第20話 式は厳かなるもの

結婚式はまるで夢のように、シャンパンに浮かぶ泡のように消えていった。藤堂家ゆかりの◯△神宮にて、もちろん藤堂家ゆかりの白無垢を着せてもらって、それはそれは厳かにお式が執り行われました。偶然とおりがかった人たちは、いずれの有名人だろうか、どこのお貴族様のお式かしらと好奇心をむき出しにして覗こうとしていた。貴一さんは、あれ、こんなに美しいお方だったかしらと見違えるほど凛々しく、えぇ、ほめちぎるのではないけれど、かっこよかった。紫さんも終始ご機嫌だった。一番緊張していたのは私の父だったであろう。いや、しぃくんもいつになく緊張しているようだった。珍しいこともあるものだ。まぁ、私たち家族が場違いであったのは、誰の目にも明らかであったろう。

家族だけの結婚式を終えて、家族だけで高級料亭で食事をした。私はなにをどう食べたのかも良く覚えていない。お父さんはついついお酒を飲みそうで、しぃくんがその度に止めていた。貴一さんは…、一度も笑ってくれなかった。格好良くって素敵だったけれど、笑顔が見たかった。まぁ、私はなんと贅沢だ。

一通りの諸々を終えて藤堂家に帰宅すると、玄関をくぐったところで紫さんはスマホを見て、急用ができたから出かけるといった。お手伝いの関口さんまで、そのままの格好でいいからついて来なさいと、紫さんは強制的に連れて行った。

さて、私はこのだだっ広い藤堂家に貴一さんと二人きりにされてしまったらしい。

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