(一)-5
「ああ、これは下沼じゃないかな」
写真を見るなり、鳥形は答えた。
「下沼? 下の名前は?」
鰺ヶ沢は慌ててセカンドバッグを脇に挟み、尻のポケットに入っていた手帳を取り出して、メモを取った。
「ちょっと待って下さいね」
鳥形は立ったまま前屈みになってパソコンのモニターをのぞき込み、その前に置かれたキーボードを叩き、マウスをカチカチ動かした。
「えーっと……、しもぬまとも。『とも』は知識の『知』の字で『とも』です」
そう会話し、下沼知の学生番号を教えてもらうと、鰺ヶ沢たちは部屋を出て大学本部へ向かった。
(続く)
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