第21話 現代人はお金が欲しい

王都のダンジョンに入り、31階からはアーティファクトの類が出るとウキウキしていたのだが実際は全く出て来ない。そもそも31階に辿り着けるパーティーが王都には多いし、1日やそこらで復活するようなものでもないらしいから空振ることも多いとは聞いていたが、全くの0か。


仕方がないのでどんどん進んでいき、40階のボスと対面。幸いなことに、40階のボスが今日討伐されていたということはなかったので無事に戦えた。


王都ダンジョンの地下40階のボスは首無し騎士ことデュラハン。滅茶苦茶強そうな雰囲気を醸し出していたが、スーが光線を放つ前にルーが一刀両断していた。状態異常に弱いという弱点を聞いていたが、ムーの魅了魔法もキューの混乱魔法もいらなかった。相変わらずレベルを上げて物理でゴリ押していくスタイルである。


デュラハンが持っていた真っ二つになった鎧とか一度も使われなかった剣を貰って、ダンジョンから帰ると今生きている冒険者達の中では3人目の攻略者だと言われたのでやっぱりうちのパーティーはかなり強くなってることを理解。デュラハンの剣一本で数千万円のお金を貰えたので王都でも活動拠点として家を買う。宿借りるより自分の家持った方が色々と楽だからね。即金でポンと家買える世界観はお金持ち側からすると都合が良い。


しかしまあこの世界、下水道はあるのに上水道がないのは色々と不便である。基本は井戸から汲んでくるわけだけど怖くて飲めないし井戸の水のお風呂とかにも入りたくないのでこの辺はルーを頼っている。フェアリーパラディンになって物理型に転換したとはいえ、魔力は増え続けているしお風呂の水を簡単に用意してくれる存在は非常に便利。


……ただそれはそれとして蛇口捻ったら飲める水が出て来た日本が恋しくはある。上水道配備しようかな。原理的にはそれほど難しくはなかったはず。高台に水を持って来る仕組みさえ作れば一気に大金持ちかもしれない。確実に知名度上がるからやらないけど。


「今日の晩御飯はなにー?」

「しお炒飯」

「お肉は入れるー?」

「ドラゴンの余ってるから多めに入れるわ」


王都に来てから米が売ってあるのを見つけ、衝動買いした自分は悪くない。大した料理は出来ないが、卵と肉と人参っぽい何かや玉ねぎっぽい何かを投入して炒飯程度は作ることが出来る。なお今回は米を炊くのに失敗して妙に硬くなった模様。それでも魔物達は肉さえ入っていれば美味しいと言ってくれるのが救い。


料理を作る際は、隣にルーがいると便利なので一緒に作ってはいるが手伝う素振りはない。ただ水を使う時に水を出してもらうだけである。……狐に玉ねぎって食べさせて良いんだっけ?まあ食あたり起こしてもヒールで回復するから良いや。


夜になったらスーがスラヒャクイチからスラヒャクジュウまでを出産というか自身の身体から分裂させて下水道へ流し込む。王都の下水道の規模は目測だけど、前に居た街の5倍ぐらいはありそうだから5000匹は居そうだな。


増え過ぎた場合、スライムによる洪水が起こるそうだけど王都には冒険者が多いからそれほど大きな被害はないらしい。野生のスライムって弱いしね。支配下にあるスライムは規律のある戦い方するから妙に強くなるけど。


夜ご飯を食べ、そろそろ就寝しようかというタイミングで誰か訪ねて来たので出てみると一緒に王都に来た騎士さんとニコニコ笑顔の太ったおっさんが出て来る。ああこいつがこの国の宰相か。化け物の巣窟に護衛1人で飛び込んで来るとか危機感無さ過ぎる気がするな。


眠たいから明日来てくださいと言ってドアを閉めると爆発音と共にドアが吹き飛ばされ、自分は吹っ飛びスーにキャッチされる。見た感じ、宰相が蹴破ったのかな。意外と強そうだ。


しかし残念なことに、ドアが破壊された直後に家から飛び出たルーとローによって即座に地面に取り押さえられる騎士さんと宰相。そのまま縄でぐるぐる巻きにされて、ルーとローが2人の首筋に剣を添える。……いや自分何も指示出してないけど、何で拷問始まってるの?


そしてその後は宰相が捕らえられた状態で自己紹介を行い、家の扉を壊したことを詫びた。予想通り宰相だったわけだけど、これ捕らえて大丈夫だった奴か騎士さんに聞いてみると震えた状態で前代未聞ですとの回答が。まあ1国の首相が家に上がり込もうとして捕らえられたってそうそうあることじゃないか。


ちなみに宰相を門前払いしたのは自分が初めてだったらしい。いや夜も遅い時間帯に来るなよ。それで怒ってドアを蹴破る方もどうなんだ。というか案外強いと思ったら冒険者で成り上がって貴族になって、そのまま出世し続けたタイプの成り上がり貴族なのか。敵多そう。


要件に関しては貴族のお誘いだったけど、丁重にお断りしたら「もう捕らえられた時点で貴族にする気は失せたわ」とのこと。問題児ムーブが生きた瞬間である。やっぱ頭のネジ一本飛ばして狂人していた方が面倒事少なくなるし正解な気がするわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る