第8話 綾子、茶室にてひとり思ふ
貴一さんが去った茶室はなんだかガランとして、一人でそこにいるのは少し怖いくらいだった。貴一がもってきてくれたバラの花は花瓶に活けられてもなお、輝きを放っていた。
私は話の端々を思い出しては反省していた。もっと良い返事ができたのではなかったかと。
自分も散歩をするほど時間の余裕が欲しいとか、買い物は短時間で済ませるけれど無駄なものを買っていることにあとでよく気づくとか、料理をするのよりも食べる方が好きだ、喫茶店では飲み物よりもケーキが気になる、プレヴェールって名前のレストランの牛すね肉のソテーがおいしい、ショパンのノクターンなら私も少しは弾ける…って。なんか、全部ちょっとズレてる?っていうか、嫌味に取られなかっただろうか。貴一さんは笑顔でうんうんって頷いてくれていたけれど…。
こんなあれやこれやが頭の中を駆け巡ってもんもんとした気持ちにそろそろ苛まれ始めようというところ、関口さんが茶室へ戻ってきた。
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