第163話 製法登録
「皆で商業ギルドに製法を登録して、ギルドランクを上げたほうがいいんじゃないかな。そうしたら他の店も開けるじゃん?」
「何か製法を持ってたらね。別に瑛太がオーナーで雇われ店長とかでも困らないよ。」
圭の資料からの色々な物の製法を、他のメンバーからも登録したらいいんじゃないかと提案してみたけど、藍ちゃんにやんわりと否定された。
「圭君が書き遺してくれた製法だから大事にしたいんでしょ。」
「そうだけど、さ。」
「それなら、他の人に振る舞うみたいなのは違うんじゃない?」
「‥‥そうか‥‥。」
「私も何か登録するものを思いついたら登録するよ。洋服のデザインとか。」
「おお、いいね。まだ登録しないの?」
「自分で納得いったのを作ってからだもん。」
衣類に使われている素材は麻がほとんどで、藍ちゃんが思い描くような服はまだ作れないんだそうだ。
「あー、じゃあ、エプロンとかどう?使いやすそうなのを作ったら皆も使えるし。」
「あ、いいかも!」
街で見かけたパン屋や飲食店の店員さんの服装は、強いて言えば割烹着的な感じで、一回り大きい服を上から着るというのが主流だった。
すぐ脱ぎ来できて大きなポケットなどがついているエプロンは実用的なので売れそうだ。
嬉しそうに顔を輝かせた藍ちゃんだったが、すぐにちょっと申し訳なさそうにした。
「‥‥でも、今のアイデアも瑛太からだよね。」
「俺は物の種類を言ってみただけだろ。詳細は藍ちゃんがこの国の素材とかを考慮して考えたらいいんじゃない?」
「そっか。そうだね!ようし!」
藍ちゃんが小さくガッツポーズを取った。可愛い。
パン屋開業準備の予定していた作業を終えて今日の分の屋敷向けのパンを焼いたら、夜にパン捏ねをするまでは自由時間。
各自好きな事をする。
村の人はすでに顔見知りなので、日中は一人で外を出歩いても大丈夫なのは、この村の利点な気がする。
村が発展してきたらそうも行かなくなるかもしれないけどね。治安の良い街になるといいなぁ。
自由時間に俺は一人で畑に来ていた。
まだ畑と呼べそうな部分はほんの一部分なんだけど、それも土を少し掘り起こしただけだ。
魔法の練習も兼ねて、更に少し範囲を広げて耕した。
ここにマスタードの種を植えてみようと思いついたのだ。
圭の異世界ガイドノートを取り出して立ったままパラパラとめくった。
「春撒きと秋撒き? 葉っぱを食べるなら秋撒きがいい? うーん‥‥。」
ガイドノートにマスタードの栽培方法は書かれていた。秋撒きの方が葉っぱを食べれるらしいけど、今は春なんだよな。
春撒きは種を取るのによいというならマスタードが作れるかな。
とりあえず、一部を種まきすることにした。
黄色い丸い種と黒い丸い種。大きさは胡麻より少し小さいくらいか?
「そういえば、この国、胡麻とかはあるのかな?」
異世界ガイドノートで種の撒き方を確認し、種撒きに必要な手順だけを頭に入れて,一旦ガイドノートを鞄に戻す。
ザラリ
うん?
なんかこの感じ、既視感があるぞ。
手の中に入って来たものを引っ張りだすと、「白胡麻の種」と書かれたパッケージが出て来た。あ、重なってもう一つ「黒胡麻の種」。
「‥‥。」
『胡麻は煎ったりして食べたり色々できるけど、油が絞れるよ!あ、油だったら菜種もいいかもね。』
パッケージの裏にメモが張り付いていた。
圭、いつも思うんだけど、これって誰宛のメッセージだったのかな。
「菜種もって‥‥。」
とりあえず一旦ごまの種をしまおうとして鞄にいれた。
ザラリ
あ!
菜種のパッケージが出てきました!俺に油を絞らせたいのか?
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