第04話 ギャルとイケメン女子との下校タイム
保健室の扉を開けると、高木先生が言った通りに我妻さんと飯田さんが並んで待ち構えていた。
「ヤス君、大丈夫?」
「もう歩いて大丈夫なのか、君」
飯田さんは僕よりも前の席に居たんだけど、彼女の姿をまじまじと見たのはこれがはじめてだった。
我妻さんとほぼ同じ大きさの胸が目立つ、ウエストは引き締まっている。
そして腰から太腿のラインが実に見事なものとなっている。
肩にかかるかかからないか微妙な長さの髪はやけにふわりとしていて、吸い込まれそうな瞳はどこか冷静で、どこか物憂げな雰囲気を漂わせている。
身長は女性にしては身長が高めで、170センチメートル有るか無いかだろう。ギャルっぽい我妻さんとは違って大人の魅力がある。
これで僕と同い年なのは信じられない。
「うん、大したことはありませんでした」
「良かった、いきなり倒れたからびっくりしたよ」
本当は目を覚ますまで一時間近くかかったんだけど、心配させたくないので我妻さんに気を遣って平然を装った。
我妻さんは胸を撫で下ろして、安心した顔をしていた。
本当に申し訳ない、我妻さん。ちょっと死ぬかと思ったよ。
「それと僕の鞄は……?」
「君が倒れた後で私が預かったんだ。受け取ってくれ」
飯田さんは自分の鞄を廊下に置くと、僕に鞄を差し出してくれた。
右手にはスポーツバッグと左手には鞄を二つを持っていて、体育館からここまで持ってくるのは大変だったんだろうな。
「ありがとうございます」
僕は飯田さんから鞄を受け取ると、二人に向かって頭を下げた。
「気にするな、君と私は同じクラスじゃないか」
飯田さんがそう言って、僕の頭を軽く撫でた。
ちょっと見た感じでは、飯田さんは無口で怖そうだけど、意外と優しいんだな。
「ねえ、さっき『中学校の時に……』って話した後に倒れたじゃない。何て言おうとしたのか教えてよ」
我妻さんが僕に尋ねようとすると、腕時計を見た飯田さんが制止した。
「トモ、その話をするのは良いけど、ここは廊下だぞ。誰かに聞かれると不味いことになる」
「そうだね。まずは昇降口へ行こっか」
僕の話は流石にここでは言えそうにないな。
僕達は我妻さんに促されるようにして、昇降口に向かった。
◇
昇降口は保健室から歩いてすぐだ。
これから冬のサッカー大会に向けて練習を重ねるであろうサッカー部やオフシーズンに入った野球部、陸上の選手たちやは外で練習するため、この時間にここに立ち寄ることはまずないだろう。
靴箱の前に着くと、上履きを脱いで自分のローファーを取り出して履いた。
「練習、案外早く終わっちゃったね。もうちょっとやりたかったなぁ~」
「部長が私達の様子を見て顧問の先生と相談したお陰だな」
「ただ、先輩達には申し訳ないことをしちゃったね。明日謝っておこうかなぁ」
「その必要は無いさ。先輩達もわかっていると思うよ」
靴を履き替えている間、二人は部活のことをちらほらと話をしていた。
僕のせいで練習が早く終わったのは、流石に申し訳なく感じた。
話を聞いているうちに、飯田さんの視線が僕に向いていた。
飯田さん、何考えているんだろう? と思った途端、ふと飯田さんと目が合った。
すると、飯田さんは僕の顔を見るなり僕に語りかけた。
「富樫君……だったかな? 突然ですまないが、君はどこに住んでいるんだ?」
「カラオケ屋の裏にあるマンションですね」
「アタシはそこの北にあるマンションの一階だよ。歩いてすぐの
「私は裏に公園があるマンションだな。折角の機会だ、富樫君の家にお邪魔してもいいかな?」
「えっ? だって僕達は今日出会ったばかりだし……」
「別に構わないよね? だってアタシ達、同じクラスなんだし」
「君のことについて色々と訊きたいことがあるんだ。袖振り合うも他生の縁ということで、どうかな?」
参ったな。
五月の席替えで隣の席になってからは毎日騒がしくしている我妻さんはともかくとして、飯田さんも一緒になるなんて。
しかも、彼女達がほとんど近くに住んでいるのは意外だった。
良く考えてみれば、僕は予鈴五分前に教室に入ることが多いから接点が無いのも無理はないな。
僕は母さんに「女の子の友達を連れてくる」とメッセージを入れた。
すると、すぐ既読がついて「ホント?」との返信が来た。
しかも「心美ちゃんなの?」と来たけど、母さん、昨日心美とは別れた……って、話していなかった。
家に帰ったら母さんに話しておくか。
……いや、コトがコトだし、止めておこう。
――――――――――――――――
【あとがき】
仲良く帰った後には、何が待ち構えているのでしょうか?
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