いかと」
「じゃあ何人かアークエンジェルを持ち帰ってひたすら泣いて貰えば無限に効果の高い回復薬を生産し続けられるってことか」
小瓶に回収したわけだけど、この小瓶の価値って幾らになるだろう?回復魔法では傷は治せるけど、病気や大きな欠損を治せるわけではないので、それらに効果があるなら軽く数億の価値は見積もって良いかな?
「というわけで重病人な有名人とかが居たら治せる可能性があるので教えて下さい」
「……何がというわけかは分からんが、難病の類を治す依頼なら掲示板の方にもあるだろ」
冒険者ギルドのマスターに、都合の良い重病人がいないか聞いてみると掲示板の依頼の方にそういうのを張りだしている人がいるみたいなので依頼を漁る。
すると、とある伯爵家の娘が難病で寝た切りになっているみたいなのでそいつで試そう。早速現場へ向かうと、例の装備を剥いだお爺さんの家だったのであのジジイの孫娘か。
現当主になったおっさんは自分と自分の魔物達を見てガクガク震え始めたけど、娘の病気を治しに来たと言ったらすんなり案内してくれる。蛇が何匹か食べられた報復は既に装備剥ぎ取りで終わっているから安心して欲しい。
そして娘の容態についてだけど、どうやら医者が匙を投げたようで、冒険者ギルドに依頼として張り出したらしい。結構色々と試したようで、最後に民間療法に頼った感じか。
まあ医者が匙を投げたとは言っても延命治療的なことはしてるっぽいけどね。で、症状を見ても自分はどういう病気なのかさっぱり見当が付かない。咳は、少ししている感じだけどそれで吐血するのか。
あと寝たきりの影響か、脚が細いなあ。で、やたらと美人さんなんだけどもしかしなくてもヒロインの1人か。これ治したらイベントスリープしない?リトネコ王国の王都に近い街だけど、ここで戦争して、この娘だけ助け出すパターンか?
というか人間にしてはめっちゃ貴重な土属性魔法の一種である植物魔法を使える子じゃん。と思っていたらハーフエルフのようで母方にエルフの血が混ざっていると聞いた。やっぱりこの世界にもエルフいるのか。これまでに見たことがないということはどこかの国や森に引き籠ってるのかな。
……ハーフエルフ、植物使い、病弱なのに巨乳、美人。伯爵家の一人娘ということも相まってヒロイン確定です。これ治したら関連イベントが全部スリープする奴だよ。でもこの子関連のイベントは本筋にそこまで大きな影響を与えることはなさそうだし、天使の涙の効果を確認したいから使っちゃおう。原因不明の難病とかこれ以上に都合の良い被検体いないし。
天使の涙は小瓶に入っているけど一気に使うのが勿体ないので一滴ずつ口を開けさせて飲ませる。すると数滴を垂らし終えたところで、淡い光りをハーフエルフの子が発して、すぐにベッドから立ち上がれるぐらいには一気に回復した。具体的に、痩せ細った足が健康的になってる。
……これ効果ヤバすぎないか?物理法則を完全に無視しているのはもうこの世界の常識として慣れたんだけど、病気を根治するだけでなく身体的障害まで治せるならこの小瓶の価値は数十億レベルだと推察できる。病気は結核とかがんとかその辺な気がするけど、それを根治するってどうなってるんだ。
怪我もついでのように治せるけど、この小瓶だけでもあと5、6人は余裕で難病を治せる。これは工場を建てて量産したいな。大量生産が出来れば、寿命以外で死ぬことはなくなるんじゃないか?
……そう考えて、魔物達に天使の涙回収工場の建設を任せたら、たぶんあの天使達は四肢を切り落とされて死ぬまで延々と苦しめられるところまで想像出来てしまったので一先ずはこの小瓶分を自分達用にして、使い切ってから考えるようにしよう。
何というか、あの可憐な少女達がだるま状態にされて目に器具を取り付けられ、延々と虐められて傷だらけになりながらも、食事は流し込まれる上に回復魔法があるため死ぬことは出来ない状態になるのは僅かに残っている良心が痛んだ。それがずらっと並ぶような光景は、まあ悪夢だわな。
四肢を切り落とさなかったら切り落とさなかったで、抵抗を受けた時に下手したら死ぬから機械的に生産するなら切り落とす以外に選択肢はないね。アルも思わぬ反撃を受けて結構痛がっていたし、本当に拷問の時はムー1人に任せなくて良かった。
よく考えたら拷問した後で殺して素材回収するのと工場建てるのとでは同じような気もするんだけど、個人的な良心の限界がそのラインだった。無くなるまで考えないようにするのは問題の先送りだけど、そう簡単になくなることもないだろう。
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