０５１６５７５７７ 第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌部門

五胡十六国二十片

金徳（きんとく）の四海（しかい）充（み）ちたる中（なか）つ国（くに）

永久（とわ）の安寧（あんねい）画餅（がへい）とすまじ

馬（うま）が妻（つま）他馬（たば）を殺（ころ）してのさばりて

安（やす）き玉座（ぎょくざ）に駄馬（だば）らを集（あつ）め

馬喧嘩（うまげんか）他所（よそ）の馬飼（うまか）いあざ笑（わら）い

牧場（まきば）に放（はな）つ飢（う）えた飼（か）い犬（いぬ）

牧場（まきば）燃（も）え惑（まど）う馬（うま）らを射殺（いころ）さば

馬飼（うまか）いどもで肉（にく）を取（と）り合（あ）い

われ先（さき）と川（かわ）を泳（およ）ぎて逃（に）げた馬（うま）

ぬくき彼（か）の地（ち）で猿（さる）に担（かつ）がれ

残（のこ）されし子馬（こうま）も犬（いぬ）に囲（かこ）まれて

逃（に）ぐらば哀（あわ）れ鳶（とび）の懐（ふところ）

馬飼（うまか）いの喉（のど）噛（か）みちぎる猛（たけ）き犬（いぬ）

川（かわ）の向（む）こうを睨（にら）み唸（うな）りて

北（きた）の鷹（たか）犬（いぬ）に迫（せま）られ仲違（なかたが）い

二羽（にわ）で争（あらそ）い犬（いぬ）に嗤（わら）われ

犬（いぬ）恨（うら）む馬（うま）と鳶（とび）とが居並（いなら）べば

犬（いぬ）を狸（たぬき）が謀（はか）りて殺（ころ）す

西（にし）の虎（とら）犬（いぬ）のいぬ間（ま）に大欠伸（おおあくび）

巣穴（すあな）整（ととの）え肉（にく）をば食（く）らう

鳶（とび）飛（と）びて狸（たぬき）をさらい食（く）い殺（ころ）し

呆（ほう）ける馬（うま）に糞（くそ）を投（な）げつけ

かしましき馬（うま）と鳶（とび）との大喧嘩（おおげんか）

のそりのそりと虎（とら）が近（ちか）づき

虎（とら）は巣（す）に鳶（とび）と鷹（たか）とを連（つ）れ帰（かえ）り

馬狩（うまが）りが勢子（せこ）求（もと）めて迫（せま）る

渓流（けいりゅう）に足（あし）を取（と）られて転（ころ）ぶ虎（とら）

馬（うま）は踏（ふ）みつけ鳶（とび）は飛（と）び去り

鳶（とび）がもと狩（か）りを教（おそ）わる若（わか）き鷹（たか）

狙（ねら）うはエサかあるいは鳶（とび）か

喚（わめ）く猿（さる）患（わずら）う馬（うま）は蛇（へび）を飼（か）い

毒（どく）の強（つよ）さを無邪気（むじゃき）に祝（いわ）う

老（お）いた鳶（とび）鷹（たか）に打（う）たれて打（う）ち返（かえ）し

傷（きず）は残（のこ）せど力尽（ちからつ）き墜（お）つ

墜（お）つ鳶（とび）を蛇（へび）が見届（みとど）けにじり寄（よ）り

鳶（とび）は気付（きづ）けば蛇（へび）の胃（い）の中（なか）

馬（うま）がもと肥（こ）えて太（ふと）れる黒（くろ）き蛇（へび）

天（てん）に届（とど）かば馬（うま）を丸呑（まるの）む

おぞましき蛇（へび）を睨（にら）みて鷹（たか）は飛（と）ぶ

食（く）うや食（く）わるや天（てん）から地（ち）から