第30話 現代人は管理職になりたくない

無能な上司が居て、部下は全員優秀という状況になるわけだけど、上司側は部下達の権力権限を等しく分配することによって上手く対立させ、反乱や謀反を起こさせないようにすることが重要だ。


そこまで鈍感でもないので、口では警戒しつつもムーやキューがこちらに好意を持っていて隙あらば懇ろの関係になりたいと思っているのは察しているし、ルーやローは素直に好意を抱いていると思っている。いやサキュバスのムーと懇ろの関係になったら普通に死が待っていそうだから胸へ手を出したことはあるけど本番まで致してない。流石に命は惜しい。


で、スネーク君が下水道とダンジョンの連結工事に対して不満というか愚痴を言ったのは見逃せない。指示に強制力がない以上、不満を溜めさせるのは避けるべきだ。……ハルはファイアーバードになってもわりと鳥頭だからルーと似たような感じだけど、ハルもそこまで好意的な感じはしないんだよなあ。


……そしてスーが一番分からない。この子が一番不満回数というか、負の言葉を言う回数が多いんだよね。そのわりには懐いている……のかなあ。ブーブー文句を言いつつ、ルーやローにトドメを譲るスー。あまり不満を溜め込ませたくないけどこうするしかないってのが怖い。


地味に一部の魔物同士で対立構造も出来上がっているし、非常にめんどい。これから先も魔物が増えること考えるとそれぞれに使役枠を持たせるプランは頓挫させておいた方が良いかなあ……。派閥コントロールをしないといけない状況になりそう。


戦争の方は、東のヴィランク帝国に攻め込んだリトネコ王国軍が無事に王子の国の領土の一部を取り返し、復活。ヴィランク帝国は結構大きな国だったらしいけど、この敗戦で一部諸侯が独立したみたい。


……てことはゲーム性を考えると、リャン帝国も分裂とかするんだろうな。本来であればリトネコ王国の王都まで侵攻されて、リトネコ王国自体は滅亡。この構図になるとリャン帝国の国力が大きくなりすぎるから、あの皇女が独立するとかありそう。あとはリトネコ王国の残党とかで細かく分裂していって、戦国時代到来が分かりやすい展開。


細分化されればされるほど、あの目隠れ王子が拡大しやすいからそうなる世界だったのだろう。ということはリャン帝国軍を半壊させたせいでリャン帝国軍がこの街に留まっている状況はストーリー展開的に不味そうだ。


……まあストーリー展開を守ったところであの王子が大陸統一エンドになりそうだし、守らなくて乱世が続いても別に自分に影響はないか。


んー、自分の勢力自体は持ちたいけど責任とかは持ちたくないから自分で建国とかは考えたくないんだよなあ。災害起きたら弱小新興国とかすぐに滅ぶだろうし。国民全員の生活を保障するとか考えたくねえ。


まあ今はリャン帝国民になったわけだし、あまりに理不尽じゃなければリャン帝国のルールを守っていこう。あと冒険者は他国に行ってもランクが通用するし、今でも別にリトネコ王国の王都ダンジョンへ行こうと思ったら行ける。あそこ人多いし深層装備は競合する冒険者達がいるからあまり行きたくないけど。


「……えー、リャン帝国ではDランク以上の冒険者が全員問答無用で徴発されるそうだがお前は従わなくて良いようだ」

「どこでリャン帝国に自分の取り扱い説明書を渡しました?」

「占領された初日にお前の家を囲んでいた軍が半壊した後のタイミングだな」

「もうちょっと早かったら軍も半壊しなかったのに」

「いや、それでもどこかで衝突自体はしていたと思うぞ。リャン帝国はリトネコ王国より軍部の力というのが強いからな」


ダンジョンから帰って来て、持ち込んだ大量の素材の鑑定をしている間は冒険者ギルドのマスターとの雑談タイムと化したわけだけど、世間の情報を入手するならここだけで良いやってぐらいにこの人色んな情報仕入れているし、ちゃんと渡してくれる。


「ヴィランク帝国軍との戦争ってこちら側が数的有利でした?」

「リトネコ王国は8000人で、ヴィランク帝国は5000人程度だな。あの聖帝の血を引く王子が剣を一振りして数十人を吹き飛ばしたんだとさ」

「あー……自分で戦ってるのかあ。

というか8000人もいるならちゃんと防衛戦力残しておくとかあったと思うんですけど」

「リャン帝国が攻めて来る前に蹴りを付ける予定だったそうだが、そう上手くはいかなかったみたいだな」


防衛戦力を残さずに侵略し始めたのは謎だったけど、どうやらリトネコ王国の軍部は早期決着を常々主張していたようだ。まあどこの国でも軍は『早期決着する』としか言えないわな。戦争するのにはお金がかかるし、早期決着しなかった場合はほぼ確実に不景気がやってくる。早期決着しますと言えないなら戦争なんて始められない。


侵略戦争は、すぐに終わらせなければ旨味が少ないのだ。その早期決着自体は出来たのだが、情報がリャン帝国に筒抜けですぐに侵略されたのは不幸だったって感じ。


あとはリトネコ王国の上層部がリャン帝国を見下していて準備に時間がかかると思っていたらしい。実際、数年前の戦争ではリャン帝国軍の動きが鈍重で、攻めて来たリャン帝国軍をリトネコ王国軍は難なく退けている。


ということは、その敗戦以降にあの紫皇女が軍を仕切るようになったのかな?ゲーム中の扱いは有能枠だろう。今はなんか自分にちょっかいかけた罪でリャン帝国軍内部の争いが起きているようだけど。まあ軍が半壊なんてしたら内輪揉めぐらい起こるわな。

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