第122話 省略的な入学式

「何?何で急に泣いてんのよ!」

「だって‥‥僕にお知らせ来てないよ‥‥。ご入学できなくなっちゃったかも‥‥。」


僕の目からポロポロと何か出て来た。ラピスお姉ちゃんが呆れた様子で僕の顔を覗きこんだ。両手を腰に当てて、ちょっと怒った様に眉を吊り上げている。


「だから私が知らせに来たんでしょ! 天力不足だとかで、一部のシステムが動かなくなってるんですって。だから、一部の天フォンにお知らせが届いていないって話よ。」

「僕の天フォンにも?」

「そうよ。連絡来ていないケースが多いみたいで、私達在校生が手分けしてお知らせに回っているの。早く行きなさい。」

「やったーー!!良かったーー!!」


僕は嬉しくなってぴょんぴょんと雲の上で撥ねた。また、ズボッって胸まで埋まって、ビヨヨーンと飛び出す。そこでハッと気がついた。


「あ!‥‥どうしよう!準備が間に合わないよ!」

焦っちゃって羽根がプルプル震えちゃう。左右グラグラして横に回転しちゃった。


「何?何が間に合わないの?」

「ダンス!最後の振り付けがまだ‥‥。」

「‥‥ダンスは後でいいから!早く行きなさい!」

「はーい‥‥。」


ご入学後のダンスはばっちり決めたかったのになぁ‥‥。あ、今の横回転を振り付けに入れたら面白いかも。でも入学式に間に合わないかな。

入学式の方が大事だよね!うん! 急がないと入学式が始まっちゃうっていうから急いで仕度することにした。


「ちゃんと天タブは忘れずに持って行くのよ。」

「はーい!」


天タブはしっかりと天タブケースに入れて、腰から斜めがけで下げているよ。

ラピスお姉ちゃんに念を押されたので元気よく手を上げてお返事しておいた。


急いでホーグ北北西下級天使養成学校に行ったんだけど、入学式はなんというか‥‥思っていたのとちょっと違ってた。


「えーーー、あーーー。新入生のみなさん。本日はご入学おめでとう。」


校長先生の長ーいご挨拶の後に、在校生のご挨拶。ここまでは、ご案内のパンフレット通りなんだけど、その後に「祝福のフラワーシャワー」と書いてある所が、

ピューッと線が引っぱってあって消されてた。


天力不足でご用意できませんでした、だって。

これって、装置が動かなくなったっていってたやつじゃないのかな。

入学式後のご挨拶のパーティも中止なんだって。ダンスを披露する予定だったのに、‥‥なしになっちゃったんだ。えーー?


校長先生がお話してくれたんだけど、最近天力があまり天界に入って来なくなって来ていて「空前の天力不況」と呼ばれ始めているらしい。

それでこれからご入学する天使達は、節約と我慢を強いられる事が多くなるでしょうって。そういう時代に突入したのですよって。


なんだか、とっても暗くなりそうなお話だったよ。

授業は一応これ迄のカリキュラム通りに行われるけど、予算は大幅に削られているから「節約バージョン」みたいになるだろうって。

大変!

もしかして、ダンスを披露する場面はないってことかもしれない!

せっかく、右羽根と左羽根を別々に動かす格好いいダンスを考えたのになぁ。


先生方も入学式なのに厳しい顔をしていて、忙しそうにしていた。

天タブ使用の説明会も開催される予定だったんだけど、急なシステムトラブルだとかで省略になった。天タブ設定ルームで設定してもらって、説明書を読んでねだって。

大丈夫かなぁ。


天タブ設定ルームに行ったら凄い行列になっていた。テーブルの所に受付係の上級生がずらりと並んで座っていて、その前にみんな並んでいる。

よく見たら、ラピスお姉ちゃんも受付係をしていたよ。


ラピスお姉ちゃんの所に並ぼうとしたら、「混んでいるから他に行きなさい!」って言われちゃった。

もうねぇ、設定ルームのフロアは新入生でごった返しているんだ。どこに並ぼうかなぁ。

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