第19話 現代人は自己評価が低い
50階を突破して一旦攻略を打ち切り、ミスリル鋼を一部冒険者ギルドに売却すると初制覇者だみたいな騒ぎになったけどここ数十年50階を突破した人がいないってマジか。道理で古本屋でも埃被っているような本からしか50階以降の情報を入手できないと思ったわ。しかもその本も60階までしか書いてないからたぶん61層以降はかなり難化するのだろう。
ということは、既に自分の立ち位置は相当強い部類になってくるんだろうけど……まあまだ国相手に戦うことになったとしたら普通に負けそうだし身寄りのないこの世界で好き勝手生きていくにはまだ強さが足りない。
幸い、朝に絡まれた王子パーティーは帰りに遭遇しなかったので今回の騒ぎを知るのは翌日以降となるだろう。しかしながら王都から騎士の人が来て自分に会いたいと言って来たので、明日の朝の時間まで待っとけと言って帰宅。そろそろこの世界での身の振り方を決めないとなあ。
とりあえずは全力でダンジョン攻略という目標を立てていたわけだけど、そろそろ放置されなくなってきたわけだし……一旦別の街に行って他のダンジョン潜ってみるか。恐らくだけど、この街のダンジョンはかなり難しい方のダンジョンのようだし、どこかのダンジョンを踏破した方が実入りは大きい。
……この国の王都にもダンジョンがあるけど、そちらは40階が最下層。北の海に面した都市にも50階オーバーで階数不明のダンジョンあるけど、一旦ダンジョン変えるなら王都の方が良いか。
じゃあ王都から来た騎士とは会って、王都へ行って、何か面倒なこと言われたら放置で良いか。誰々を救ってくれとか魔物を討伐してくれとかダンジョン関係ないなら遠回りにしかならないし、そういうことはしたくないけど……一回王都は見ておきたいし。
「ん、こどもたちが1000超えた」
「下水道完全掌握したかあ。王都には持って行けないのがなあ」
下水道のスライムについては、スライチやスラニが別途使役枠を持っていたから際限なく増えることが判明し、スーの子供の数はとりあえず100でストップ。管理し辛いし今何匹のスライムがいるかの把握はしていきたい。
そしてスライチやスラニ達も子供を作り始めたのでスーの一族の総数は一気に増えて行き、1000を超えた。ネズミ算を超えた何かで増えて行くのはヤバすぎるしこれだけで世界制服出来そうな気すらする。スライチやスラニも基本1000以上の使役枠あるの頭おかしい。
まあ、王都も当然下水道があるしそっちでも増やして行くか。この街より圧倒的に大きいらしいし、下水道のスライムの数も多いだろう。各地にスーの子供がいるという状態になればいざ王国と敵対した時、一気に各都市を機能不全にまで陥れることが出来るし、やっておいて損はない。……それやったら人類の敵ルートに入るけどたぶん全都市に仕込めた時点で人類相手に負けはなさそう。
というわけで基本的にはこの国……リトネコ王国からは移籍しない方針で、敵対するかは要求次第かな。一応別の国行っても特段問題はないんだけど、別の国行ってもまたそこで同じようなことにはなるだろうしなあ。
あと家買った時点でもうそこまで他国に行く気もなかったし。……個人的には「力あるのに何で助けてくれないんだ」的な展開になるのが非常に嫌なだけなので知名度上げる行為を全力で拒否していた。力を持った者が持つべき責務とか責任感は地球に置いて来たし、他人のために時間を割くのが凄く嫌だ。
翌日になって王国から来たという騎士と相対するけど、顔をよく見ると細身のイケメンとかあの王子の噛ませ役か単に序盤で使える男キャラか……。一応この街出身らしいので、里帰りついでに声をかけに来たのかな。
「わずかな期間でAランク冒険者にまでなった将来有望な若者を国が放っておくわけないだろう。一度で良いから王都に来てくれないか?」
「王都には一度行ってみたかったので行きますがそこで貴族や王に会いに行くことはしないですよ?」
「……どうしたら我が主に会ってくれる?」
「忙しくない時に会いに来たら会います」
自分の言葉に若干ピキっとなった騎士さんだけど、怒鳴ったりしない辺りは大人というか出来た人間だ。中世の文化水準で自分の言葉に無礼だとか言って頭ごなしに否定しない辺りは人間力が高い。ここで騎士さん側が怒っても何も得られないということをよく理解していらっしゃる。
そしてその後も話をするうちに、この人はこの国の宰相の騎士だということを把握。……なんか国の重要な政治機関のトップっぽいから宰相だと認識したけど、宰相ということはまあ、お金持っているだろうな。
この国の上層部が一枚岩ってことはまずないだろうから、体制派か反体制派かぐらいは調べておくか。あー、人と関わると色々と考えること増えるの本当にやだ。純粋に支配下の魔物育ててダンジョンクリアしていくゲームだけしていたいけど、たぶんそう言っていられる期間はもう残り少ないんだろうな。
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