第32話 もうすぐ定期試験がやってくる

「色々買ったね~」


 その後、朋恵は同じ階にある百円ショップに立ち寄ってヘアアクセサリーなどを買っていた。

 朋恵の懐具合が大丈夫か、それだけが気になる。何せ、手に持っているレジ袋はどう見ても千円くらい買い物している……よな。


「ねえ、お昼はドコにする?」

「私は……、そうだな、三階に戻ってこないだオープンしたばかりの定食屋でバイキングにしたいな」

「アタシは一階ここのコーヒーショップが良いかな~。ねぇ、ヤスはどこでお昼にしたい?」

「う~ん、僕はだな……」


 いつも家族でここに来たときはうどん屋かラーメン屋に行くんだけど、どちらもデートには不向きだろう。

 とはいえ、愛未の定食屋も気になるけれど……、ここは朋恵の提案に乗ろう。


「一階のコーヒーショップで」

「でしょ? じゃあ決まりね!」

「やれやれ、トモとヤス君がそう決めたなら仕方が無いな」


 愛未はちょっと残念そうな顔をしていたけど、ここは手頃な店で良いだろう。

 そうと決まった途端、僕らはエスカレーターの方向に向かった。

 それにしても、愛未って何故ファーストフードよりも定食屋が好みなんだろうか?


「さっきのことだけど、どうして定食屋にしようと思ったんだ?」

「ああ、その事か? あそこのバイキングコースは時間限定だけど600円で選り取り見取りじゃないか。どうせなら、安くて美味いものが食べたいと思ってね」

「マナって、ファーストフードを食べないのかな?」

「いや、たまには食べたいけど、普段から食べるようなモノじゃないだろ? それならば時間限定のバイキングをだなぁ……」

「おーおー、赤くなっちゃって~」


 イケメン女性の愛未がここまで顔を真っ赤にして食ってかかるのも珍しい。

 やっぱり彼女も可愛いところがあるんだな。


 ◇


 コーヒーショップはお昼時ということもあって、店内には買い物帰りの人でにぎわっていた。

 僕はカフェラテとホットドッグを、他の二人もそれぞれサンドイッチにカフェラテなどを注文してテーブルに座ると、今日の買い物の話になると思いきや――。


「もうすぐ定期試験か~。あっという間だね」

「そうだね。私は前回はちょっと順位を落としたから、もう少し頑張ろうかな」

「僕はギリギリ五十位以内だったから、もう少し上を狙いたいな」


 いつの間にか、もうすぐやってくる定期試験の話になっていた。

 市内の高校では二年生だけ別日程で後期の中間試験を行うところがあるが、僕たちが通う学校では全学年が同じ日程で行われる。


 桃花先輩達の話によると、修学旅行中の期間は凄く静かで他の部の生徒がわざわざe-Sports愛好会の部室に遊びに来ることが多かったそうだ。

 それはそれで楽しみではあるけど、試験期間を含めて部活は二週間近く休みになるし、国分先輩達とも会えなくなる。

 那須君は隣のクラスだから会おうと思えば会えるし、藤島さんは同じクラスだから機会を伺って話しかけられるから別に良いけど。

 ただ、藤島さんの学業成績が心配だな。


 すると、僕の左脇の席に座っている朋恵がつまらなそうな顔をしていた。


「ふーん、ヤスって結構真面目なんだね。e-Sports愛好会に入ってゲームばっかりやっているものだと思っていたよ」

「いや、勉強だってちゃんとやっているよ。今までは勉強ばかりに偏っていたから、これからは勉強と部活をバランスよくやっていこうかなって」

「そうだな。その方が君にふさわしいよ」


 朋恵とは対照的に、僕の右脇に居る愛未は話を真面目に聞いていた。

 愛未からは優等生のオーラが漂っているなぁ。一方の朋恵も九月の試験はそこそこいい方だったので、もうちょっと頑張ればなぁ。


 肝心の試験期間中だけど、今回も一人で勉強……、はしたくないな。

 何せ、ここ一ヶ月で同じ部活や同じクラスの知り合いが出来たんだから。


「……ただ、一緒に勉強するとなるとちょっと困ったことがあってね」

「どうしたんだ、ヤス?」

「うちの学校って、太白区外から通っている生徒が多いのは知っている?」

「そうだね~。チア部でも隣の区から来ている生徒が居るもんね」

「うちの部に居る那須君は多賀城に住んでいて、部長達に至っては名取に住んでいるんだ。橋本はこないだ一緒に部活に行った時に南仙台に住んでいると聞いたからね」

南仙台そっちだったら別に大丈夫じゃない? ほら、南仙台って七丁目北から乗れば二十分で着くからね」


 銀行の駐車場近くからだと、十分に行けるじゃないか。後で橋本にどこに住んでいるか聞いてみよう。


「ありがとう、朋恵」

「どういたしまして♡ お礼はスタバで良いからね」

「こら、トモ! ヤスにたかるんじゃない!」

「冗談だって、マナ。ムキにならないでよ」

「全く、調子に乗るとすぐこれだからな」


 朋恵と愛未のやり取りを見ていると、二人とも仲が好くて、付き合いが長そうだなと思ってしまう。

 僕の場合は付き合いが長い友達は山形に居るし、その友達とは引っ越ししてからは連絡を取っていない。

 彼女と付き合うようになって失われた二年半を取り戻すためにも、e-Sports愛好会の先輩達やこないだ知り合ったばかりの橋本、そして家がご近所同士の朋恵達とも親しくなれたらなぁ。


 その後、当初の目的だったカラオケに行こうと朋恵が提案したら、愛未から「テストが終わってからにしよう」と却下された。

 そりゃそうだろう。もう定期テストまで二週間を切っているんだから、ここで勉強しなければ後々後悔するばかりだ。

 橋本の家もわかったことだし、一緒に勉強できればそうしたい。

 目指すはクラスで五位以内だけど……、大丈夫か?

――――――――――――――――

 面白かったと思った人が居たら、是非♡、☆、応援コメント、レビューをよろしくお願いします。

 ていうか、そろそろ☆と応援コメント、レビューが欲しいです。


【あとがき】

 デートの回はおしまいです。しんどかった……。

 何気に伏線が出ていますが、気にしないでください。

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