第17話 現代人は個人情報の扱いに五月蠅い

新入りの一尾であるキューが初日に三尾、2日目に四尾、3日目に五尾まで進化し、即戦力の狐としてパーティーの潤滑油になり始めたので今日は40階のボスであるドラゴンにチャレンジ。突破したらAランク冒険者になれるそうだけどそこはあまり興味ない。


あ、ダンジョンに潜り始めた王子達は今9層のオークで苦戦しているそうなのでなんか特別な超常的パワーとかは持ってなかったみたい。何らかの特殊能力があればあそこら辺は一瞬で突破出来るだろうからね。そんなに人間辞めてないなら関わっていって良いかもしれない。


さて。ドラゴンとは言うものの冠に何もついてない、ダンジョン内なので空も飛べないとなるとただの大きなトカゲである。あと伝承で60階のボスはグレータードラゴンとの情報は古本屋で得たので40階のここはサクッと倒したい。


念入りに準備をした方が良いと判断したため、素材は全部売却し切ってダンジョンの深層で獲得できると言われているアーティファクトの類を買い集めた。今いる街のダンジョンは40階でも深層判定にならないけど、他のダンジョンなら30階が最下層とかもあるから実入りはそっちの方が良いんだろうな。


アーティファクトの類は、魔力量を増やす籠手や移動速度を上げる靴などが比較的安値であったので、籠手はルーとローに、靴はムーとハルにそれぞれ買い与えた。……靴1足で500万円は価格狂ってるよな。その分効果凄いけど。籠手は防御力も上がるし赤と青でルーとローの色とお揃いだったから似合っている。


万全の体勢で39階を突破し、40階に到達した直後。雄叫びを挙げた大きなドラゴンに対し、スーが先制の光線を放つ。


……この先制の光線で、全身が蜂の巣状態となったドラゴンは地に伏し息絶えた。いやせっかくあれだけ準備したのに決着1秒かい。Bランクのドラゴンと聞いていたし、もうちょっと歯応えあると思ったのに。


ドラゴンを倒した後は、解体タイム。心臓含む内臓まで美味しく頂けるそうなので持ち帰ると高値で売れるらしいし、ドラゴンの鱗や爪は結構硬いのでこれも素材として売れるだろう。


で、解体したドラゴンをいつもと同じようにギルドマスターの受付で売却すると頭抱えてるけどそもそもこの数日間、39階で大量に魔物を狩っていたんだからこうなるのは必然でしょ。


「……Aランク冒険者は一度国王か貴族と対面する決まりがあるのだが」

「そういう義務は全部放棄するってCランクに上がる際に言いませんでしたっけ?だからAランク冒険者になっても扱いはDランク冒険者のままで良いですよ。まだ全然強くなってないですし」

「通じるかぁ!これ断ったりしたら貴族達に睨まれるんだぞ!?その意味が分かっているのか!?」

「え、それで貴族達が怒ったとして自分に何か出来ます?」

「……何も出来ないんだよなあ。ドラゴン討伐した時点でもう国内で相対出来るパーティーは数パーティーしかないし」


Aランク冒険者になると、扱いとしてはもう国の宝らしい。……ダンジョンは40階でまた新たなワープポイントが増えたことから、恐らく100階まではあると仮定すると、まだ半分もクリア出来ていないのにもうそんな扱い受けるのか。


そして貴族に会う、会わないのやりとりをしていると例の王子様と姫様と奴隷の3人パーティーがこちらをジーと見ている。ヤバイ目を付けられた。


「ねえちょっと」

「あ、お金は明日受け取るので今日は一旦帰りますお疲れ様でした」

「おうお疲れ。明日覚悟しとけ。

で、姫さんは何かようか?」


近くで見るとわりと小さかった姫に声をかけられそうになったので一旦帰宅。後ろから「待ちなさいよ!」みたいな声が聞こえた気がするがハルに掴まってそのまま飛んで帰る。残りの魔物達もルーとロー、ムーが飛べるので分担して運べば一気に飛んで帰れるのは便利。後は付けられていないみたいだし、もう数日は回避してダンジョンの40階以降でレベリングしておこう。


「行っちゃった。……ねえ、あいつ40階突破したってことは相当な実力者よね?」

「少なくともこのダンジョンで40階を突破すればAランク冒険者としての資格を与えられるから、Aランク冒険者相当の実力があることは確かだな。一部からは魔王とすら呼ばれてる」

「……あれだけ強力な魔物を従えているのにも関わらず、本人は弱そうだったわよ?」

「テイマーで魔物よりも本人が弱いのは別に珍しいことじゃないが……あれだけ強い魔物達が指示にちゃんと従っているのは不思議だな」

「ところであいつの名前って何?この街にAランク冒険者なんていないって前に説明受けたんだけど」

「すまない。それは言えない契約だ」

「……は?」

「ついでに言うと、俺はある程度あの魔物達が従っている理由を把握しているが、それも言えない契約になっている。……先月15階を突破してCランクに上げる際、色々と条件足されたんだよ」


その後、冒険者ギルドのマスターと姫さんの会話で、ギルマス側が情報ポロリをやっていないことは把握出来たので満足。いや冒険者ギルドの下水道に潜伏していたスライムがスライチに報告して、スライチからスーに報告があって、スーから再現された会話だから正確性には欠けるが、先月15階を突破したばかり、以外の情報を出さなかったのは自分のことをよく分かってる。明日お礼を言っておこう。

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