第14話 現代人は立地だけで住む場所を決める
色々と情報収集をしたくなったので、久々にダンジョンへは行かず、古本屋へ向かう。魔物達が勢揃いして街中を歩くと非常に目立つため、今隣にいるのはルーとローだけである。一番人間に近いというか、外見上目立たないのがこの2人。護衛の騎士みたいだ。残りは見た目で人外なので自宅待機。
最近こじんまりとした家を買ったけど、冒険者ギルドとダンジョンの中間地点という神立地なのでわりとお高めだった。周囲の家が大きいから、比較するとこじんまりという言葉がピッタリの物件であるけど、個人的には気に入っている。
まあ今までの稼ぎプレイでかなりお金は貯まっていたからちょうど良かった。この先、魔物が増えたらここでお留守番して貰えば良いし。買い取らせなかった素材とかも自宅に保管すれば鞄の容量が確保できる。
これから魔物が大型化する可能性もあるから大きい家の方が良かった可能性もあるけど……大きい家を買おうとすると基本的には郊外になるから盗賊とかに襲われる可能性も上がるし一長一短。まあ異世界基準でこじんまりとしているだけで、日本基準だと十分に大きいから満足だ。恐らく敷地面積だけで30坪ぐらいはある。庭もあるからたぶん日本の田舎の一般家庭ぐらいのサイズ。
さて。異世界で調べものをしようという時、大抵の小説では図書館みたいな場所へ行っていたけどそんな便利な施設はこの世界になかったため古本屋へ行くことになる。本が無料で読めるって、一定水準の文化と文明がないと難しいから仕方ない。為政者にもよるだろうしね。
一応、活版印刷の元みたいな技術はあるみたいだけど本の大量生産にまでは至ってない感じ。紙は大量生産出来てそうだけど、単価はまだ高そう。読むついでに写本する人がいて、そういう人が古本屋に持ち込んで売っているからそれを買うことになる。
一冊当たりの値段はそれなりにお高い上、内容がスッカスカだから騙されている感じしかしないけど歴史書や郷土料理を纏めた本とか色々と買ってみた結果、とりあえずこの世界には世界地図がないことを把握。何なら自国の地図すらないよ。周囲の大雑把な地図すら貴重。まあ地図の作製も、測量の技術がないと難しいしお金のかかることだからない方が自然か。
今いるこの街から見て北西方向に王都、西と北に大きな都市があり、自分が最初に目覚めた街は北東の位置。ここまでが同一勢力圏というか1つの国だけど、この街自体がある程度の自治権を持っているみたい。そして実質トップの1人はあの冒険者ギルドのマスターである。まあダンジョン産業が中心である以上、そうなるのか。
あと東と南東と南方向には別の国があることまでは分かったけど、具体的な地図がないと何も頭に入って来ないし分からない。自分で作るしかないかこれ。
で、あの王子は南東方向にある小国出身で、南の帝国と東の帝国に挟み撃ちにされたようだけど……この国も普通に不味そうな気配はある。かなり大きな国みたいだけど、東と南と、北西方向にある王都の更に西には別の国があるみたいだし、3か国に囲まれている国って不味くないか?
ヨーロッパで例えるならこの国はドイツの位置が近そうだ。あの王子の国がオーストリアで、ポーランド付近とイタリア付近に大きな国があって、西にフランス。北は海っぽいし大きく間違ってはないはず。
となるとこの街は国境付近の街だし大事な要所のはずなのに軍が駐留していることはない。ダンジョンしか産業がない街って需要がないのだろうか。一応、各国の至る所にダンジョンがあって、この街のダンジョンは美味しい特色がないからダンジョン産業がある街としても微妙なようだけど。敵も他のダンジョンよりかは強いらしいし、割に合わないとか何とか。
……だからまあ、ストーリーの起点としては持って来いの街ではある。恐らく戦略SLGだと仮定して、ダンジョンはおまけ要素。魔物娘が多いのは美少女ゲー路線だったのだろう。大体この世界が見えて来た気はする。
周囲には3つの国があるわけだし、あの王子がここで国を興してルート選択で3つの国から寄生先を選んでねって感じか。じゃあこの街に家買ったの完全に裏目じゃんこれ。そもそも戦争とかが起きたら逃げる前提なのに家を衝動買いしている自分が馬鹿なんだけど。
今日はこれぐらいにしておくかと帰りに露店で晩飯として鰐肉とウルフ肉を買っていると、例の王子と姫を見かけるけどその隣に奴隷少女もいたから早速仲間が増えている。この後はダンジョンへ行って、お金を稼いで初期資金にするのかな。
恐らく、こちらの魔物達が全力で襲い掛かれば全員瞬殺出来る実力差ではあると思う。自分はこのゲームのストーリーを知らないが、ここでばっさり根本から斬り捨ててしまうというのは1つの選択肢だ。仮にあの王子が大陸を統一する系主人公だった場合、万の血がこれから流れるだろうし……。
……やめとくか。同郷の可能性すらある、真っ当な人を無条件で殺せるほど人間は辞めてないし、あの王子がここで消えたせいで世界滅んだりしたら嫌だし。とりあえずは今まで通り魔物達を育てて、ダンジョンを攻略していくか。
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