第12話 現代人は義務を嫌う

Cランクに到達してもDランク相当の扱いを受けいれれば義務は発生しないようなのでダンジョンはサクサク攻略し、20階層に到着。20階層のボスはリッチーで、今までにダンジョンで倒した敵を復活させられて戦うことになるそうなので1つの区切りだろう。


その20階の前にハルがハーピィからハルピュイアに進化。いやそれ変わったの名前だけで本質的には同じじゃないのか……?ただこの進化で、ハルが風属性魔法を使えるようになったため、魔力の多さが生きて来る。あと片言だけど喋るようになったので意思疎通は出来るようになったのが大きい。相変わらず陣形を覚えてくれないアホの子だけど、空飛んでるだけで良いや。


【ステータス】

名前:ハル

種族:ハルピュイア(C)

レベル:1

魔力:138/150


ハルが風属性魔法を使えるようになったことで、スネーク君が土属性魔法で砂を生み出し、ハルがそれを風で吹き飛ばすという外道戦法が完成した。眼がある魔物であればほぼ確実に怯む初見殺しである。しかもこれ、広範囲に出来るから対複数戦で特に生きる。


19階は赤色や青色など、色とりどりの犬みたいな魔物が沢山出て来たが、目潰し戦法が確立されたことにより絶好の狩場と化した。スネーク君とハルの目潰しにより、相手が怯んだところにスーとムーとローとルーが魔法をぶち込む単純作業となったからだ。全員の魔法の属性がバラバラなので、きちんと弱点を付ける感じなのは素晴らしい。


……犬の魔物は、素早いのが厄介だったんだけど目潰しを受けて狼狽えるような状況になれば耐久力というか防御力が低い分、簡単に殺すことが出来た。しかもこの犬の魔物は、非常に高値で肉が売れるのでお金にはもう困らないだろうね。


ハルやスネーク君にもキッチリとした防御力のありそうな装備を買ったし、全員に魔法の威力が上がるという宝玉の指輪を持たせている。全員が結構な容量のあるバッグを担いでいるので回収出来る素材の量も多い。中の空間が歪んでいて見た目以上に物が入るこのバッグが正直一番高かった。


ということでサクッと20階を突破しようとしたらとてつもない数のゾンビ軍団が襲って来る。今まで倒して来た魔物の数に比例して出て来るゾンビ魔物が増えるとは聞いていたけど、津波のように押し寄せて来るのは想定外。


奥にいるリッチーまで射線が通らないほどの数が出て来るとは思わなかったし、想定外ではあるけど予定通り砂風での目潰しから入り、何故か目潰しが効いているのでムーがゾンビ軍団の上空を自由に飛ぶ。


エンプーサになったことで、ちょっとした重量物も運べるようになったムーは、今回のために購入した大量の油をまき散らしながら飛んでいる。あと砂風に巻き込まれないよう、対策としてゴーグルのようなものを購入。最悪、目を覆える眼鏡のようなものを作ろうと思っていたのだけど、既にあったのは助かった。


ゾンビ魔物は火に弱いらしいのでムーが油をかけた後はローが巨大な炎を飛ばし、大爆発を起こす。若干ダンジョン自体が揺れた気がするけど、穴が空いて下の階層に行けるということはなかった。


ゾンビ軍団は基本的にローが処理し、残ったリッチーに対してはスーが光の槍を飛ばして串刺しにする。恐らく相性が良ければ2倍ぐらいのダメージを食らってくれるので、リッチーに射線が通るようになってからは一瞬で片が付いた。


むしろ問題は残ったゾンビ軍団の処理だったけど、パーティー全員何らかの魔法を使えるというのは大きく、自分はスネーク君の尻尾の上でボーっとしているだけで終わった。まあゾンビの動き遅いし良い的だったね。今回の戦闘ではセイントスライムのスーがレベル10に到達し、大量にある進化先の中にホワイトスライムガールを発見したのでそれを選択。魔物娘への進化なのに今回は素材が必要なかったな?


発光し、気付けば人型を取っているスーは全身が白い。まあ魔物娘の中では定番と言っても良いぐらいスライム娘って有名だからあるのは疑わなかったけど、実際に粘液で出来た女性というのは不思議な存在だ。


触り心地はどこもゼリーのようで、ちょっと力を入れると途端に粘液となる。あと発声器官はないようで、まだ喋れない。Cランクの魔物になって、唯一喋れない魔物がスーになるな。まあ粘液で自由自在な存在だから発声器官の仕組みを教えたら喋るようになる気はする。普通にこちらからの指示を理解してくれてる以上、知能は高いからな。


これでラミアのスネーク君以外はCランクの魔物になったし、パーティー的には既にこの世界の上位クラスの戦闘力になりそうだ。まあまだまだ負けそうな存在はこの世界に一杯いるし、自身の安心のため、もっと強くしていこう。


20階層を突破し、21階へと向かおうとすると、途中で魔法陣があることに気付く。どうやらテレポート機能のある魔法陣のようで、次回からはここからダンジョンを潜っていくことが出来そうだ。


……もうこれ完全にゲームの世界なんだなと理解はしたけど、20階で1つ目のワープポイントが出来るということは恐らく最下層は地下100階か200階か。流石に1000まであるとは思わないが、先は相当長そうだということを認識しておこう。


「20層突破しました。これリッチーの杖です」

「……冒険者になったのはいつだ?」

「4ヵ月近く前ですかね?」

「Bランク最速昇格おめでとう。今までの最速記録は半年だ」


この世界に来て100日程度でこのペースは、まあ異常なんだろうな。経験値が2倍とか3倍とかになっているのだろうか?それともこの世界の人は、徹底的に初見殺しで殺戮して回る稼ぎ行為をしないのだろうか。

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