第24話 京都奈良全力ふたり旅3日目―平等院


 3日目の朝、荷物をまとめてホテルをチェックアウトし、そのまま地下鉄で京都駅まで行く。さすがに荷物を持ち歩くのは重いので大きなコインロッカーに荷物を預け、JR奈良線に乗り、宇治駅を目指した。


 電車は少し早めにホームに着いており、京都駅始発のため非常に空いていた。適当なところに座り、発車を待つ。


 発車まぎわ。外国人ツアー客で車内はぎゅうぎゅうになってしまった。みなさんどこへ行くのだろうか。


 外国人3人組が座ってたボックス席がひとつ空き、そこにひとり旅とおぼしき外国人が座った。4人はすぐに仲良く話し始める。見たところ、国籍は全員違う感じなのだが言葉さえ通じればすぐに仲良くなれる。外国人って、柔軟で良いなぁ……。


 日本人は言葉通じたって知らない人にはむやみに声掛けないもんね。逆に変なやつ扱いされちゃう。


 外国人の団体さんは伏見で降りていき、そこから先はまたガラガラの電車に揺られて宇治駅に降り立つ。


 この日は残念ながら結構雨が強くて、折り畳み傘だと少々心もとない。あらかじめ雨の予報が出ていたので靴は防水のものを履いていたが、それでも15分ほど駅から歩くと心配になるくらいには降っている。


 参道の商店街を歩いていると、突然漂ってくる良いお茶の香り。自然と意識がそちらへ引き寄せられた。


 宇治なのでお茶屋さんは有名なところも含めて何軒も軒を連ねていたが、そこのお茶屋さんが抜群に良かった! 帰り絶対寄ろう。ここのお茶は絶対美味いよ!


 お茶屋さんから程なくして平等院の入り口にたどり着く。拝観券を購入し、表門から中へ。この日は雨だから、緑の葉っぱが雨に濡れてぽろぽろ雫が零れ落ちる。これもまた風情があって良い。


 服もリュックも濡れるけど、なぜか京都の雨は許せるんだよなぁ。普段はあんなに憂鬱で仕方ないのに。


 濡れた砂利を踏み締め、ほんの少し。鳳凰堂の建つ池が目の前に広がる。思ったよりも広い池で、端の方には睡蓮が花開いていた。


 わぁ、10円玉の建物だー。


 鳳凰堂は真正面から見ると、中に設置された御本尊の顔が、ちょうど丸形の窓から見えるように設計されている。ただ池が結構大きいので、距離がある。


 ふと見ると、池に沿って行列ができていた。この行列は鳳凰堂の中に入るための行列で、中に入るためには池のほとりにある小屋で別途入場料を支払い、指定された時間に並ぶと中に入れるようになっている。


 早速入場料を支払うと、今待機している行列の次の時間帯に入場できることになった。30分ほど外で待たねばならないため、先に御朱印をもらう。


 御朱印所は東大寺と同じく窓口が4つあり、雨のためか並んでる人もいなかったのですぐにいただけた。


 そのあとは大きな木の下で待つ。いっぱいに茂った葉っぱのお陰で雨粒もそれほど落ちてこない。


 列に並ぶ時間が来た。40人ほどの団体となって堂内へ向かう。ガイドさんがひとり付き、説明をしてくれるのだが、狭いながらも見どころがたくさんあって驚愕した。


 御本尊の阿弥陀如来座像はとても大きくて、見上げないとお顔が見えない。けれども黄金色に輝いていて、こんなこと言ったらあれだけど、とても好きなお顔だ。


 御本尊の周囲の壁には、雲に乗った仏さまの像がいくつも空を舞うように括り付けられていて、その多くが楽器を持っている。全部で52体あるそうだが、半分ほどは境内の資料館で展示されてるので、間近で観られるようだ。


 壁には復元されたものであるが絵がびっしり描かれており、堂内はとても華やかな印象を受けた。


 説明を聞きながら、ふとある一点が気になり出す。阿弥陀如来さまの頭上に大きな天蓋てんがいがあったのだが、その内部がキラキラ輝いて見えたのだ。


 光り物に目がない私。限られた自然光の中、じっと目を凝らす……。もしかして螺鈿らでんだろうか。というか螺鈿にしか見えない。貝殻の内側の虹色に光るアレ。


 後で調べたらやっぱり螺鈿だった! 長い時を経て、様々な色は失われてしまっても螺鈿の輝きは残るのだなぁ……胸アツ。


 一通りの説明を受けたら、また集団で退出、次のグループと入れ替わる。私たちはそのまま資料館に向かうことにした。


 資料館は比較的新しいのか近代的なデザインの建物で、中もおしゃれ。早速展示物を観て回る。


 屋根の上に載ってた鳳凰も近くで観ることができた。一万円札に描かれてる鳳凰も、平等院の国宝のひとつなのである。


 そして雲に乗った仏さまたち。1体1体目の高さのガラスケースに入った状態で展示されており、背面までじっくり観賞できる。雲中供養菩薩像、というらしい。顔も、持っている物も全部違うので、きっとお気に入りの仏像さまが見つかるだろう。


 資料館を出ると別の入り口でもある南門の方に出た。危なくそこから出ようとしてしまったが、どこに出るか分からないので表門まで戻った。


 すごく良かった平等院! ほんとはこのまま歩いて宇治神社にも寄りたかったが、雨なのと、別に寄りたいところがまだあるので今回はパス。


 とりあえず参道のお蕎麦屋さんで早めのお昼を食べ、「かんばやし」というお茶屋さんに寄って宇治茶とほうじ茶を買った。


 めちゃくちゃ美味しかった、お茶。また行ったら買おっと。

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