第42話 現代人は配慮されがち

一通りのレベリングも終わり、一段落したため、王女の家探し事件で貰えた湖の周りの土地の確認をしていく。あれ以来、目隠れ王子陣営から一切の連絡がなかったのでたぶんギルドマスターが自分の取扱説明書を渡したんだと思う。興味持ったら自分から関わるからそれまでは放置しておいてくれ。


さて。湖の周りということでほぼ森、というかジャングルだな。全部燃やしたいところだけど、後先考えずにそれをすると自分が所有権を持つ土地の周囲まで燃やしてしまい、間違いなく国家の敵になるので見送る。あと酸欠とかで死にたくない。


……んー、柵と堀だけ作って後はスライム達に任せようか。森にいる魔物としては定番のゴブリンの他に、オーガやオークもいるけどダンジョンの9階で出て来るのと同レベル。つまりはスライチやスラニだと楽勝。まだスライムメイジの面々だと苦戦するかもしれないってぐらいか。


自宅の地下空間からここまで通路も作って、鉄道走らせようかな。結構距離あるから、ハルに抱えられながら空飛ぶの怖い。アリエルの街から北に20㎞ぐらいあるから徒歩だと往復で1日かかる程度。馬車なら休憩込みで3時間かな。


「ここ……ダンジョンあるよ」

「おお?どこにだ?」

「湖の底」

「……おう。結構入り口も深そうだな?」


土地を確認していたら、スネーク君がダンジョンを見つける。湖の底にあるダンジョンって、ゲームだと出てきそうな気がするけどどうやって入るんだよ。あ、スーは自由に潜れるしスライムなら基本自由に探索できるのか。


あとムーやキューが球状の結界を張れるので、それで周囲を覆って潜る手段もあるそうだけど酸素は大丈夫なのか?


「主殿、水中にも空気はいっぱいあるから息が詰まることはないのじゃ」

「選択して通すものを選べるので、水中にある空気であれば通りますし大丈夫ですよ」


とか思ってたら両方とも水中の空気を取り込めるようで酸素の問題はないとのこと。まあ水中に酸素って結構溶け込んでいるし、それが結界を通過するなら大丈夫なのか……?


流石にいきなり水の中へ突入するのは怖いので何らかの方法で実験をしてからになると思うけど、誰も入ったことがないようなダンジョンがあるというのは興味が湧く。まあゲーム的に考えれば地形変動とかで湧き出る新ダンジョンなのかな?ストーリーが進めば無理なく入れる可能性を考えると無理に入る必要性は少ないと思う。


ただまあ実験が成功して水の中でもある程度探索できるなら覗いてみるぐらいはして良いか。……こういう裏ダンジョン的なダンジョンって、1階から敵が強いのかな。




湖近辺の土地を確認し終え、とりあえずスライチを始めとしたスライム達の移住を終わらせた後。唐突に冒険者ギルドのマスターに呼び出され33億円払えと言われた。


どうやらスーの極太光線で破壊された街並みや穴の開いた城壁について、被害額の試算が終わったらしく、当然ながら賠償しろとの要求が来る。ちなみにリャン帝国にも責任があるようで、責任割合は自分が3、リャン帝国は7となっている。捕まえようとしないところは流石。捕まえられない存在だということを分かっている。


……リャン帝国軍はもう撤退しているので、欠席裁判だな。自分はギルドマスターが法廷っぽいところに立つ代理人を雇ってくれていたようで、全てが事後報告である。日本じゃありえないし、この世界でも非常識的行動だけど特例が作られたっぽい。


そもそも自分が言いがかりで訴えられるケースが多く、裁判とか面倒だからギルマスに全部丸投げしてた気がする。というかどう考えても自分9、リャン帝国軍1ぐらいの責任割合だと思うけどそれが3対7になっている辺りは相当配慮されてる。


そしてリャン帝国にリトネコ王国とシュヴァリエが共同で77億円弁償しろと言ったらリャン帝国も「お前らの国のダンジョン狂いのせいで2500人の軍人が死んだから遺族に謝罪と賠償をしろ」とのコメント。こっちの賠償額に至っては100億円という設定になっていて、何故か自分に30億円払う責任があるとか何とか。いやそれも3割負担か。そっちも9割以上自分の責任だと思うけど。


何で両方とも、3割ぐらいは負担してくれって路線なんだろう?別に1ヶ月どころかやろうと思ったら1日で達成出来そうな額だし別に良いけど。


「現時点での素材買い取り価格で大量の素材を納入するのでそれで借金帳消しになりませんかね?」

「分かってはいたけどそりゃ溜め込んでいるよな……!?

というか払う気はあるのか」

「そりゃうちの魔物が壊しましたし、リャン帝国の方は払わないですけどリトネコ王国の方は弁償はします。人的被害は少なかったんですよね?」

「まあ戦火に包まれた街で避難している人も多かったからな。残念ながら家財が全部吹き飛んだ人もいるが。

死者はリャン帝国軍の死者2500人に比べたら微々たるものだ。その辺りは戦争での死者になっているため考えなくて良い」

「じゃあ何で物的損害の方は功罪で打ち消されないんですかね……?」


アリエルの街の住民での死者は17人と破壊した規模から考えると少ないが、まあリャン帝国軍があの後で略奪活動をしていた場合、もっと多くの死者や犠牲者が出ていた可能性はあるとのことだったため、功績と打ち消された感じか。火の手も上がっていたし、自分のところにも金属や食糧があったら出せって名目で来ていたから、他の場所でもカツアゲによるトラブルが起きて殺された人はいそう。


そしてリャン帝国が賠償金を払わないということを理由に、リトネコ王国とシュヴァリエが強制徴収をすると軍での侵攻を開始。同時にリャン帝国も、自分からではなくリトネコ王国とシュヴァリエに対して賠償金を払えと言い続け大軍を用意する。露骨に自分が避けられている気がするので、今回は自分が関わらない戦争だと良いな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る